第24話
「まぁ、いいんじゃないか?シュタイン?みんなまだ来ないかな?」
「ええ、いいと思います陛下。皆さん遅いですね」
「いや、実際どうなんだ?ピュアハーツは緊急脱出のようなものだと聞いてるが」
「はい、間違いなく緊急脱出ですね、緊急転移ですかね?いやぁ手強い、しかし事実上の勝利ではあります」
「これはあの戦いに参加した怪人たちには帝国英雄の称号が必要だな、第2位勲章、いや1位でもおかしくないな、シュペットAAンポッタ……改名してポテトボマーは……金突撃章と金戦傷章は全員に授与として奴ら相手の初勝利はやはり多めに……」
カン、と靴の踵で床を叩く音に皇帝と博士は黙り込みそっとそちらを見る。
シーザ議長は直立不動で2人を眺めておりまた床を踵で叩く。
カン!
「それで?どうするんですか?」
「いや、結果的に我々の勝利が喧伝できたから……」
「これはSNSなどの反応です」
”見た目が気持ち悪い”
”語尾がキモい”
”帝国の怪人は語尾付けなきゃいけないのか”
”まさに敵って感じ”
”女性をバカにしている、抗議する”
”触手の素晴らしさの布教のために俺達は巻き込まれてそれを阻止するために人が死んでるのか?”
”一生帝国についていく、日本は降伏しろ”
”降伏するな日本!おれは触手系が大嫌いだ!”
”俺達はなんのために戦っているのか”
「普段よりも反応があるのですが、しかも悪い方に。で?どうするんですか?何故こんな中継を許可したんですか?なぜあんな発言を許可したんですか?統治に差し障りがあるようなことをよくもまぁ……」
「中継は……ピュアバズーカを封じると言う面で周知させようと……」
「中継時ではもうピュアバズーカは打った後でしたね、で?」
「怪人ヌメヌメスの発言は否定したぞ」
「我々が否定して信じてくれると?」
まぁ信じないよな、こっちは侵略者だし……。
シュタインなんとかいってくれと目で合図するものの皇帝の合図から目をそらし私は悪くないとそっと気配を消そうとしているシュタイン。
「シュタイン博士?適応化した割には多くの適応化怪人たちが戦死しましたね?ミスでは?」
「正直威力が想像以上だった、その可能性があるのは確かだ、これは私の計算ミスと言える。申し訳ない」
そもそも改造されてない人間が大半なので言うほど計算ミスではないのだがシュタインはそれを知るすべがないため、ただ陳謝する。
「今後の対策は?」
「とりあえず適応した人間を増やす以外には……人類側含めて大きく強化されたのは触手怪人ヌメヌメスと緊縛星人シバッタワーで……」
「その2人が最も評判が悪い、特に非占領下の女性陣から。どうするのですか?帝国生え抜きで適応化したものは全滅ですか?」
「いや、まて。似たような姿形の臣民もいるではないか!」
「適応化の最中のものもまだいますから……」
「別に彼らは触手の素晴らしさも緊縛の良さも布教してないでしょう、姿の似ている彼らへの風評被害ですよ!」
「そうはいうが……余にどうせよと……」
追い詰められた皇帝のもとに3人が到着した連絡が入る。
ほっとした2人対してシーザ議長は鋭い視線を向けて私には占領地の統治の調整があるんですがわかってますよね?とつぶやき3人を出迎えた。
「ご活躍、拝見しました皆様方」
「おお、シーザ!今日は参加か、占領地の管理は頼むぞ、広大すぎてな、今までより狭い獲得範囲なのにピュアハーツへの信望のせいかどうも宣撫が難しいところがある」
「議長、騎士団の被害は結構出てしまったが軍がそれぞれ任務を果たせたと確信している。占領地対策を頼む」
「シーザ、海兵隊の適応部隊が迷惑をかけた……ああなるとは思わなくてな……」
それぞれが友人の会議参加を喜びながら面倒なところを頼み込んでいる。
シタッパーに至ってはSNSを見ていたので初手謝罪から入る始末である、経験上怒らせたら面倒くさい上に今や議長の地位で実務を担当しているので死活問題である。
「いえ、適応化部隊だけの進軍は致し方ないでしょう、元々岐阜方面も騎士団適応化部隊がほぼ全滅したことが原因ですし……発言に関しても海兵隊が彼らの軍教育前だったこともわかっていますし……提督は今回のことで休暇を切り上げる羽目になってましたしね」
じゃあなんで余(私)は責められてるんだと2人は思うものの中継したことと適応問題なんだろうから仕方がないと諦めることにした。
「では早速ですが、帝国軍は東北部の再制圧を完了しました。関東方面も進出しており千葉埼玉の県境方面まで進出に成功しました。
「さすがナポレーン元帥ですね、停止理由はなんでしょう?問題がありましたか?」
「適応化部隊がほぼ全滅した、地球防衛軍の攻撃で帝国軍も多少の損害はあるから、再編中だ」
「そうですか……」
ちらりとシュタインを見るシーザ。
即座に申し訳無さそうな顔をして責任を痛感してる顔で逃げるシュタイン。
実際に感じてはいるので問題はないだろうが……どうも視線が痛い。
「騎士団は新潟、群馬方面で帝国軍と合流、箱根を越えて神奈川中心部方面に近づいたところで地球防衛軍側の抵抗が激しくなったため迎撃しながら様子を見ています」
「ピュアハーツは来ていないのですね?」
「来ていたら崩壊している可能性が高い、先鋒部隊は一般の騎士団員だからな」
「なるほど、横浜方面まで抜けれれば交戦意欲も削げますね」
事実上のピュアハーツ撃破、死んでいないことは通達されているので身構えながらの進軍出会ったが無事日本全土の制圧は順調に進んでいったのである。
「海兵隊は適応化部隊のピュアハーツ撃破後に畿内を全て抑えることに成功した。例の中継を見て連鎖的に降伏していったな」
「飛び地化しているのなら転移は出来ますが肝心のピュアハーツが来ないのでは意味がありませんからね、では各作戦は成功しましたね」
久々の穏やかな会議に皆気がゆるくなる。
詰められていた2人はまだ張り詰めていたが。
「で?シュタイン博士?皇帝陛下?非占領地の評判の悪さと新占領地の評判の悪さをどうするのですかね?はっきりいますがお手上げです。私は休暇を取ります、良いですね?」
「それでは統治はどうするのか!?」
「陛下が出来るでしょう?昔はやってたじゃないですか。怪人の悪影響のぶん親しみやすさでなんとかしてください、とにかく非占領地の安定を優先してください。軍事作戦には口を挟むつもりはありませんので好機と見たら周辺攻撃も首都攻撃も実行してください。偉大なる皇帝陛下がなんとかしてくれるでしょう」
こうして久々の皇帝親政が始まり、シュタインの適応化実験は強化され、三軍は軍の再編を始めた。特に海兵隊は攻撃対象地だった日本領土を全て獲得したため沿岸攻撃と強襲上陸用に再編を始めた。
そもそも海兵隊を通常の陸戦師団としてゴリ押すのがおかしいと思いながらシタッパーは再編後は休暇を取り直そうと心に決めた。
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