第29話

 八王子爆発の余波は講和、もとい降伏交渉をしていた、していたが無視されていた日本政府にとってはこれ以上のない悲劇だった。

 巨大化して爆発することでも危険であり住民たちは戦闘をやめてほしいと訴え続けていたのだが日本政府も地球防衛軍も交戦すらしなくなった場合どうなるかわからない、交渉ができるまでは最低限の交戦を続けねばならぬと意固地になっていた。

 皮肉なことに最低限の交戦が理由もわからぬ巨大化や謎の爆発を生み、最低限の交戦がバルサク宇宙帝国側に無制限攻撃作戦に舵を切らせることになったのだが。

 少なくともこの事例により巨大化しなくても街一つを吹き飛ばす爆発が起こりえることを証明した。そしてピュアハーツはまっ先に逃げたという認識になった。


 実際は連鎖起爆で街を吹き飛ばしたのだが技術の差なのかそうとは見えなかったことが拍車をかけた。

 戦闘慣れしたピュアハーツの油断によって確殺を悟り直ちに横浜に転進したことがさらなる不信感を招いた。

 こうして住民たちは自衛をのためピュアハーツ出撃は不要と個別で連絡を出す街が出てきて近隣の街に巻き込まれてはかなわないと近隣の街に圧力をかけたりギクシャクし始める。


 一方の帝国ではシュタインは皇帝の髪の毛を取り込んだことにより同じように皇帝の力を取り込んだピュアハーツとの戦闘で活性化されて巨大化などを生むのではないか?とか数度の戦闘を経て仮説を出したが、それはすなわちピュアハーツ自体を撃破したら5人が巨大化するのではないかという大きな懸念をバルサク宇宙帝国に生み出すこととなった。




「流石にあれが巨大化したらもはや艦隊を出すしかないのではないか?」

「その場合はどうやって地球の被害を抑えるのか?」

「シュタインの仮説があってるかどうかも正直わからないな、多分誰もわからん、陛下は自分の髪の毛を食べてみないのですか?それで分かることがあるかもしれない」

「河豚が自分の毒で死ぬのか?」

「河豚が自分で毒を作ってるわけではありませんし……最近良く食べてますよね?」

「山口に視察に行ったらよく出てきた、肝が美味かった。人類は食べると死ぬらしい」


 ああ、そりゃそうだよねと思いながらシタッパーはもしかして自分は死なないのかな?陛下だけか?と思いながらも今度試してみようか少しだけ考えた。


「そもそもそのたとえだと陛下の髪の毛って毒なんですか?」

「毒じゃないが人によっては毒となるんだろう」


 自分で行っておいてちょっとだけムッとしたように皇帝が言い返す。


「陛下、今のところ人類側で言う変態の成功率が高いんですが……」

「…………余が変態だとでも?」

「不毛な会話はやめましょう、現実逃避は十分です」

「それ余が変態だってってことか?なぁ、我が同志たちよ、臣民よ、相棒たちよ」


 もしかしたら類は友を呼ぶんじゃないかと触れるのが危なくなってきたので流すアッサーに皇帝は少し憤慨しながら言い返す。

 が、根拠がないのでシュタインに任せますとシタッパーとナポレーンが言ったためシュタインにはこれ以上ないプレッシャーがかけられた。


「いや、別に陛下が変態とは思いませんが……ここは男性の意見を聞いたほうがよろしいのでは?」

「いや、先に同性の意見を聞きたい、答えよシュタイン」

「…………いや、違うんじゃないかなって、いや変態の定義がわかりかねますのでまずそれを定義していただきたいと言うか……そのぉ……」

「小難しい定義や何やらはいいから答えよ、定義無しでそう思うのだ?皇帝が変態では国家の名誉に傷がつくだろ、直すところは直さねばならん、答えよ、人類側から見て世は変態なのか?とくと答えよ、すぐに、さぁ!」

「いやぁ……そのぉ……自分の抜け毛を食べさせてあんな怪人にするのって人類側から見たら相当な変態なんじゃないですかね?」

「ではなにか?お前が手動したことで世は人類側から髪の毛食わせて怪人に変える変態だと思われてるわけか?」

「まぁ……そうですね……」

「シタッパーどう思う?」

「陛下は美しく統治者としても極めて優れていらっしゃいます、変態ではありません」

「……まぁ口調が固いことは置いといていいだろう、変態はシュタインの方だと訂正しておくよう議会に働きかける」

「えぇ!?」


 よっぽど変態のレッテルは嫌なんだなと思う幹部たちは、たしかに一番追い詰めたのが触手とロープで縛るやつじゃ宇宙の変態国家みたいだなと他人事のように思った。

 普通に考えてそんな変態帝国に征服されたくはないだろう。


「話を戻しても?」

「ああ、うん……ピュアハーツが巨大化した場合?どうするんだ?」

「皆巨大化できればいいが……ただ巨大化させるだけならできなくはないが……適応化したやつは巨大化すると攻撃力とかが上がっているっぽいしなぁ……ただ巨大化させても結局ピュアバズーカで死ぬかもしれんし……あのロボの性能ちょっとおかしいなエデソンがアホみたいな調整をしてるんだと思う、どうやって今の領土に配慮を重ねてまであんな性能で作ってるんだか」


 そんなものは全く配慮していないとはつゆ知らず、限られたリソースで雑な調整で出撃させてるだけである。


「こちらもロボを作るか?」

「今から!?」

「流石にできる頃には終わってるのではないか?宇宙船に流用は効くのか?」

「使いづらいしな……戦闘艇のほうが小回りがきくし……人型の意味はないし……」

「とりあえず……作ってみるか?」

「地球に合わせたら流用は一切効きませんよ?そんな弱い兵器を宇宙の何処で使うんですか?」

「ただ固くできんか?」

「固くても破損はするから結局宇宙では使えん、地球では威力を抑えねばならんし終わった上で再度宇宙用に調整してもそんなもの……提督としては使用用途がないとだけ」

「帝国軍でも使えないな……」

「騎士団も同じく……そもそも弱く調整したところでピュアハーツが巨大化したら意味がないし強くしたら地球に大きなダメージが生まれる、そもそも巨大化したピュアハーツが地球にダメージを与える可能性があるのでは?」

「流石に住む星を破壊するだろうか?」

「この期に及んで継戦し続けた挙げ句爆発すると知ってて巨大化した敵を町中で撃破する相手が?」

「……」

「気が触れてるのではないか?逆の立場で抗戦を続けるか?降伏するにせよせめて無抵抗になるとか……この兵力と技術差で?だから講和を申し出て反故にして攻撃するようなことを平然とする。だから苛烈さに舵を切ったのではないか、帝国軍の将軍も三回前の戦闘で爆発に巻き込まれ2人戦死した。騎士団も団長角は数人負傷引退に追い込まれただろう。海兵隊は一部を解体して艦隊に戻している、正直この戦いには着いては来られんからな……いや、もちろんシタッパーの提督としての腕は最高だと思っているぞ?」

「ああ、ありがとうな、陸戦に関してダメなのは自覚している、強襲上陸する機会も地球防衛軍自体がほぼ消失した今では無意味だしな」

「結局巨大化したピュアハーツにどう対応するかだな」

「俺達が撃破されて巨大化するか、せずに死ぬか……巨大かできたらいける自信はあるが巨大化した時点で負けてるんだよな……」

「月面から砲撃するしかないだろうが……東京近辺が吹き飛ぶな」

「シタッパー?東京を失うと日本は獲得は損失だけを抱えることになるというのはあっているのか?」

「中心部はまずい、八王子のような場所ならいいと思う、郊外なら問題ない。会社などが固まっているからここが消失すると資産の莫大な損失と人的資源の損失に復興費用を含めて手が回らない、そうなるのなら最後の最後でしか許されない、計画的な虐殺よりもひどいことになるだろう。巨大化で爆発して町ごと消すより悲惨なことになるから正直したくない、あれはピュアハーツが馬鹿の一つ覚えに巨大化、爆殺とやってるから政府が悪いとなるが自分が死んでる中心街でやれば手のひらを返す」

「自分が巻き込まれなきゃわからんのか……それはまた優雅だな。政府しか叩く相手が見つからんのもそうだろうが……」


 八王子で亡くなった人たちが聞いたらあの世から殺しに来そうな暴言をいいつつシタッパーは山手線沿いの破壊に反対をした。

 喧々諤々と議論は進むものの巨大化したピュアハーツ対策は浮かばず。

 会議は数日続いたものの地球に被害を出さすに勝つ方法はついぞでてこなかった。現日本政府の領有地域自体を削り取るギリギリの攻撃を実行する、山手線沿線、内部の街は立て直し資産が莫大なため破壊を避けるしかないとの結論に達した。

 厭戦気分の東京はここに敵が来るまでにとっとと終わらせろ!と圧を強めていたがそれに対して打つ手はなかった。


 結果的に日本政府と地球防衛軍は都市部への攻撃に怪人がいた場合はどうするかを連絡を無視し続けた鉄壁泰造と話し合うことになり、バルサク宇宙帝国は巨大化した場合のピュアハーツ対策に意識をさかれることになる。

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