第54話
「おひさ」
「2日くらいだろう?」
出張の名目で宇都宮に舞い戻った鉄壁に対してエデソンは友人を迎える地元の人間のように接した。
近くには帝国兵がなにやらよくわからない機械で人々を見て確かめている。
あれで指名手配犯を捉えるとか、そういうものか?
「平気さ、堂々としていたまえ。普通のサラリーマンのごとくね」
「バレんかね?」
「平気さ、あんなもの応用してしまえば楽勝だとも。そもそもあれの基礎は私が作ったものだ、シュタインのやることなぞわかってる」
「そうか……」
ふふんと得意げなエデソンに少しだけ安堵した鉄壁は内心ビクビクしながら帝国兵の前を通る
「な?」
「怖いものは怖い」
「君の怖いものって?」
「自衛隊の駐屯地で幹部をやっていたときだ、仕事が3時に終わって6時に出勤していた」
「……午後3時で午前6時出勤だよね?」
「午前3時退勤で午前6時出勤だ」
「…………戦時?」
「平時だが?」
そりゃストレスでギャンブルくらいするかと思ったエデソンはうちは戦時以外はしっかり休み取れてよかったなと思った。
「餃子食べてく?おすすめがあるよ?」
「急ぎだろう?」
「まさか、明日だよ?大阪からこっちまで来ていきなりとかパフォーマンスが下がるじゃないか」
「…………?」
「君部下にもこれやってないよね?」
「幹部候補は皆こんな感じだぞ?」
「…………」
「私は帰れたから良いほうだ」
「…………」
正直ドン引きしたエデソンは地球人て睡眠しなくて良い状態になれるんだっけ?と真面目に考え始めた。
鉄壁はやっぱバルサク宇宙帝国軍は人数が多いと仕事早いのかな?数が増えた分仕事が増えそうなものだがと見当違いのことを考えていた。
「ま、時間はあるよ。ご飯を食べよう」
「そうだな、酒は……」
「明日までに抜けるなら好きに飲めばいいさ」
「末期の酒だな」
「……ならないと良いね」
他愛もない会話をしながら街をうろつく2人。
会話が会話なので大声で話すわけにも行かず人通りが多い道だと自然と口数は少なくなる。
「それでどこだ?」
「ああ、ここだよ……並んでるね」
「いいさ、おすすめだからな」
「はしごしなくて良いのかい?」
「余裕があったらするよ」
「じゃあ次の店を考えておこう」
「……あの娘達は?」
「隠れ家でひっそりしてるさ」
「本来なら学校に戻っても良さそうなものなんだが……申し訳ないな……」
「なら学校にいかせてあげないとね、留年になるかもしれないけど」
「…………(政府の)手回しってどうなる?」
「(日本国政府は)潰れたから無理じゃないかな」
「…………イヤだろうなぁ」
「イヤだろうねぇ……」
行列が減って進むにつれ、店内が見えてくると写真の数々を眺めていた鉄壁は芸能人じゃないんだなと思いながら写真列を見る目を動かしていく。
覚えがあるな、うん、ないな。ああこれ大食い動画の人だな……。
ああ、これ…………これ!
「あれは何だ?」
「あれは賞金獲得女王の5人だよ」
「違う違う、そうじゃ、そうじゃない!」
「サングラスほしいの?」
「違う違う」
「僕を愛してもらってもなぁ、友情なら歓迎だけど」
「なんで日本の楽曲に詳しいんだ」
「暇なときはネット見るしかないし……」
「頭が良い学者でもやることは同じなのか……」
「だってねぇ、こっちの未解決問題とかつまんないし、そのうち解決するよ。本格的に皆が暇になったら誰かググって問題見つけた後帝国の時点でも開いてあったで終わるだろう、地球の数学論に当てはまえるだけだろう?君だってエクセルに入力する仕事暇だからってやらないだろう?」
「思い出させないでくれ……暇じゃないのに数学は……うぅ……」
「ああ、ごめんね」
鉄壁の過去のトラウマに触れたのかエデソンは会話を打ち切った
「いや、そうじゃない。違う、シングルジャケットのポーズをするな。わかって誤魔化そうとしてるだろう!」
「わかった?いや、だってさぁ……」
カベの写真の途中からほぼ5人の完食と賞金ゲットおめでとうで埋められている店内。
銀行の預金を下ろすかの如く使われていたこの店には同情しかない。
「貸金庫からお金抜かれてる気分を味わえるよ」
「その例えはあってるのか?」
「まぁ、預けてないのに持ってくからそれよりなお悪いか」
「…………たしかにそうだが……賞金だろう?」
「毎回来るのおかしいだろう、見てよあれ同日だぜ?途中から撮ってないっぽい」
「ああ、本当だ……先月くらいか」
「お金渡すまでこれで資金繰りしてたのかぁ……相当危ないよねぇ……空腹でカロリー補給しないと死んでしまうんだなぁ」
「ほら、最初は同日に数枚撮って……」
「どうかしたか?」
「まぁ、いいか……大食い賞金チャレンジする?」
「しない、そんなに食えんわ」
「元自衛隊員だろ?いけるって」
「年だから……」
「…………でも僕だって君より年上だぜ?」
「体がついて行ってないんだ……年を取るとな、ロースがメインになってカルビは食べられなくなるんだ……ホルモンを隅っこで丁寧に焼いてああ、これ追加で食べるのは流石に無理だなと察しながらデザートを注文するんだ」
「地球人って不便だね」
話をごまかすことに成功したエデソンは5人でいい笑顔で写る皇帝と幹部たちの写真に気が付き頭を抱えたくなったがそれをしては聞かれるので平然とすることにした。
友人ときましたと言わんばかりの笑顔の写真と比較してみると2人はとても暗かった。
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