第12話
「帝国は講和案を拒否した?追加交渉も期間延長もなしで即日交渉打ち切り……?なぜだ……?キホテの死は大きいかもしれないが継戦をするほどのことでは……」
「わからん、博士の言う通り全土返還をたたき台にしたのだがそこから進むことはなかった」
「…………わからない、シュタインか?とにかくロボは間に合わん……さすがに1日では……」
「ピュアハーツに防衛命令を」
「命令は止めておいたほうがいい。うら若き乙女に死んでこいとはいえまい?おそらく幹部が来るぞ。未完成のこれを使わせるのは……」
「我々が直接日本を攻略する。それしかない」
「全方位に海兵隊を出す、指揮は……広島でとる」
「私は長野山梨で空挺降下し分断する」
「東北制圧をする」
「月面から巨大ロボを監視して現れるようなら撃ち抜く」
「ここに至っては語ることも少ないな……死ぬなよ」
「世界を守るために協力して欲しい?」
「また命令ですか?」
「ウチら地球防衛軍じゃない言うたやん」
「無理無理無理!消し飛ばされますよー!」
「勝てるわけないでしょ~」
「そこを頼む……命令ではなく日本を守るため、人類を守るために……」
「別に占領地で虐殺されてるわけでも奴隷化されてるわけでもないようですが」
「講和を蹴られた……アメリカのようになるかもしれない」
「……じゃあ、やるしかないか」
はるばる来たぜ、広島。生牡蠣をたらふく食いたいところだが侵略できてるんだよね。
俺の指揮は正直船以外ではダメダメ。海兵隊総司令官マリンに一兵卒として俺を使うように言ったが拒否されたし後ろで構えていたら結局司令官級が戦死してしまうかもしれない。だから兵卒3人付けて広島城を観光ついでに落としに来たんだが……。
「この世の悪を焼き尽くす!灼熱業火!レッドハーツ!」
「邪悪な心を凍らせる!氷河凍土!ブルーハーツ!」
「大地の怒りを思い知れ!森羅万象!グリーンハーツ!」
「天空の怒りその身に宿せ!神罰神雷!イエローハーツ!」
「愛は世界を包み込む!博愛の女神!ピンクハーツ!」
「「「「「世界の平和は私達が守る、地球に輝く5つの光!防衛戦隊ピュアハーツ!」」」」」
アカン、仁義なき戦いが始まるけぇのう。どうする?コマンドとかでてこい!あるわけないね、俺提督としては仕事はそこそこだけどそれ以外は正直微妙なんだよな。なんかピュアハーツがポーズ決めてじっと見てる。あっ!
俺は将校マントを外し、提督帽を兵卒にそっと渡した。そしてさもなんか気をためるように軽く足を開きいかにも何かありますよ感を出しながら、それとなくポージングを取る。意味はもちろんない。昔見た特撮の敵幹部っぽく悠々とそれでいてキレよく動く。
「お初にお目にかかる!バルサク宇宙帝国艦隊司令長官シタッパー提督である、不本意ながらこの国を落としにまいった!」
どっちかと言うとアッサーっぽい感じになったけどまぁあいつの口上結構いい感じだしパクってもバレんだろ。
「宇宙艦隊?」
「どこに……?」
「ハワイのでクビになったんかな?」
「き、聞こえちゃいますよ」
「お付きも少ないし~いけるかも?」
聞こえてるぞ、お前みたいなやつが同級生の男子の陰口を言って傷付けるんだぞ?反省しろ!絶対許さんぞ!陰険な女子みたいなこと言いやがって!
「名前が弱そうで選んで正解だったね」
「見た目も弱そうです」
「ここでうまいとこやって中部にいかんと」
「速攻です!」
「自己紹介も済んだし~やっちゃおうか~」
名前はいいだろ名前は!俺もそう思うけどな……。こいつら煽り性能も高いのか?エデソン……お前……関係なかったらそれはそれで嫌だぞ?口の悪さも改造してるよな?
「ふん!」
「この程度の蹴りが効くとでも?」
「はっ!」
「軽い拳だね?」
「ふんっ!」
「動きが遅い」
「ていっ!」
「重っ!体重を乗せて攻撃するとは多少はやるね、イエローハーツ」
「そ、そんな意図はありません!」
「隙あり~」
「その程度の刃物は通らないよ、ほらそっちが折れた」
いける!この程度なら何となる!とっととこいつらを下してしまえば……これで終わりだ!定番の煽りや高笑いなぞ死が近づくだけだ!
「これで終わりだ!」
「「「「「ピュアバズーカ!」」」」」
は?
体に怪我はないが思いっきり港まで飛ばされたな、何だあの技は!エデソンあいつ……クソが!メガネ叩き割ってやるからな!
「マリン!私はピュアハーツに吹き飛ばされた、そちらに気をつけろ!」
「負けたのですか!?」
「負けてない!吹き飛ばされただけだ!合流する、何処だ!」
「下関です!ピュアハーツが移動したのなら今のうちに広島方面を抑えてください!」
「わかった!厳島方面を掌握して再度……」
「鳥取方面軍通信途絶、鳥取方面軍通信途絶!」
「……全軍が連絡もなく一撃か?あの変な技か!全軍通達!ピュアハーツは相手を吹き飛ばす技を使う、俺は10キロくらい飛ばされた。注意しろ!」
向きが違えば海の上だったな。なんだあれは?気力とかオーラか?とにかく広島を抑えにいくぞ!
「敵幹部を倒したよ!」
「意外とあっけなかったですね」
「名前が弱そうやったししゃーなしやね」
「すっごい失礼な人でした!」
「提督が陸戦してるなんて陸に上がった魚だもんね~」
5人はシタッパーに勝ったと思い別戦線へ移動した。ピュアバズーカはエデソンの未完成だった増幅装置を使ったものであり、理論上は幹部にダメージを与えることができる、はずだった。実際はダメージは与えておらず吹き飛ばしただけである。
ただアニメのごとく勢いよく飛んでいくシタッパーを見てこれは勝っただろうと思うのは仕方がないことであった。
地球防衛軍があっさりと敗北し鳥取支部が陥落したことをシタッパーとの戦闘前に聞いていたやってきたピュアハーツは勝利を確信した後鳥取に移動、支部にいた海兵隊を倒し鳥取を奪還。中部戦線に移動し長野にいた騎士団の分隊を4部隊撃破、東北方面で帝国軍遊撃隊を蹴散らし一時戦線後退に追い込んだ。
「私達ならやれる!」
しかし帝国側の指揮官で戦死したものはおらず、シタッパーの提言でそれぞれが撤退や防衛を選んだだけだった。
「提督!負けたんですか!?お怪我は!?」
「無傷だ!負けてない!」
どいつもこいつも負けた負けたと!吹き飛ばされただけだって言ってるだろ!
本来は中国地方を完全に制圧する予定だったが、山口広島島根ラインで停止し、騎士団は山梨を押さえるだけ、帝国軍は秋田、岩手ラインで防衛戦に徹した。もっともピュアバズーカ連発で一兵卒が吹き飛ばされるので帝国軍は東北撤退を視野に入れている。騎士団でも被害がちらほらあり、山梨の防備をするべきか、それとも撤退か揺れ動いている。
なんなんだよあいつら……。本当にヒーローか?勝てないのか?俺達は……。
この戦争が始まって日本戦線でだけ被害が尋常ではないことになっている、数ではなく質で、そう質だ。指揮官級はそういないが帝国軍でいえば尉官級が戦死が多く士官級ですらちょっといる。団長級はキホテ以外はいないが隊長級の負傷はある、団員が死ぬのはここ最近ではそうなかったのに日本では溶けるように消えていく。海兵隊も帝国軍とほぼ同じシステムだが尉官級が恐ろしいほど消えていく。
本当に勝てるのか?まだロボも出てないしパワーアップイベントもないぞ?
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