第38話

「私の祖父であるカイゼルは地球防衛軍に、ピュアハーツに殺された!臣民よ!間違えてはいけない、地球人に、日本人に殺されたわけではない!地球防衛軍とピュアハーツなのだ!必ずこのテロリスト共を捉えて殺せ!」


 地球を除く臣民向けの演説を行ったシーザは隠していた怒りをぶつけるように演説を行った。激昂する姿は幹部や建国時の古参くらいしか知らないため驚きを持って迎えられ、戦争ならまだしも騙し討ちで家族を殺されるということがどれほどのものかを思い知らせるものであった。


 会議室でそれを見ながら5人は今後の方針を練り続けていた。


「地球防衛軍本部はもっと深かった、脱出されたようだが……どうでていったんだ?」

「演説のときだろう。それより怪人は?」

「流石にいまはなり手がいない、整形感覚で来るやつだけだな」

「能力があるのは?」

「いわゆるオタクが多いから適当に地球散らばせて配置してる、まぁなんとかなるだろう」


 シタッパーは俺も似たようなもんだしと言葉には出さなかったが……。

 バルサク宇宙帝国はちょっと強い戦闘員程度でも使い道はいくらでもあるだろうと適応化だけは推進していた。これが死亡時の遺体消失のように義務付けるかどうかは微妙な対応である。

 なにせ適量が未だに不明なのである。死なない量がわかったが強くなる量ではないのである。それに敵は皇帝の力を使っている仮説があるので、そうであればここ以外でそのような事例はあり得るのかという話になってしまう。

 その証明を求められてもシュタインは知らんとしか答えられないのだ。


「適応化部隊をバラけさせるのか?」

「どうせ大半役に立たん、ピュアハーツは今や世界の敵だ。せいぜい攻撃してくれればいい。その分敵が増えるだけだ。それにシタッパー」

「はい」

「戦隊の展開で世界の敵になる状況は好きだといってただろう?」


 それはそういう意味じゃないし、最後に逆転勝利をされるパターンなんですけどと言い返したかったが上機嫌なナポレーンのへそを曲げたくもないのでまぁそうだねと微妙な反応をした。


「ピュアハーツは何処へ行ったのだ?目をそらしたとは言え国外にはまだ出てないだろう」

「関東平野でも巨大ロボが飛んでいたらしい、さいたまから茨城にかけて」

「なんでそんなもんが補足できんのだ……?」

「そもそも今までロボが来たときも補足出来なかったからな」

「どう言う技術だ?シュタイン?」

「え?いや……知らんけど……」

「科学者だろう」

「じゃあお前芋ようかんで巨大化する理由考えてみろ!」

「話の中のそれとこれとは別だろ!こっちは技術だろ!」

「知らんもんは知らんわ!エデソンの発明だろ!理論的にはこちらの補足レーダーからステルスしてるだけだ!それも多分でしかないわ!あんなでかい図体見逃すお前が悪い!」

「でかい図体が補足できんやつが何を言ってるんだ!」

「止めよ」


 皇帝の静止で矛を収めた2人はため息をついて座り直す。


「実際わからん、なんで補足できないんだか。宇宙から見て補足できないんだぞ?ステルスにしても機械を欺いている。やつを把握するのはそのデカさだけだ」

「そうか……」

「まぁ、全部の分野がシュタインが得意というわけではないからな」

「まぁそうだな、私も海兵隊の指揮や騎士団の指揮は自信がない。すまないな……疲れていた」

「謝罪を受け入れるよ」

「では前向きに以降、関東平野に帝国軍を展開せよ、ナポレーン。適応化怪人も必要なら好きに使え」

「まぁ見た目だけでも牽制にはなるでしょう」

「本命は茨城?」

「SNSで情報でも募ってみるか」

「国のやることか?」

「宇都宮で餃子でも食べながら報告を待つさ」

「俺も行こうかな」

「私もいこう。東京は面倒だからシーザに任せたい」

「たまには研究室から出るか」

「お前たち……休暇を使いたくないから仕事で休暇を満喫するつもりか?」

「いや、お土産はちゃんと転送します」

「仕事もちゃんとします」

「そもそも本業は提督だから海兵隊の大半を解体したいまは上陸休暇みたいなものです」

「……余もいく。そもそも政治はシーザの領域だから事実上の戦争終了状態のいまピュアハーツ残党捜索以外にすることがないからな」

「じゃ、餃子食べ歩きツアー行きますか」






「どこ行きやがった!あのバカどもは!」

「議長!落ち着いてください!関東平野に帝国軍を展開して宇都宮に本部を置いたので」

「なんで陛下までいない!決済書類にはサインする必要があるんだぞ!」

「一人は寂しいとかなんとか」

「こっちは一人だが!?」

「我々もいますよ!」

「仕事じゃなくて友人と過ごさせろ!」

「でも議長ずっと休暇取ってたじゃないですか!」

「……わかったわよ!……こんな貯めこむなら休暇あんなに取るんじゃなかった」


 死は日常茶飯事のバルサク宇宙帝国にとっては恩師の死も弔えばそれで終わりである。そこまで引きずることはなく、怒りが終わったらプロパガンダにして終わり。

 他ならぬカイゼルがそれを主導してきたのでいつもどおりと言えばいつもどおりである。

 戦争は終わり、統治一本に絞ればいいのでシーザも仕事量にはうんざりするが他に文句を言うようなこともなく淡々と仕事をこなし、決済の仕事をどんどん増やして皇帝を疲労させようと考えていた。

 仕事中に餃子がみんなから転送されてくると少しだけイラッとしたもののちょっとくらいは優しくしてやろうと思うシーザだった。






「とっととガソリンを出しな!地下の確認用のところを開けろ!」

「はい!」


 新地球防衛軍長官が今やガソリン強盗とはな……。

 地下のガソリンタンクにエデソンの作った棒を突っ込み基地に転移させる。これほど小型にして液体のみに絞ってようやく使用可能である。これ以上は人も移動させられない。

 強盗が金ではなくガソリン、しかも本来はガソリンの残量を確認するための穴に棒を突っ込んでるだけなのはシュール過ぎて店員も困るだろう。

 拳銃で脅してる自分が滑稽だな。

 ガソリン強盗になった鉄壁はガソリンが無くなった事を確認すると棒を持ったまま車に乗り込み立ち去った。


 残ったのは結局なにしに来たのかわからないと困惑する店員と空のガソリンタンクだけである。

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