転生したらニチアサっぽい世界の敵幹部になってた

@masata1970

第1話

 宇宙の何処か。

 数ヶ月前にあった星間戦争で敵の国家を滅ぼし、勝利を収めたバルサク宇宙帝国は降伏した敵国家の臣民を教化させ、その帝国の傘下に加えていた。

 戦前より多大に減った人数を少しばかり補填しできたことに安堵感を持ち、頼りになる政務機構に称賛の言葉を送った。


 そんな新たな臣民を迎え入れ、機嫌を良くした皇帝の前に一人の軍人が報告をあげた。

『居住可能星あり』と。

 報告を聞いた皇帝はモニターを全艦隊緊急通信に切り替え、苦手な演説を始めた。


「諸君!とうとう見つけたぞ!場所は銀河系の中の太陽系、その中にある青い星だ、ここに移民する。先住民族がいたらとにかく交渉して空いている土地か管理外の周辺区域を分けてもらおう!我々100億人が移住できる場所を!」


 皇帝の声に答えた臣民が大歓声を上げる。数々の戦争で惑星が荒廃し、最後の戦争に勝ち残ったバルサク宇宙帝国はその荒廃により領土をなくし、武装した宇宙艦隊自体を巨大移民船団とし、移動国家と成り果てていた。

 それから100年、宇宙を股にかけてウロウロしてきた移民船団国家は信頼できる幹部の与太話を話半分に聞きつつ周辺を調査させて居住可能惑星をとうとう発見したのだった。


「必ず、必ず成功させるぞ!我々は銀河系へ向かう!我が提督にそう伝えよ!」




「えっ?地球あったの?」


 我が提督と呼ばれたバルサク宇宙艦隊を指揮するシタッパー提督は皇帝からの命令を受け取った第一声がそれだった。

 皇帝の演説は休憩時間で仮眠を取っていたシタッパーには知らぬ話であり、ふと漏らしたその言葉に伝令を担当した女は疑問を浮かべていた。


「地球ですか?」

「ああ、その……見つかった青い星……」

「名前があったのですか?」

「…………うん」


 苦しい言い訳だと思いながらごまかすシタッパーを女はじーっと見つめていた。


「いや、前から考えていたんだ。住める星があったら地球にしようと思って……」

「なぜ……?」

「いや、ほら……今はいないけど未来で子供の名前考えるみたいな感じさ」

「仮にあっても命名権は皇帝陛下にあると思いますが?」

「俺の話が元なら名前くらいつけさせてくれも良くないか?」

「…………まぁ、自分の名前をつけなかったのは及第点ですね。なぜ考えていたのかは本当に疑わしいことですが」

「男にはふとそういう時がある」

「…………その年でですか?」

「お、おう」


 シタッパーは全艦隊を銀河系に向けるからまたねと付き合いの長い女の連絡を切ると、まぶたをこすりながら提督命令として銀河系への行軍を命じた。

 こんなことになるなんて未来ってものはわからないものだな、と他人事のように思いながら。






 それから数カ月後のこと。ある長閑な昼下がり赤井紅子あかいべにこは志望ギリギリの高校進学が決まり浮かれていた。


「いやー!あとは高校に入るだけ!楽勝っしょ!」


 勉強の面倒を見てきた青田碧あおたあおいが注意を促す。


「遅刻はしないこと、いいわね。後々に響くわよ?」


 同じく友人の緑谷山葵みどりやわさびも呆れ顔で続ける。


「あんたそれで内申痛い目見たからこうなったんやろ?まったくあんたときたら授業中も寝るわ……」


 黄田金恵きだかなえが紅子のサポートに回る。


「まあいいじゃないの、ね?いいじゃない、ねぇ?ほら、紅子さんらしいよ」

「そうよそうよ~」


 桃野珊瑚もものさんごが援護射撃をする。そんなよくある日常の風景だった。この時までは。


「あーあー……地球の諸君!これは全世界同時放映である!夜間の国には申し訳ない!我々はバルサク宇宙帝国!土地なくして彷徨う宇宙移民船団に成り果てた国家である!私は皇帝エリザベート!我々は地球側の移民を求めたい!交渉を求める!国連がこの星の最高機関だと判断して国連にて交渉を行いたい!まず……国連はどこにある?スイスか?アメリカか?そちらに合わせて周波数は145.80MHzに合わせよう、国連の連絡求む」


 ある日やってきた謎の異星人達がすべてを壊すまでは。

 最初はよくある話のようだった、テレビを見ながら他人事であった5人は異星人との共存に胸を高鳴らせてワクワクしていた。

 そんな期待に溢れた日はおおよそ1月ほどで流れが変わってしまった。

 それは5人で卒業祝いのピクニックに行った折のこと。


「この星の裏切りに近い交渉に我々は激怒した!我々からエデソン博士を引き抜き、そしてその研究を使い交渉の余地はないと通達してきたのだ!我々は交渉において武力は見せず対話を求めてきた!以後国連は交渉相手と認めず!国連の答えが地球全国家の答えだと理解し地球全国家に対し宣戦を布告する!」


 皇帝が杖を振ると流星群のようなものが降り注ぎ自分の街に停泊している軍艦を破壊した。


「なにあれ?」

「戦争が始まった……んでしょうね」


 その時、流れ星のようなものの一つが自分たちにぶつかった、ような気がした。

 実際自分たちは無傷であり港には破壊された軍艦。他にあった客船などに被害はないようだった。

 奇妙なピクニックになったものだと思いながら5人はその景色を眺めていた。


 それから数日後のことだった。


「今日はどうしよっか?」

「映画なんてどうです」

「いまちょい、手持ちがな……」

「喫茶店はどう?」

「それもちょいキツイな」

「貸そうか~」

「いや、返す当てがあらへんからな」

「やぁ、よければ僕が奢ろうか?」


 おそらくは中学生か高校生か微妙な年齢の……ほぼ同い年見える男の子に話しかけられた5人は今どきナンパかと多少うんざりしたように返した。


「そういうのはいいかな」

「顔は好みだけど~ナンパするタイプは嫌いなのよね~」


 アハハ……と相手にしたくないオーラにさすがの男の子も少しだけ落ち込んでいた。


「ナンパというか、勧誘かな」

「宗教はちょっと」

「芸能人になりませんかって感じやないやろ」

「う、胡散臭すぎる……」

「これ知ってる!学校でやった変な薬売る人だ!」

「違うよ、勧誘先はね。どうぞ」


 でてきたのは静観そうな中年の男であり、5人はもっと身構えた。

 内心であ、ドラマで見たことある人身売買のやつだとゆっくり後ずさり始めた5人を見て中年の男は名刺を差し出した。


『防衛省 防衛政策局 特別課課長』


「名前は伏せさせていただきたいのです」

「余計怪しいよ?」

「……ですよね」

「検索したけどそんな課ないわ」

「先日新設されて公表されていませんので……」

「誰が騙されんねん!」

「……そうですよね」


 5人は顔を見合わせると反転して逃げ去った。


「すばやさが足りなかったね」

「なぜあなたは地球に順応してるのですか?」

「僕達は受け入れることで国家を成り立たせてるからね。じゃ……地元の議員を連れて自宅訪問しようか」

「はぁ……」




「で!ナンパされて!逃げてきたの!」

「あんたが?その子もかわいそうに目が悪かったのね」

「なんでよ!」

「碧ちゃん目当てでしょ、珊瑚ちゃんかも。少なくともあんたはおまけでしょ」

「ヒドイ!それが娘に言うこと!?」


 さんざんに母から貶された紅子はぷんすかと行ったような動きで抗議するが見事に流された。


 そんな会話をする2人のいる家のチャイムがピンポンとなる。


「この時間に?宅配かしら?明日の夕方に指定したのに……あなたが帰ってこなかったらいなかったわよ?まったくもう……なんのための指定配送代、いなかったらどうしたのかしら……」


 ブツクサといい玄関に向かう母を見つめて2階に上がると母の怒声が鳴り響いた。


「紅子!早く降りてきなさい!」


 めちゃくちゃ怒ってるなぁと思いながらなんかやったっけ……と記憶を探る。

 そう言えば期末テスト見せてなかったかも知れない。でも卒業だし……高校も受かったしそこまで怒るようなことじゃないはずと思いながら言い訳を考えながら階段を降りていった。


「あれ?みんな来てたの」

「「「「うん……」」」」


 気まずそうに4人が答える中でナンパしてきた男の子(紅子談)が気さくに片手を上げて答えた。


「や、さっきぶりだね」

「ナンパと人身売買の人……とポスターのおじさん」

「人身売買……」

「おじさんか……」

「紅子!役人さんと議員さんだよ!」

「役人が人身売買をしてるんだ、この国はもうダメだ……」

「してません……」

「あれ?じゃあこのナンパの人は?美人局?」

「男の場合もそうなのかな?まぁいいや改めまして……防衛省のオブサーバー、まぁ正式なものは決めずに宙ぶらりんにする予定だけど、ただいま絶賛戦争中のバルサク宇宙帝国元科学整備開発局長のエデソン。今回の戦争の発端だよ。よろしくね」

「まぁ、そういうことでね。日本政府は彼の日本国での研究開発を受け入れることとなった、そしてその一環として……」

「バルサク宇宙帝国と一時的に戦ってほしんだ」

「え?」

「君等数日前にピクニックにいっただろう?あそこの……山に」

「え、はい」

「そのとき皇帝陛下の攻撃がぶつからなかった?正確にはそれらしきものがぶつからなかった?」


 んーと頬に人差し指を当てながら紅子は思い出そうとするが全く思い出せなかった。


「忘れてるだけです。話が長くなるので私達4人は覚えてます」

「あ、そう……。大物だね……。じゃあ話を続けようか、それはハーツという……まぁ研究中の未知のエネルギーでね。細かい説明はともかくそれを君たちが吸い取ってしまったんだよ。それで君たちはハーツを手にしたとだからこうして僕らがナンパ師に来たわけさ。帝国と戦ってくださいって懇願するためにね」

「その細かい説明を聞きたいんだけど」

「やめといたほうがいいよ~なにも理解できなかったし」

「専門的でよく分かりませんでした」

「じゃ碧ちゃんがわからない話を私が理解できたら私が頭いいってことじゃん」

「その発想がもう頭悪いと思う」


 キリッとしたベニコに対してエデソンは淡々と説明を始めた。


「まずこの星の科学に当てはめるとだね。ハーツというものは力を増幅する、といったほうがいいのかな?もしくは力の強調。研究最中だからことは言い切れないんdなけど。そもそもこの世界の物理学的に考えると非常にありえない点が多くてね。まず量子力学的に考えるとだね、基礎はわかるよね」

「わかんないからもういいです」

「そっか……」


 少しだけ落ち込んだエデソンはちらりと議員に目線を送った。


「とにかく、日本政府は貴女方5人に協力を求めているのです。いまから総理に電話してもいいです」

「ダサいポスターのおじさん……」

「次の選挙ではもう少し構図を考えておきます……。とにかくハーツを持つ特殊な人間である貴方がたにはご協力を願いたいのです!この国のために!お願いいたします!日本を!世界を守るために!就職先は斡旋しますので!国債とか一部債権とか、怪しくない程度に便宜を図りますので!」

「世界の命運がかかっていますので!何卒!」

「ハーツの事例は君たちしかいないんだ、できればやってほしいな」

「ちょっと他人事ですね」

「地球人じゃないからね、うら若き乙女が国のためという理由で頑張る価値があるならやったほうがいいよ」

「寝坊しても内申下がらない?」

「内申が何か知らないけど融通はきかせてくれるでしょ、世界を救うんだから、ねぇ?」

「入りたい国立大学にねじ込みます。内申も成績も遅刻も心配は無用です」

「やります!勉強は嫌いです!」

「こんな理由で受けるなんて恥ずかしい……。こんな娘が役に立つのですか……?」

「ハーツの特殊性を考えたらいるだけでも役に立ちますよ、奥様」

「いるだけでいいのなら……」


 ま、戦うことにはなるだろうけどね。

 エデソンはその言葉を飲み込みほくそ笑んでいた。




 同時刻、南極にて。


「諸君!我々は地球の大地を踏みしめたのだ!」

「陛下、氷なので大地ではありません」

「……細かいことを言うな!シュタイン博士!今ここに勇敢な帝国実働部隊の四天王が揃っている!我々をコケにした地球と戦うために、だ!知っての通り月面は基地として改造した!我々が交渉したのはなぜか!我々は侵略という手段、戦争という方法でこの様な国家になったのだ!私はそれを心底嫌う、だが彼らはそれをたやすく踏みにじりエデソン博士の発明を使い武力行使を示唆してきた。もはや交渉相手とは足り得ぬ!あのような組織を野放しにしてる国々も信用に値せん!今頃北極も抑えたであろう。議会の元老院諸君!この戦争への協力を求める!」




 帝国軍旗艦バルサク


「皇帝陛下はこの戦争へのご協力を求められた。私も賛成である」


 議長職を継いだばかり若い女性、シーザ議長は皇帝の演説で中断された自らの演説をしきりなおした。


「今の演説を聞くように地球側の誠意の無さには呆れる他ない。我々は対話をしたのだ、100億人全てを受け入れろとも言っていない、月面使用許可など本来なら所有権のないものをわざわざ取りに行き、技術の提供まで込みで交渉していたのだ。それがエデソン博士が亡命してすべての技術が作れると知った途端どうだ、この対応だぞ?舐められたままでいいのか?」

「「「「「「否!」」」」」」


 シーザの問いかけに元老院議員たちが答える。

 この演説は地球だけでなくバルサク宇宙艦隊全てに放映されているのだ。それらしく見せねばならない。


「そうだ、エデソン博士はすべてが再現できると言ったが本当にそうか?おそらく彼は過大評価をしている。この星の技術は我々を100とした時5くらいだ。再現できないものも多いだろう!根本的に技術も資源も足りていないのだ!彼らは砂漠を緑地に変えることが1日で出来ない、凍土を居住可能にする事ができない。これが我々に何の脅威になるのか?」

「「「「「「ならない!」」」」」」

「我々は臣民一人一人が兵士である、もしあの星が我々の予想より優れた文明と技術を持ち多くの幹部が倒れた時!もしも……今よりさらに戦うときには諸君らは戦場に立つか!」

「「「「「「立つ!」」」」」」

「私も立つだろう、もしも地球側の市民すらも我々を攻撃した時諸君らは市民を殺せるか!軍人ではない人間を殺せるか!」

「「「「「「この手で殺す!」」」」」」

「帝国議会は皇帝陛下のため全面的に協力をするか!?」

「「「「「「する!」」」」」」

「帝国憲法を改定し懲罰戦争や自衛戦争ではなく侵略戦争を行うか!」

「「「「「「改憲万歳!」」」」」」

「よろしい!帝国は言い訳をしない、これは侵略戦争である!地球側の諸君は市民に我々を攻撃させないことを徹底させると良いだろう、我々が君たちの方を守らなければならぬ理由も道理もない。皆殺しにしたところで文句を言われる筋合いもない!降伏したところで国家の主権は許さん!国連の如き組織に追随する国家なぞいらぬし我らの役には立たない!宣戦は既に布告されているのであらためて言う必要はないが……帝国は地球と戦争状態にある!帝国万歳!」




「あやつ余より過激ではないか?」


 困惑する皇帝をよそに軍部はやる気に溢れていた。


「帝国臣民の本心です陛下」

「我らも腕がなります」

「エデソンとは仲良くなかったので私のせいかもしれません……帝国臣民が死ぬのは私のせいかと思うと……」


 反面、バルサクの科学分野を司るシュタイン博士だけは意気消沈して答えていた。


「それは違う、余が決めた、議会も決めた、臣民も支持した。もし責任があるとすれば余だけで……いい。それでいいのだ」

「申し訳ありません……陛下」

「うむ、全世界に流している議会中継も終わったな。こちらに戻ってくるぞ……全世界の諸君!我々は言葉を隠さぬ!これは侵略戦争だ!我々が新天地を得るか、君たちの国家がすべて滅亡するかの戦争だ!ナポレーン元帥!」

「はっ!」

「南アメリカ方面から帝国軍を率いて忌々しいアメリカ合衆国を滅ぼせ!国連を吹きとばせ!シュタイン博士!」

「はい……」

「月面基地を完成させ兵器工場を作り帝国軍を援護せよ!アッサー騎士団長!」

「ここに」

「オセアニア方面を騎士団で制圧せよ、戦力不足の場合は元帥に相談せよ」

「オセアニア方面までなら騎士団のみで可能です」

「よし、シタッパー提督!アフリカ方面の制圧を頼むぞ」

「はっ、仰せのままに」


 俺はシタッパー提督、艦隊戦が得意だが地球用の艦船もなく宇宙戦艦で地球を攻撃したら本末転倒になるのでほんとうの意味で下っ端になった男。

 切り込み部隊を海兵隊みたいな使い方しかできないし発言力は勝手に下がりそうな男。

 転生したらニチアサっぽい世界の敵幹部になっていた。


 そしてうっかり口を滑らせたせいで前世の母星を滅ぼすかもしれない男になった

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