第13話

「また今日も……」

「学校最後に行ったのいつ?」

「もう疲労困憊や」

「辞めたい……」

「つかれたわ……」


 度重なる出撃に疲弊したピュアハーツ。雑魚戦闘員を蹴散らして追い返すだけの日もあるが、毎日これである。

 北は青森、西は兵庫。後は奇襲されたら出撃、ほぼ無休でこれをやり続けている。ついでに地球防衛軍再編時に政府が軽い協力金すら払わなくなったので無給である。


 ピュアバズーカ。

 それに対応できるものは少なく、シタッパー提督ですら遠くに吹き飛ばされる脅威の攻撃である。バルサク宇宙帝国はこれを無効化するために試行錯誤を繰り広げているが……今日の敗北を見る限りまだ対応策はない。

 エデソン博士の特殊な機械により増幅された力を放出することに特化した攻撃。

 キホテを打ち破ったッピュアヘブンに比べれば大したことはないのだが連発可能で一般兵士なら薙ぎ払える火力は厄介この上ない。


 地球防衛軍が攻撃し、対応する帝国の各軍がそれを蹴散らし、負けた地球防衛軍が敵が進行してきたとピュアハーツを呼び寄せ追い返す。

 帝国側も大攻勢をしたいが、シタッパーも吹き飛ばされる攻撃に対して平押しするのは作戦として下の下である。

 少なくともそれを容認できるような悪の組織めいたことは出来ない。






「毎日毎日いい加減攻撃は止めてほしい……」


 執務室でため息を付くナポレーン元帥。

 罠だとわかっていても相手を蹴散らせばピュアハーツが来る。そうしてズルズルと戦線を後退し青森にまで引いたのだがうんざりである。

 同時攻撃をしようモノならピュアバズーカをぶっ放し即移動しまたぶっ放す。攻略パターンに入ったゲームのような状況である。

 かといってシタッパーですら吹き飛ばされる攻撃で将校を派遣したところで……シタッパーだから無傷だが他はわからない。尉官級は死ぬのだからいたずらに試せない。


「あいつ毎日朝昼夜と連続攻撃をしてくる、数の利を活かせるはずなのに……まるで活かせない。もう我々が同じように日本を焼くか?……いや、同じような兵器ならともかく5人相手にそれは今後の統治に差し障る、土地も重要だ。向こうが攻撃して撃退はしているのは戦果だ。その後はピュアハーツに蹴散らされてはいるが……少なくとも将官が死ぬようなことがなければまだ……地球防衛軍自体の数は削れている。一か八か……我々や将官騎士団長達全員で攻勢をかけるか?吹き飛ばされないやつがいればその間持つかもしれん。もうこの戦争が始まって帝国軍は200万人の被害が出ている、大半が日本だ、連中のほうがよほど虐殺をしているのではないか?まぁ宇宙戦よりは犠牲はマシだが……数億の犠牲は許容範囲だがな……我々が勝とうと思えば勝てるのにそれをすることはゲリラ刈りに移行する可能性が高くなる。それができない……子供や女を優先的に狙われたらどうする?帝国臣民とて激怒するだろう、誰がテロリストか区別がつくか?ついたとして人類が納得するか?虐殺ではないと……これさえ解決できれば……一般人と戦闘員を区別して殺す爆弾でも作れんものか?」

「できるわけないだろう……」

「シュタイン、いたのか?いつ入ってきた?」

「最初からいたわ!呼んだのはお前だろう!帰ってくるなりブツブツブツブツ!」

「誰もいないと思ったからだ!私室でくらい好きにさせろ!」

「執務室は私室ではない!」

「ああ、執務室か……」


 襲撃があるたびに撤退指示を出したり、増援を出したり、他の戦線に陽動を出したりとナポレーンも疲弊していた。将官に任せてもいいがうっかり救援に行き戦死してはたまらない。士官級の犠牲もある中では元帥の直接指揮を理由にして将官・士官・尉官が動かないという建前が必要なのだ。


「シタッパーは何してる?」

「それがまともになっての第一声か?」

「いいだろう、別に……」


 この行き遅れめ、と思いながら自身もそちら側であることを思い出して嫌な気分になるシュタイン。

 黒一点で案外モテるが元帥が狙ってたとは思わなかったシュタインはそういえば同期だったかな?とどうでも良い記憶を引っ張り出そうとしていた。日本も男も落とせない元帥かぁと思わず笑いそうになったが堪える。


「中国地方をじわじわ削っているよ、一般人のふりをして普通に都市移動をしてあっという間に占領して転移候補地から除外する戦術を駆使してる。バレたときだけ削れるけどピュアハーツは防戦に来るけど攻勢にはでてこないからね。理由はわからない、時間稼ぎだと思う。ロボができるまでの」

「正直、どうだ、ピンポイントで5人を月面のレーザーで撃ち抜けないか?」

「琵琶湖もう一つ作るの?アメリカは地球防衛軍総本部があってなおかつ交渉を一方的に打ち切ったり、失態があったからああまで出来たが日本にはそこまでする理由がない、新地球防衛軍と日本政府は別だしな。欧州はスペインが差配するだろうからなるべく破壊は避けたが……日本にそこまでしたら、エデソンが逃亡して第2第3のピュアハーツをそこら中で作られたら困る。そこまでしないと勝てないと思われたらやつはやるぞ?地球中に穴を開けて本末転倒だろう、次は最初っからバズーカ撃ってもっと強化されるかもしれん」

「やはり無理か、日本側が我々にアメリカレベルの失態を起こさないか?」

「交渉が決裂しただけで?できるわけ無いだろ、しかもこの状態でやったら勝てませんでしたと宣言するようなものだ!せいぜい、いつでも潰せるが手間取ってると思わせることが大事なんだよ!日本政府と別だといったろう!前の交渉で何故でてこないかはわからなかったが」

「ああ、だからあの特撮は小出しで敵を送り込んでいるのか」

「いや、それは多分違う……地球を破壊してもいいと持ってる奴らが多いから技術不足か政治的な派閥問題だろう。それ以外だと同じ理由かもしれない」

「じゃあピュアバズーカを封じるまで待つか、飛ばされても無傷で何度も攻勢に出られる人材でゴリ押す以外にないが」

「そもそもあの技がよくわからん、なぜ連発できるんだ?DVDじゃ1話に一回くらいしか使わなかったのに」

「少なくとも士官級で死ぬ人間は少ないから威力が低いんじゃないか?増えたか?」

「いや、尉官級はともかく士官級はそこまで……」

「私が考えるにあの怪人は士官級、将官級だと思う、大体それで追い詰められて巨大化するあたり、ピュアハーツの攻撃は威力が低い」

「なんか怪人で軍曹とか将軍とか出てるやつなかったか?」

「…………そいつは強靭なのかもしれない」

「そうか……」


 特殊な事例をわざわざ出すんじゃないと思ったがこれは予言に近いと自分で宣言していたため言い返すのを辞めたシュタインは一旦間をおいた。


「まぁ……妖怪よりはマシだろう、封印してもでてくるんだぞ?」

「そういう問題か?」

「対策したいがピュアバズーカが何かを放出してるが全くわからん」

「ピュアじゃないか?」

「…………」

「そもそも自分でピュアなんて名乗るか?いい年して」

「若いかもしれないし……」

「なんか腹が立ってきたぞ……なんでハーツなんだハートじゃダメなのか?」

「かっこいいからじゃないか?名前にまでキレ始めたら終わりだな……」

「かっこいいか?どうせピュアかハーツかバズーカのどれかだろ!なんとかしろ!」

「番組の無能幹部みたいな無茶振りをしてきたな……休んだほうがいいぞ」

「…………コステロ上級大将に任せて数日休む」

「アッサーも休暇を取ったし休めばいいだろ、空挺攻撃毎日20箇所だからな、隊長格で荒らして逃げるヒットアンドアウェイで戦死率は下がったが疲労が溜まっている。団員は死ぬからこの作戦で出せないしな」

「団員は数に限りがあるからな……騎士団もやはり手間取ってるのか」

「防衛軍基地の攻撃には成功してるから地球防衛軍を削る数少ない有効な作戦だな、迎撃だけだと数が少ないし……」

「休暇の間頑張ってくれ……あのバズーカを封じられないなら耐えるようにしてくれ」

「…………耐えるか封じるか、やるだけやってみよう」


 シュタインはせめてそれくらいは出来ないとと思いながら研究室へ戻った。

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