第2話

 地球との戦争が始まって1ヶ月。地球側は地球防衛軍を組織したもののエデソン博士の発明は我々を苦しめるには至らずナポレーン元帥は旧ブラジル周辺で地球防衛軍を撃破、アメリカ、ヨーロッパは自国防衛のため南アメリカ方面を事実上放棄。オーストラリアに空挺降下をしたアッサー騎士団長はメルボルン、シドニーを包囲中ダーウィンを陥落させポートモレスビーへの攻撃計画を練っていた。


 そして地球防衛軍設立で大量の資金を巻き上げた挙げ句あっさり自国優先で他国を見捨てた国連内部では内ゲバが始まり、多国籍の地球防衛軍も祖国を見捨てた欧州諸国を守らせることに嫌気をさし寝返り、降伏、反乱とひどい混乱模様だ。


「それで、シッタパー?アフリカ方面軍は?」

「勝ってはいますが兵力が不足しています、ナポレーン元帥」

「せっかく役職を省いたんだ、普段通りでいいよ。で、どれだけ必要だ?」

「リザード軍集団を貸していただきたい」

「軍集団をか!?勝っているんだろう!?」

「アフリカ方面は広すぎます……点と線のみの確保しか出来ません……入植地としては良い場所なのでシュタイン博士にも協力を求めに行く予定です。もともと艦隊の兵なので接舷切り込み隊を地球式に海兵隊と呼称し直し訓練をしています」

「それはどうなったのだ?」

「オセアニア方面での活躍はできるかと……マダガスカル攻略には役立ちましたが……アフリカ北部に攻勢するには現地の内ゲバやらなにやらで……」

「勝手に争わせておけ!スエズを抑えるしかないぞ!パナマを抑えるのに海兵隊を貸してくれ、海運を抑えることができれば勝利に近づく。統治を捨てた場合はどれほど必要か?」

「万全を期すための軍集団です、リザード元帥は砂漠森林戦の名手です!是非派遣を!内ゲバが飛び火して背後から攻撃されては無駄な被害が出ます!」

「…………わかった、リザード軍集団を派遣しよう。海兵隊をパナマ攻略に貸してくれあとオセアニア方面にも……アッサーに話はしておく」

「ご助力感謝いたします」


 そう、俺だけうまくいってないのである!欧米諸国の内ゲバと内輪もめと暗殺合戦にアフリカ戦線は何ら寄与してないのである。戦いに勝っても統治は出来ず独立宣言を始め潰すいたちごっこ、その上独立宣言後には独立宣言した別国家と勝手に争い始める始末。うちは陸軍じゃないのになんで広大な土地を俺が担当してるんです?そろそろ正義の味方がでてくるパターンですよ?これ各個撃破するなら間違いなく俺の軍なんだよなぁ……。地球征服しようとした諸先輩方って世界戦略どうやってたの?日本ばっか攻めてたけど。


「というわけでアフリカを我々の入植地としたくシュタイン博士に協力を……」

「月面基地まだ出来てないんですけど!?」

「はい、アフリカ切り取り後でもいいのですが先に話を通しておく必要があるので……」

「無理無理無理!あいつら自分の住んでる星に核なんてもん使ってくるんだよ!南アメリカの汚染除去が最優先だよ!対して威力もない爆弾だと思ったら汚染爆弾だったよ!撃つか?普通?自分の住んでる星で自分と同じ星に済む同類ごとあんなもん!」

「一応地球では一番威力が高い兵器らしく……」

「あの程度で?なんで戦争しようと思ったんだよ!入植目当てじゃなければ隕石ぶつけるか帝国艦隊旗艦の主砲ぶっ放せば終わりだぞ!こんな星さぁ!何が地球防衛軍だよ!防衛するどころか我々より破壊してるじゃないか!」

「報告はいたしましたよ、では私は陛下のもとへ」


 ふんがー!と怒るシュタイン博士を置いてとっとと南極基地へ向かった俺は言い訳という名の戦況説明のため皇帝陛下の元へ向かったのだった。おそらくしばらく機嫌が悪いシュタイン博士には近寄らないほうが「ガンッ!!」いい。なんか投げてるな……。


「それでシタッパー提督、アッサー騎士団長。戦況報告を」

「はっ!アフリカ方面は統治の人手が足らず混迷を極めており、内ゲバしつつ独立後に同じく独立した部族と戦争を始める始末で……」

「オセアニア方面は海上上陸戦に手こずっており……メルボルン・シドニー包囲は続いておりますが……シタッパー提督が船さえ率いてくれれば鎧袖一触なのですが」

「余が地球側の軍艦はすべて壊してしまったからなぁ……鹵獲も出来ないし……宇宙軍の船で攻撃したらこの星が壊れてしまう……帝国船は輸送船になってしまっているな」

「オセアニア方面ですが我々の編成した海兵隊がお役に立てるかと……むしろ対応戦線を変えてほしいくらいでして……パナマに送り出す予定ですが我々はスエズ強襲上陸でしか使わないので残りはオセアニア方面軍で使っていただければ……」

「本当か!?シタッパー君!助かるよ、騎士団から誰か派遣しようか?」

「リザード軍集団をお借りしたので今は……欧州攻撃時にはお借りするかと」

「ナポレーンちゃんから借りたか……」

「ブラジル方面から西アフリカ上陸と合流も出来ますからね」

「マレーまで抑えられない我々の不甲斐なさのせいで頼れなかったか、すまない……」

「話はまとまったか?引き続き地球攻略作戦を遂行せよ、シタッパー提督!我が帝国幹部陣の黒一点として頑張ってくれたまえ!」

「はっ!」




 それから一ヶ月。スエズ制圧、オセアニア方面制圧、パナマ制圧、帝国軍は快進撃を続けたがスペイン防衛戦に俺は敗退。リザード軍集団の人食いパエリアン将軍が戦死。フィリピン攻略戦に勝利したアッサーは人員が無事だったため急速施工や古い船を引っ張り出し無理やり再建したアメリカ太平洋艦隊の空襲と艦砲射撃により冷水をかけられ、ハワイ攻略作戦を決行するため助力を他幹部に懇願。ナポレーン元帥はメキシコの統治が非常に厳しく根切り作戦に切り替えるかの会議を行うなかアメリカに対するハラスメント攻撃を敢行し続けている。


「アッサー、本当にハワイ攻略は必須か?」

「必須だ、シュタイン。地球を破壊しない程度の艦隊はどれほどできたんだ?」

「100隻で十分でしょう?ボロ艦隊相手ですよ?シタッパー提督ならすぐ勝ちます。こちらは核浄化が手間取っている……月面基地はなんとかなりそうだ、あとは自動機械に任せてアフリカ植民化に注力したい。兵器群でなんか開発必須なものは?」

「帝国軍はない……」

「騎士団同じく」

「まともに艦船の指揮ができるなら問題ありません」

「それよりメキシコ戦線だ、何だの土地は!わけのわからん薬物を売りさばいたり敵味方攻撃してきたり訳がわからんぞ!しかもそれを煽ってるのはアメリカや欧州だ!なんなら制圧した南アメリカの人間すらアメリカを攻撃するよう煽ったりしてるぞ!何だあの国は!自分の住む星と民族を何だと思ってるんだ!アメリカと戦うと言ったら地球人の兵が募兵に来たぞ!」

「アフリカで同じことを経験しましたよ」

「そりゃあ軍集団を求めるわけだ!これを盾に言ってきたらそんなバカなと断ったかもしれん……地球の危機だぞ?なんで足を引っ張りあってるんだ!」

「世界の敵ができた程度で団結できるならとうの昔に団結できるのでは?」

「…………」

「まぁ、それくらいでいいだろう。余は勝利を諦めたわけではない、停滞しただけの話よ……講和も終戦もまだ早い。未来を考えたらも少し領土必要だ。シタッパー提督?米軍艦隊との決戦指揮は任せたぞ」

「スペインでの敗退の汚名返上をいたします」

「人食いパエリアン将軍が戦死するとは……どうしてなかなか侮れないではないか」

「飽和核攻撃から軍を守り汚染源ごと丸呑みして戦死しました。私の指揮が至らぬばかりに……」

「言うなシタッパー!彼も戦争に出たのだ、理解はしている。なぜああも大地を汚す核を連発するのだ?正気か?」

「スペインから秘密裏に降伏の連絡は来ています。もうどちらが敵かわからないと」

「欧州は一つの国ではなかったのか?」

「違います、国家連合体だそうです」

「ややこしいな、この期に及んで内ゲバとか頭おかしいだろ!為政者は何をやってるんだ!」

「勝利後の利権分配会議をしているらしいです」

「勝ってからやれ!」


 うーん、やっぱニチアサみたいに一致団結して敵と戦ったりしないんだな。俺達のほうが団結しているぞ。中国日本戦線より先にハワイとかなーんか嫌な予感がしてくる。日本に変身できる戦士がでてきて激戦化しそうな予感がする。今が勝つ最大のチャンスだと思うんだけど根拠がない。


「海兵隊としてはハワイ攻略前に日本を抑えてロシア中国線の蓋をしたい、米軍を釣り出せるかもしれない」

「助けないだろう、隣国に危険な薬ばらまいて遅延戦術してくる倫理観を持ってるぞ」

「それに中国戦線は東南アジア方面から攻めたい、兵力的にはそちらの方が良いし……帝国軍こちらに回せるか?海兵隊上陸後の後続で」

「メキシコで手一杯だ、リザード軍集団派遣部隊もアフリカ統治も楽ではないし……日本朝鮮ラインで攻め上げても中国ロシアと多方面作戦になるのは正直避けたい」

「勝手に争わせて人口を減らすか?」

「余としては武装蜂起や攻撃しない限りは放置したいが……侵略はしてるが虐殺したいわけではないぞ、今までも降伏した民族を同化させてただろう?帝国法を守っていれば腕が10本あろうが空を飛ぼうが鋼鉄製ロボだろうと構わん!」

「とにかくハワイ攻略後アメリカに蓋をして、できればメキシコ方面、欧州方面、ハワイ方面から圧をかけたい。北極も抑えてあるしグリーンランドの基地も順調、カナダ政権は我々と裏取引をして然るべき時に寝返るという。アメリカに勝つまでは動くまい。宗主国らしいイギリスは政権交代したみたいだがこの辺は本当に読めんな。ロシアは動向不明だ、中央アジア方面で軍を動かしているが……中東は動きがない」

「中東を抑えにいきますか?スペイン方面にある程度残せば戦力抽出は可能ですが」

「我々は石油を必要としないが奴らは必要としているからな、アリだが……一般市民の生活が混乱するとヤケクソで国民全員徴兵制度をしいてしまった時が面倒だ、その場合は?」

「我々が統治場所で合成石油を売ればいいのでは?我々のシステムに置き換えるのは勝ってからで十分、鹵獲されます。向こうにはエデソン博士もいますからね」

「エデソンはどこにいるんだ?おそらくアメリカだと思うが……身柄を押さえれば諦めるだろう。では……日本攻略作戦を却下しハワイ攻略作戦を決行する!……シタッパー提督すまんな。提督としても現状の海軍戦力のバランスとアジア方面の海軍根拠地を作るために行いたかったであろうが……」

「いえ、無理を言いました……」

「地球を壊さない程度に戦争をするなんてなんとまぁ我々に不利な戦いだろうか……手足を縛って戦うしかないとは……」


 まぁ実際すごい科学力の敵組織が来たらこんなもんだよな。地球を壊すことが目的ではないなら結構手間取るしな。

 それにしても日本攻略は後回しか、もうすぐ4月だぞ?お約束ならニチアサヒーロ-が誕生してしまう。そしてら俺達は全滅だぞ!!稀に敵で生き残るやつもいるが……このメンツでツボに封印されて宇宙を彷徨うならまぁそれでもいいが……。エリザベートの歌でも歌いながら宇宙を漂流か、提督やるよりは気楽かもな。


 せめてエデソン博士が日本にいればそれを理由に攻撃できるが……お約束だから日本にいるんで日本を攻撃しましょうなんて意見が通るわけもないし……どうしよう。


「シュタイン博士、巨大化して戦う装置ないか?」

「何を言ってるんだ君は……?」

「こう、50mくらい大きくなって戦う……」

「なんで?」

「追い詰められたら巨大化して……」

「どうして最初からしないんだい?」

「いや、危機に陥るととか、こう……使うと寿命が縮むとか」

「そんな危険なもの使えるか!自分の体を何だと思っているんだ!現状巨大化なんかする必要はないだろう!必要が予見できれば作るが……あるのか?」

「ありません……」

「巨大化して攻めてくる異星人とか同化政策にも差し障るじゃないか!あんまり馬鹿げたことを言わないでくれたまえ!自分の身を大事にしろ!」

「はい、ごもっともです……」


 でっかいロボ出てきたらどうするんだといいたいが……どうして出てくるんだと言われたらうまく返せない。歴代の先輩方ってこんな組織内で立ち回ってたんだよな。まぁ帝国軍は仲いいし足の引っ張り合いもないけど。真面目に検討して真っ当な理由で却下される方が嫉妬で潰されるより辛いかもしれない。


 そもそもなんであいつらは巨大化出来るんだよ?芋ようかん食って巨大化とかにいたっては意味わからんだろ!

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