転生したらニチアサっぽい世界の敵幹部になってた

@masata1970

第1話

「諸君!とうとう見つけたぞ!場所は銀河系の中の太陽系、その中にある青い星だ、ここに移民する。先住民族がいたらとにかく交渉してあいてる土地か管理外の周辺区域を分けてもらおう!我々100億人が移住できる場所を!」


 皇帝の声に答えた臣民が大歓声を上げる。数々の戦争で惑星が荒廃し最後の戦争に勝ち残ったバルサク宇宙帝国は領土をなくし巨大移民船団と成り果てていた。それから100年、宇宙を股にかけてウロウロしてきた移民船団は居住可能惑星をとうとう発見したのだった。


「必ず、必ず成功させるぞ!」




 それから数カ月後のこと。ある長閑な昼下がり赤井紅子あかいべにこは高校進学が決まり浮かれていた。


「いやー!あとは高校に入るだけ!楽勝っしょ!」


 勉強の面倒を見てきた青田碧あおたあおいが注意を促す。


「遅刻はしないこと、いいわね」


 同じく友人の緑谷山葵みどりやわさびも呆れ顔で続ける。


「あんたそれで痛い目見たからこうなったんやろ?まったくあんたときたら……」


 黄田金恵きだかなえが紅子のサポートに回る。


「まあいいじゃないの、いいじゃんいいじゃん紅子さんらしいよ」

「そうよそうよ~」


 桃野珊瑚もものさんごが援護射撃をする。そんなよくある日常の風景だった。この時までは。


「あーあー……地球の諸君!これは全世界同時放映である!夜間の国には申し訳ない!我々はバルサク宇宙帝国!土地なくして彷徨う宇宙移民船団に成り果てた国家である!私は皇帝エリザベート!我々は地球側の移民を求めたい!交渉を求める!国連がこの星の最高機関だと判断して国連にて交渉を行いたい!」


 ある日やってきた謎の異星人達がすべてを壊すまでは。最初はよくある話のようだった、テレビを見ながら他人事であった5人は異星人との共存に胸を高鳴らせてワクワクしていた。1月ほどで流れが変わった。それは5人でピクニックに行った折のこと。


「この星の裏切りに近い交渉に我々は激怒した!我々からエデソン博士を引き抜き、そしてその研究を使い交渉の余地はないと通達してきたのだ!我々は交渉において武力は見せず対話を求めてきた!国連は交渉相手と認めず!地球全国家に対し宣戦を布告する!」


 皇帝が杖を振ると流星群のようなものが降り注ぎ自分の街に停泊している軍艦を破壊した。その時の流れ星のようなものの一つが自分たちにぶつかった、ような気がした。実際自分たちは無傷であり港には破壊された軍艦。客船などに被害はないようだった。数日後エデソン博士と名乗る人物が5人の元を訪れ、帝国と戦ってほしいと懇願した。あのピクニックに行った時、皇帝の攻撃がぶつかったように思えたのはハーツという未知のエネルギーでその力を吸い取ってしまったのだ。彼女たちが勧誘されたのはハーツを持つ特殊な人間と判明したからだった。日本政府からも願われた5人は否応なく世界を守る戦いに巻き込まれていく。



 同時刻、南極にて。


「諸君!我々は地球の大地を踏みしめたのだ!」

「陛下、氷なので大地ではありません」

「細かいことを言うな!シュタイン博士!今ここに帝国実働部隊の四天王が揃っている!我々をコケにした地球と戦うためにだ、月面は基地として改造した!我々が交渉したのはなぜか!我々は侵略という手段、戦争という方法でこの様になったのだ!私はそれを心底嫌う、だが彼らはそれをたやすく踏みにじりエデソン博士の発明を使い武力行使を示唆してきた。もはや交渉相手とは足り得ぬ!あのような組織を野放しにしてる国々も信用に値せん!今頃北極も抑えたであろう。議会の元老院諸君!この戦争への協力を求める!」


 帝国軍旗艦バルサク


「皇帝陛下はこの戦争へのご協力を求められた。私も賛成である」


 議長職を継いだばかり若い女性、シーザ議長は演説を続けた。


「今の演説を聞くように地球側の誠意の無さには呆れる他ない。我々は対話をしたのだ、100億人全てを受け入れろとも言っていない、月面使用許可など本来なら所有権のないものをわざわざ取りに行き技術の提供まで込みで交渉していたのだ。それがエデソン博士が亡命してすべての技術が作れると知った途端どうだ、この対応だぞ?舐められたままでいいのか?」

「「「「「「否!」」」」」」

「そうだ、エデソン博士はすべてが再現できると言ったが本当にそうか?おそらく彼は過大評価をしている。この星の技術は我々を100とした時5くらいだ。再現できないものも多いだろう!彼らは砂漠を緑地に変えるのに1日で出来ない、凍土を居住可能にする事ができない。これが我々に何の脅威になるのか?」

「「「「「「ならない!」」」」」」

「我々は臣民一人一人が兵士である、もしあの星が我々の予想より優れた文明と技術を持ち多くの幹部が倒れた時!もしもさらに戦うときには諸君らは戦場に立つか!」

「「「「「「立つ!」」」」」」

「私も立つだろう、もしも地球側の市民すらも我々を攻撃した時諸君らは市民を殺せるか、軍人ではない人間を殺せるか!」

「「「「「「この手で殺す!」」」」」」

「帝国議会は皇帝陛下のため全面的に協力をするか!?」

「「「「「「する!」」」」」」

「帝国憲法を改定し懲罰戦争や自衛戦争ではなく侵略戦争を行うか!」

「「「「「「改憲万歳!」」」」」」

「よろしい!帝国は言い訳をしない、これは侵略戦争である!地球側の諸君は市民に我々を攻撃させないことを徹底させると良いだろう、我々が君たちの方を守らなければならぬ理由も道理もない。皆殺しにしたところで文句を言われる筋合いもない!降伏したところで国家の主権は許さん!国連の如き組織に追随する国家なぞいらぬし我らの役には立たない!宣戦は既に布告されているのであらためて言う必要はないが……帝国は地球と戦争状態にある!帝国万歳!」



「あやつ余より過激ではないか?」

「帝国臣民の本心です陛下」

「我らも腕がなります」

「エデソンとは仲良くなかったので私のせいかもしれません……帝国臣民が死ぬのは私のせいかと思うと……」

「それは違う、余が決めた、議会も決めた、臣民も支持した。もし責任があるとすれば余だけで……いい」

「申し訳ありません……陛下」

「うむ、全世界に流している議会中継も終わったな。こちらに戻ってくるぞ……全世界の諸君!我々は言葉を隠さぬ!これは侵略戦争だ!我々が新天地を得るか、君たちの国家がすべて滅亡するかの戦争だ!ナポレーン元帥!」

「はっ!」

「南アメリカ方面から帝国軍を率いてアメリカ合衆国を滅ぼせ!シュタイン博士!」

「はい……」

「月面基地を完成させ兵器工場を作り帝国軍を援護せよ!アッサー騎士団長!」

「ここに」

「オセアニア方面を騎士団で制圧せよ、戦力不足の場合は元帥に相談せよ」

「オセアニア方面までなら騎士団のみで可能です」

「よし、シタッパー提督!アフリカ方面の制圧を頼むぞ」

「はっ、仰せのままに」


 俺はシタッパー提督、艦隊戦が得意だが地球用の艦船もなく宇宙戦艦で地球を攻撃したら本末転倒になるのでほんとうの意味で下っ端になった男。海兵隊みたいな使い方しかできないし発言力は勝手に下がりそうな男。転生したらニチアサっぽい世界の敵幹部になっていた。

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