第55話

 朝になり、格納庫の一室で目を合わせた2人はきょとんとしていた。


「昨日はお楽しみでしたね」

「違うわ!」

「ちょっとしたおちゃめだよ、さて思い残すことはない?」

「あるに決まってるだろう」

「やめとく?」

「絶対に死ぬわけではないだろう、それくらいは……」

「あの子達だって絶対助かるわけではないんだけどね」

「それはわかってる、ハーツの寿命は……」

「それはわからないね、普通に使えば壊れないけどさ、最初っから壊れてて何度もダメージ与えてきたんだもん。もしもここに来なくても……逃げたよりも死んだかなって思うよ。残念だけどね」

「じゃあ来ることを祈っておこう」

「君は顔を見せないでね」

「嫌われてるからか?」

「テンション下がるとパフォーマンスに影響するかもしれない」


 知らないけどねと嘯くエデソンに鉄壁は鼻をフンと鳴らして変えにかけたスーツを手に取り、戻す。

 なんとなく無意味な気がした彼はキョロキョロと周りを見渡したが使えそうなものはなく腰を落とす。


「スーツ嫌いかい?」

「失敗したら死ぬなら身軽なほうが良いだろう」

「別に転移するだけならすっとやって終わりだよ、僕らはどこ行くかわからないけどね」

「絞れればな」

「そもそも皇帝陛下の力を吸収して壊れないかと言われるとね、5人は大丈夫だよ。あそこは壊れるがとっとと逃げ出してくれればそのためのリスク軽減策はあるし」

「まぁ聞いてもわからないから聞かないで置こう、理解できない理屈も原理もたくさんだ」

「僕らは精密性は捨てないと、頑丈さ一本勝負さ。だからスーツなんてたいしたことないよ」

「……」

「あと壊れたら寒いよ?冬だし」


 すっとスーツを手に取り着込む鉄壁を見てニヤニヤしてるエデソンはホッカイロいる?と尋ねる。

 ローテクすぎると思いながらも、暖房やら冷房やらそんな物を作ってロボの強度が下がっても困るし、ずれ込んで5人が死んでも困ると考えカイロを受け取った。


「おや、皆来たね」

「どこでわかる?」

「監視カメラ。ほら、早く!いったいった!」

「待てどこから乗るんだ!」

「そこの機械のボタン押して、転送されるから」

「これロボに乗せられなかったのか!?」

「壊れたらマリアナ海溝に破損したロボと登場するかもしれないけど良いの?」

「……じゃ、お先」

「はい、また後で」


 相棒を見送ったエデソンは時計型の転移装置を腕に巻き5人に相対しに行った。


「やぁ、調子は?」

「正直不安です」

「同じく」

「いややね」

「……怖いです」

「面倒~」

「命がかかっているのにその感じなのは安心だね」


 なんだか……。急に普通の女子高生らしさを見せるようになったね……?

 朝早いからかな?


「まぁいいや、はい乗って~」


 5人の引率を済ませたエデソンはひょいと操縦席に移動し鉄壁と顔を合わせた。


「なんかすっと終わった」

「そうか、では……」

「まず宇都宮の護衛を蹴散らすよ、そのまま京都へ。主力は大阪京都……のはず」

「勝てるのか?宇都宮は」

「勝てるよ、怪人なんて踏み潰すし巨大化しても放置する。お約束通りだと思い込んでるけど……お約束を破るのも帯番組の宿命だろ?」

「それは私に魔法少女になれと……?」

「出来るけどなる?」

「ならない」


 残念と笑いながら最終点検をしていくエデソン。5人は部屋で寒そうにしているのがモニターで見える。

 まぁ、すぐに終わるさ。


「システムオーググリーン」

「赤だぞ」

「言ってみたかっただけ、はいOK」

「確かに言ってはみたいな、潜水艦とかだというのかな?陸だから知らん」

「ロボット作ればよかったのに、戦車から変形するような」

「そんなトランスフォームするようなやつ可動部が壊れやすいだろう?むしろ得意なのはエデソン、君の……」

「……復唱、スーパーギャラクシーピュアロボ発進!」

「スーパーギャラクシーピュアロボ発進!」


 会話を無理やり押し切って出撃させるエデソンに半ば呆れながら鉄壁は復唱した。






「陛下、例のロボが出動したそうです」

「うむ、任せよう」


 かにしゃぶをする幹部たちにまじり報告をするシーザはちらりとナポレーンをみるが知らねといった感じで蟹の足をしゃぶしゃぶする。

 アッサーは騎士団関係ないしとカニ味噌に酒を入れてそれをしゃぶしゃぶにして食べている。

 シュタインは茹でた蟹がうまく剥けず、シタッパーに剥いてもらっている。

 蟹をうまく剥く装置を作ると宣言しつつエリザベートは器用に剥いた茹で蟹をシュタインの口に押し込んでしゃぶしゃぶ用の蟹をしゃぶしゃぶせず食べた。


「私ですか?」

「もはやなにもできまい。仮に大阪にレーザーでも搭載した攻撃をしたとしても弾き返せる、そうだなシュタイン」

「(コウクコク)」

「ほらシュタインもこういっておる、そもそも地球の機械では我々のバリアを貫通することなぞできん。ハーツの力を使ったとしてももはや出力はない、大阪周辺は余の力で制御しているからなにをしても弾き返してくれるわ」

「では……」

「シーザも蟹を食っておけ。指示自体はどうとでもなるだろう。むしろ被害が出れば出るほど連中の……」


『宇都宮防衛戦突破、一部怪人たちは戦死。巨大化せず』


「どうやら、皆様が出ないということは出るのは私ですね」

「独立遊軍司令として頑張ってくれ」


 蟹剥きマシーンとかしたシタッパーの言葉に参謀長として命令してやろうかなと思いながらシーザは出てきた大皿に乗ったかにしゃぶ用の蟹の足をまとめて掴んでしゃぶしゃぶした後一口で食べきり、ではいってきますと去っていった。


「シーザなら敵をしゃぶしゃぶしてくれるはずだ」

「怒りの有給消化強行で出るならあいつしか居ないからな」

「まぁ、なにかあったら我々も出るから平気だろう」

「俺は無理だぞ、ほぼ兵力なんて……」

「流石にこの時勢でバルサク帝国艦隊を動かす意味ないからな、地球ナイズされた艦隊でも作っておけ」

「威力の調整できれば宇宙からバカスカ撃って終わりなんだけどねぇ……」

「今まで剣を使ってたのに棒きれにしますと言われても困るだろう、仕方ない」

「そもそも怪人は今どこだ京都だったか?」

「さぁ?移動命令もありましたしね。ナポレーン?」

「京都で多少の揉め事があった、怪人たちが京都にいるが……まぁ問題あるまい」

「大多数は適応化してない人間も混じってるだろう?いいのか?」

「区別がつくのか?」

「余もつかん、だがそれでいい。正義の味方はせいぜい後手にでも回ればよいのだ。我々は悪を貫かせていただこう。正義の味方が滅ぶまでな」

「その後は?」

「正義の味方に転職だ」

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