第47話

「いややわぁ~……それならおまわりさんでも呼べばええやんか」

「だっておかしいだろう!明らかに道路にでてるんだよ!鉄壁くんももっと激しく抗議したまえ!」

「峰スチールウォールです」

「あらまぁ、その感じで外から来らっしゃったんやねぇ、ここにはここの決まりがあるんですわぁ」

「道交法違反だろ!道路法第43条だろ!」

「いややわぁ、ここは昔からウチの土地やからなぁ、むしろ道路もウチのものかもしれへんけど細かいこといいたくあらへんやろ?」

「通るかそんなもん!峰スチールウォールくん!今こそ君の権威を見せつけるときだ!」


 もうねぇよ、あっても通じねぇよと内心で呆れてる鉄壁のもとでエデソンは文句言い続けてる。

 行けず石で車を擦ったからだ。悲しいことにシタッパーの予想はあたっていた、ただ時系列が違うだけだったが。


 程なく到着した京都府警に失せろ(要約)された2人は京都を立ち去ることにした。


「法はないのか!無法の世界だ!無情の世界だ!なんでこんなことがまかり通るんだ!治外法権じゃないか!」

「名古屋の交通違反や事故は他県ナンバーを優先的に捕まえるよりいいだろ」

「この……後進国が!死刑制度なんて廃止してその場で撃ち殺せ!」

「それはどっちが後進国なんだ」

「外人を舐め腐りやがって!観光で金稼いでるだけの赤字国が!」

「国全体にするの止めてくれないか?あと赤字の原因は君らの侵略もあるんだが?あと君は外人枠でいいのか?」

「宇宙差別か?」

「いや、言っても君たち侵略者だからね?」

「侵略者差別か?多様性を認めろ!」

「差別されてしかるべきだろ、侵略の多様性なんか認めるわけ無いだろ」

「なんだと!これを良しとして尊厳を踏みにじられた相手がテロリストだったらどうするんだ!」

「そこまで責任は持てない、京都の問題だ」

「それでも地球防衛軍のトップか!」

「もう組織がないから違うといえば違う」

「ああ、そうかい!上等だよ!テロリストに喧嘩売ったこと覚えておけよ!」

「自覚が、ああいや……もうテロリストなんだな……」

「強盗にコンビナート襲撃して高速道路で暴れて強盗のつもりかい?ボニーとクライドなんか目じゃないぞ」

「人は殺してない」

「人殺してなくても死刑はあるんだよ?」

「なんで日本の方に詳しいんだ」

「合法じゃないと何されるかわからないじゃないか、そこまでお人好しじゃないよ。開戦経緯思い出してくれる?」


 流石に反論できない鉄壁は沈黙し、文句を言い続けるエデソンを横目で見ながら生八つ橋をつまむ。


「あ、それ僕のチョコレート味!」

「ん、ああ……すまん……。普通のあんこだと思ってた」

「最後の一個なのに!京都!許さんぞ!」

「いや、ちょっと駅で買ってくる……」

「はい、カード、暗証番号7777だよ」

「そんなに買わないだろ、番号縁起が良いな……」

「買い占めてきて、もう買えなくなるかもしれない。それにさ、最後くらい縁起が良くないとね、演技も良くないと相手騙せないけどね」

「演技ね……」

「古都京都の経済効果は計り知れない、かもしれない。ここで大暴れしたらシーザあたりがそろばん弾きながら万全の体制で挑むだろう、京都は古来から外から守れることはめったにない、防御に向かないし公家はうざいし坊主は糞だし瀬田の唐橋は落ちると防御側が戦うには向いてない」

「瀬田の唐橋はいいだろう」

「そして何よりあの性根が気に食わない、この街からいけず石をなくしたい」

「票の入らない政治家か?」

「この世の中を変えたい」

「君等のせいで国が変わったんだが?」

「決戦の地は京都だ」

「あのいけず石のせいでか……?」

「当初は宇都宮、奈良でいいかなって思ってたんだけど決まったよ、京都だ!」


 あれで街を壊されるとかたまったものではないな。

 なんだか怖い都市伝説みたいだな。

 駅で生八つ橋を買い占めた鉄壁は薄ぼんやりと今まさに都市伝説が産まれたのかもしれないと思いながら大阪へ向かう道を眺めていた。




「と、言うわけでだよ。なんだかあっさり土地を買い漁れてるんだけど?」

「まぁ敗戦後だしな……公務員は場合によっては解雇になったりしてるんじゃないか?知らないが」

「無人島を5,6個買ったけどこれなら普通に街中のマンション買っておけばよかったな」

「買っておけばいいんじゃないか?」

「じゃあいくつか買っておこうか、正式に所有できるのは数日後だなぁ……まぁ、撹乱には向いてるしね。では試しに……」


 すっと消えたエデソンはすっと現れた。


「成功だよ、宇都宮地下を本拠認定した。後はランダム制を取り入れて暴れようじゃないか!マンション買って家賃半額で国民化してやろう、西成とか買い漁ろう!まさか国民無しでいけるとは……」

「……眼の前にいるだろう」

「それは……以外だったね……」

「……それで初手は?」

「うん!うん!うれしいよ!それで初手は…………うちにも怪人いない?」

「いない、そもそも君の分野だ」

「ピュアハーツはダメと……。そもそも……なんでバルサク幹部陣が大阪で食いだおれ旅を決行してるんだい?暴れたらすぐに来るんだけど?なんで皇帝陛下がいるんだい?撹乱どころか場所を補足されて終わりなんだけど?」

「では、ピュアハーツを……」

「皇帝陛下を最前線に出すわけ無いだろ、僕らの無駄死ににうら若き乙女5人が死んで終わりだよ、もう彼女達は戦えないんだからさ……。物量の差をピュアバズーカで覆せない、もう水鉄砲レベルだろうね。そもそも幹部陣にあの攻撃は効かない、遠くに吹き飛ばすだけだよ。強風の扇風機の前に紙を置いて飛ばされたとしても弾け飛ばないだろう?そもそもが厄介なだけでヤケクソで地球ごと粉砕しちゃおうとなったらどうにもならないんだからさ、毎回言ってたでしょ?本来勝てる勝負じゃないって、君らの得意な硫黄島とかでやったみたいな持久戦で手打ちにすればよかったのにねぇ」

「その話はもういい、総理からネチネチ言われた」

「帝国だったら更迭か処刑だよ。さてどうしようかな……うーん、国民を増やして……撹乱が初手で出来ないからな……潜伏だな、ロボ改造が完成したら行動開始だ、くいだおれの候補地になっということは警戒も厳重だし、帰った後もなんか気に入ったら御用達扱いで頻繁にやってくるだろうから土地マンション買い漁りを続行してくれたまえ。それが鉄壁くんの仕事だよ」

「わかった、ロボの完成はいつ頃だ?」

「未定だね、まぁ……潜伏させてた部下を使うよ」

「いたのか!?」

「いったでしょ?そこまで信頼してないって。我が唯一の国民である、鉄壁くんよ。まかせたよ」

「せめて子どもくらいは守ってみせるよ」


 だから助けちゃったんだろうねぇ……。

 我ながら気に入った人間には甘いよ。

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