第46話

「逃しましたね」

「そりゃわかってる」


 シーザの報告にシタッパーはサラリと返す。


「実際どこへ向かってると思う?撹乱含めてだ」

「それは軍事的な見地でしょう?私ではなくナポレーンにでも任せたほうがいいと思いますが……」


 政治家ですが何か?という顔をしているがこれでもバリバリの武闘派で祖父のカイゼルがそろそろ引退するから政治叩き込むぞ!と言うまで第一線で拳を振るっていたガチガチの武闘派だ。武器ではない、拳だ。

 何をすっとぼけるんだコイツと思いながらも俺は再度尋ねる。


「一応軍人だろう?それと政治的な面を合わせてどこを狙う?いや……どうしたいと思う?」

「……京都を破壊するか大阪でテロをするか、宇都宮から目を逸らしたいだけでしょうが……」

「それで政治的な意味は?」

「ないですね、もう勝負はついたのです。今更テロをしたところでバルサク宇宙帝国の覇権はゆるぎませんよ、足掻けば足掻くほど旧日本政府が支持してるとでも言ってやればいいでしょう、それで立ち枯れます」

「つまり政治的な意味もないのだな?」

「はっきりいえばそうですね、相手が意味があると思っているのなら知りません。ただ……あのエデソンが無意味なことをするのか」

「いけず石で車か発明品を傷つけられたとか」

「…………ありえますね、最後に嫌がらせをしてるかもしれない」

「ではなんかあって溜飲を下げる以外は宇都宮から目を逸らしたいのだろうな」

「意外と太秦でコスプレしてるかもしれませんよ、私も行きたいんですけどね」

「あいつ時代劇なんて見たか?」

「資料用映像に目を通したけどなんかどっかのロボ?が将軍様とコラボしてたしそれでは?私も将軍様と必殺好きなんでいきたいんですけど、お祖父ちゃん新作見れなかったし……」


 やめろよ、いくら人の命が軽いとはいえど俺は若干前世寄りだから毎回気まずいんだよ……。

 あとあれがロボなあたり仮面系はそこまで好きじゃないんだな、シーザ。


「あー面倒ごと全部将軍様に解決して欲しい」

「その場合成敗されるのは俺たちだろう」

「望むところよ!」


 推し過激派キツ……。


「印籠持ったご隠居かもしれな……」

「後ろでふんぞり返って権威見せびらかす老害なんぞこっちから殺してやる!」

「あっ、はい……」

「シタッパーだってその手のやつがどれだけ生きるに値しないかわかるでしょう?そのために殺してたやったんだから、あの時に戻っても何度でも戦うわよ」


 そういや俺達が蜂起した時一番やる気に、もとい殺る気に満ちてたのはシーザだったな。口調も昔のように戻って……。


「ん、失礼。とにかく……太秦に行きたいですね」

「いや、エデソンの行方を……」

「どうせ恨みがあるのは洛中でしょうし太秦は平気だからどうでもいいです、むしろ騒動を起こして京都人と旧日本政府と地球防衛軍残党をぶつけてしまいましょう。いわゆるコラテラルダメージです。大阪を最終ラインにしておけばいいでしょう。大阪で騒ぎを起こせば面倒になるしおそらく避けるでしょう、つまりひっそり仕込みをするはずです、そこで宇都宮の警戒をけして緩めず警戒すれば戻れないでしょう」

「転移できるのではないか?」

「敵地から長距離転移を容易く出来のならお手上げです、流石に無理だと思いたいですね、シュタインのシステムでは味方陣地移動は無限、敵地は短距離、長距離は不可。敵のど真ん中では流石に不可の面が強いかと。良くて短距離転移でしょう、エデソンは東海道を上る際も短距離転移を使用しています。これはさすがエデソン、賢いですね、これだけ敵地で短距離移動をするすべがあるとはね。ということは長距離移動は流石に不可と言うことです。大阪の警戒と宇都宮の警戒を強めてあのピュアピュアロボだかを封じればいいだけの話、注目させるだけならそれこそ1日に数か所で騒動を起こして転移すればいいだけの話です」

「わかった、では俺も大阪で警戒するために……」

「まどろっこしい言い訳はいいですよ、おみやげよろしく」

「はい……」


 打ち合わせも終わったし皆と合流して食べ歩きツアーにでも……。


「ああ、そうそう言い忘れました」

「ん?お土産ならだいたい……」

「おそらく最後の戦いが近いです。次にピュアハーツが出た際は私も出ます、いいですね?」

「…………陛下に聞いてくれ」

「おや?お忘れですか?海兵隊が作られたから一時的に指揮系統は代わりましたが本来バルサク宇宙帝国軍の艦隊を指揮する貴方は軍の中でトップですよ?騎士団も帝国軍も宇宙艦隊がなければ意味がありませんからね、それでバルサク宇宙帝国軍司令長官殿、私の戦地投入をお認めいただけますか?」

「それは……元老院としての要請か?」

「一人の軍人として、もしくは友人として、あるいは祖父を殺された哀れな孫娘として」


 命が軽いとはいえ悲しんでないわけではないってことか、俺が気まずくなってたのを察してつけ込んできたな……。すっかり政治家になって……。


「シーザ……独立遊軍司令……兼任参謀長として必要とあらば動くように指揮権を委譲する」

「承りました、司令長官殿」


 俺はもう知らんぞ、知らんと言ったら知らん!

 出撃するのはシーザの判断だからな!俺は許可してない!

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