第3話
太平洋での決戦。人類側はこの海戦に全てを賭けている。我々は急造にして劣化艦隊だがこれでもこの星を破壊しない程度に抑えたもの。久々の艦隊指揮に俺も胸が鳴るぞ!
初手で世界の艦隊を破壊したためほぼ制海権のある国はない、アメリカ合衆国がなんとか型落ちで太平洋艦隊を再建したくらいだ。もしもこれに勝つことができれば我々には大した打撃ではないが人類側の士気は大いに上がることだろう。世界各国も艦隊再建に向けて注力するだろう。
最も我々の作戦はアメリカ側に圧力をかけ、できれば征服。人類側の継戦能力を奪い切ることであり、艦隊戦の敗北があれば帝国軍・騎士団・海兵隊によるアメリカ攻略作戦を実行するだけなのだが……流石に我々基準でこの艦隊が弱すぎるので敗北も致し方ないと皇帝陛下からのお墨付きもある。だからといって負ける気もないのだが……。
ミサイルと旧式の戦艦主砲の嵐、ヤケクソでありったけの一撃をぶつけるためだけの艦隊。潜水艦は破壊しきれなかったのか急造の潜水艦隊が魚雷やらなにやらを手あたり次第に発射している。航空攻撃を恐れていたが空母は流石に間に合わなかったか?博物館から引っ張り出してくると思ったが……現代兵器を乗せるほど改装が間に合わなかったか?
「迎撃せよ、電磁ミサイル発射!追尾ミサイル発射!追尾爆雷投下用意!」
技術力は遥かに上だぞ、作れば星ごと破壊する宇宙要塞やらレールガンだってあるわ!この星を傷つけないよう勝たなければならないんだからこちらのほうがよほど不利だぞ!
わずか5分、アメリカ太平洋艦隊は海の藻屑になった。よく見ると他国の海軍旗もある、どうやら世界連合艦隊といったところか、ようやくまともに団結したな。過去形だがね。
「敵艦隊周辺に見えず」
「よし、なんとか勝ったな。航空戦には不安があったが出してこなかったし……撃ち落とせるが特攻攻撃などされたら流石に損傷が」
「ミサイル急速飛来!狙いは一定ではなく無差別です!1000発近いです!」
「ヤケクソか?それとも意外と持たなかったから攻撃時刻がずれたのか?撃ち落とせ」
「核弾頭です!」
「は?」
正気か?海洋資源はどうするんだ?今後魚を食わないつもりか?勝っても終わりだろ、お前らのほうがよっぽど悪の組織だろ!ふざけんな!
「艦船の臨時浄化機能を使え!核を浄化しろ!海に落とすな!」
「数が持ちません!」
「念力を使えるやつがいたらミサイルを浮かせろ!核で汚染されたら住むのが大変だぞ!」
「1000発です、不可能です!」
「ナポレーン元帥!アッサー騎士団に連絡を取れ!シュタイン博士にも!核攻撃の浄化かミサイルを爆発させない手段を考えてくれ!前段同時着弾か?」
「ばらつきはありますが後数分です、1分から数分ずれるかと」
「核ミサイルまでずれてるのか?かき集めたか自国で賄ったか知らんが同時着弾じゃないあたり爪が甘い!先行到着弾の核を浄化して海に受け流せ!許容いっぱいになったら自動追尾操縦で船ごとぶつけて爆発の瞬間に強制的に宇宙にでも転送してしまえ!」
「ナポレーン元帥はハワイ上陸作戦決行中、数分で動かせる直属の核浄化装置は持っていないとのこと!アッサー騎士団長は核浄化部隊3大隊をこちらに転送できると」
「頼む!」
「シュタイン博士が月面から核浄化装置を投射するとのこと!未完成なので5割が限界と」
「再計算しろ、500発分ならどうだ!」
「艦隊がすべて宇宙へ転送されるころにはギリギリ……数隻は残るかもしれません」
「なぜ地球の環境を地球に住むやつよりに気にかけなければならないんだ!」
数分後、バルサク宇宙帝国地球艦隊は12隻を残りして壊滅した。俺の艦隊が……どうして……悪魔かあいつら。
また艦隊もいない無能提督に戻ってしまった……。
「では、今回の作戦結果の発表を……シタッパー?お前大丈夫か?状況はわかってるから休んでもいいぞ。お前の責任でもないから、余はわかっているぞ……ほら元気を出して、な?」
「ありがとうございます……バルサク宇宙帝国地球艦隊は12隻を残して壊滅しました。敵混成連合艦隊を全滅させました。核弾頭は回収して海洋汚染は避けられました。ですが……」
「いや、それだけで十分、艦隊自体が敗北することも予想してたしな、な!?な!?」
「帝国軍、同じく問題ないかと。シタッパー提督の手腕は見事です、いや、さすが名提督!帝国の誇る最高の軍人!」
「騎士団同じく、むしろ功績しかないかと。バルサク宇宙帝国の幸運は彼がいたことです、間違いありません!」
「私が言える立場化はわからないが月面からの核浄化装置試験に成功したのでシタッパーくんに問題はないかと。むしろ実験ができて成功もしたのだから褒める以外になにかあるのですか」
ものすごく気を使われている。まぁ職務的に海兵隊の指揮って俺じゃないもんな本来の切り込み部隊を考えると。
「ほら、な?な?そう落ち込むな!艦隊はまた再建できる。今度は各浄化装置を増やしてな、アレほど大規模に核攻撃をしてくるとは思わなかった。我々には聞かないが汚染がひどいハラスメント兵器だ!渡すぐらいなら星ごと滅ぼすとか悪の軍団ではないか!我々が本来やるようなことではないのか!」
「やったら住めないのですからやりませんけどね……」
「いえ、核の力で動く軍艦があったようなので最初期の攻撃で核汚染された海洋地域があるかと……」
「……余の過ちだった……なんと謝罪すればいいか……」
「まさかそんなことわかりますまい、仕方がありません……」
まぁ異世界から来た科学力のすごい連中に核攻撃が効くわけないもんな、向こうが躍起になって使うのは我々に効いていると信じているか、本当に死なば諸共か……。人食いパエリアン将軍は核兵器数十発分で亡くなったがあれは汚染を吸いきったことと体質的に核を受け付けなかったことだろう。人間とて塩に致死量があるだろう、同じことだ、他の動物ならもっと少量で死ぬみたいなやつ。俺なら1万発受けても多分ケロリとしてるが。人食いパエリアン将軍も汚染を無視したら多分生きてただろうが……ようやく住める星が見つかったからな……すまない。
「陛下、結果発表に戻しましょう。シタッパー提督は功績第一、次に」
「ナポレーン、推薦か?まぁ余もそれでいいが」
「帝国軍はハワイ攻略作戦に成功、陽動のスリランカ攻略作戦に成功、インド方面に楔を打ち込みました、同時期にキューバ、バミューダ占領、ミサイル基地を建設しアメリカ軍に対し攻撃を続行しています。核浄化装置を据え置き核弾頭攻撃を無効化しています。汚染がなければ大した威力のない攻撃ですからね」
「騎士団は台湾方面を攻略、日本、中国、朝鮮半島の橋頭堡として基地化を進めている。そしてヒマラヤ山脈を抑えた、インド、中国への牽制に使うため山脈基地を建設する」
「核浄化装置の改良と量産を続ける、艦隊再建もするが性能は少し上げても大丈夫かもしれない、核浄化装置の許容量は上げるまだ1万発近くはあるらしいしな。量産しているんだろうか?」
「既にバミューダ、キューバに数十発を発射している、量産も視野にいれるべきだろう、良いのかこんなもの自国の近隣にぶっ放してて」
「星ごと汚染にかかる奴らの考えなぞ知るか!」
「とにかく博士は頑張ってくれ……」
効きもしない核攻撃がこうも頭を悩ませるとは思わなかった。
「よし、纏まったな!ではシタッパー提督の懸念通りアジアの根拠地を取りに行くとするか!日本攻略作戦を発動する!」
「では私が……」
「シタッパー自ら出る必要はあるまい?艦隊再建に注力したほうがいいのではないか?」
「海兵隊に任せておいてもいいだろう、勲功第一ががっつくと戦況が悪いと思われるぞ」
「まぁ、流石に休んだほうが良いだろう。戦闘後のほうが神経を使っただろうし」
無理やり立候補も出来ない空気にされた……完全な善意だから強行するのも厳しいとこだな。せめて海兵隊総司令官マリンをいきなり投入して最悪の展開に備えたい。
「では海兵隊総司令官マリン自ら日本攻略を」
「おいおい!アメリカ戦線が流石に最優先だろう!たしかに海兵隊攻撃が向いてる土地柄だが……次の帝国軍目標はアメリカ領海岸攻撃とカナダの寝返り、及び余裕があれば騎士団のアメリカ中部空挺降下で分断する計画なのだぞ?総司令官と総軍は貸して欲しい」
「俺がアメリカ戦の指揮を取るから」
「同格の君に海兵隊を率いてああしろこうしろとはいいづらいじゃないか!我々の関係では言えるが軍の上下が出来たと思われる!本来君は提督なんだから!アメリカが落ちれば人類側は降伏に傾くはずだ。欧州は既にギスギス、ロシア側も漁夫の利を狙っているようだし……ここはロシアも叩いておくべきか?アメリカを先に片付けてロシアが盟主にならんうちに……」
「欧州とロシアは不仲だそうだ、心配はいらんだろう」
「アメリカが落ちてなおいがみ合うとは思えない」
「そうかな?」
「とにかく私も日本にそこまでの戦力を送るのは過剰だと思う。騎士団から第4騎士団を派遣するから……第13海兵団と協力して事に当たらせればいいだろう?海兵団一つで落とせるとは思うが……シタッパーがそこまで言うから懸念材料があるのだろう?」
お約束ですとはいえん、お約束じゃない可能性があるからな。だが俺の読みだとここで変身するヒーローが登場して俺達はコテンパンに負ける、ついでに巨大ロボが出てきて負ける。バイクに乗ってる改造人間ならまだいいが、遥か彼方の星から来た宇宙警備隊だったらもっと困る。もっとも宇宙警備隊なる部隊にはここ100年戦争をしてる時に介入された覚えもないが。
さて……どうでっち上げようか……?
「エデソン博士がいるのにアメリカ側の攻撃が手ぬるい、核攻撃も同時攻撃ではなかった。彼なら同期攻撃装置くらい片手で作れるだろう?」
「うん、確かに……だがそれが日本と何の関係が?」
「日本だけ動きがない、ロシアは中央アジアで兵を動かしている、インドは防衛戦を作るために国内を纏めようとしている、中国も国境沿いに兵を起き海岸沿いに要塞を建築している。米国欧州は語るまでもない……日本はなにをやっている?降伏の議論はあるが接触はない、そうですね陛下」
「ああ、ない。シーザ議長からも降伏交渉や裏取引をしたい国の連絡は来てるが日本からはない」
「ナポレーン、最前線で武装も固めずこのようなことをする理由は?」
「…………慢心か油断か、他人事なのではないか?」
「戦争は始まっており我々のプロパガンダ映像を強制的に見てるのにか?そこまでアホなやつ指導者をやれて平然としてる国があるのか?」
「……ないな」
「アッサー、攻撃を仕掛けない理由が勝てないでもいいが何もしない理由、もしくはしないように見せてる理由は?」
「カウンター狙いか……いつでも片付けられると後回しにさせる間に軍備を整えるためだ」
「エデソン博士、日本にいるのではないか?」
「いや、まさか……」
「……一理ある、やつなら国家の名誉なぞ捨ててそうしろと平気で命令する」
よし、シュタインがこちら寄りになったぞ!このまま全力で攻撃したい!なんとか日本を落とせれば後は脅威もあるまい!力押しでいいんだ!押せ!押さんか!
「だが、この期に及んでアクションがないのも変だろう?次はどう考えても日本だと1月くらい前から察しているのではないか?アッサーの言うとおりであってもだ」
「カウンターの準備が整ったか?エデソンがいると考えたら可能性はあるな、アメリカ攻略戦は中止しよう、様子を見る」
「よし……わかった。帝国軍、騎士団、海兵隊の3軍を日本攻略につぎ込む、我々はモニターで観戦するとしよう」
「ジャイトン将軍、北海道攻略へ」
「キホテ第4騎士団長、東京攻略戦へ」
「コンブリヤ第3海兵師団長、沖縄から九州攻略へ」
「私の機械化兵は月面基地から一部抽出して各部隊の援護に出すことをお許し願いたい」
「うむ、ではあらためて……日本攻略作戦を開始する!」
結論から言うと負けた。やはりニチアサの戦隊っぽいのがいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます