第16話
「ピュアバズーカってなんだよ……」
シュタイン博士の返答を求めぬつぶやきが研究室に響く。休暇の名目で休んでる2幹部は対ピュアバズーカに関して休暇明けには終わってると思ってるはずだ。
終わるわけ無いだろ!遠目から見てこれはなんですかと聞かれてわかるか!お前らだって負けた連絡だけ聞いてどういう作戦で負けたかなんてわかるのか!
数日寝ていないが全くわからない、やはり寝たほうがいいかもしれない
「すっごーい!これがボルシチなんですね~」
自分たちがやらせてるとはいえ元老議員が笑顔でボルシチを食べてる姿にイラッとする。ちょっと食べてみたいな、誰かに取りに行かせるか……。
「シュタイン、ちょっといいか?」
「ボルシチ取ってきて」
「…………わかった」
ベストなタイミングだ。ボルシチを食べることでなにか思いつくかもしれない。数日前はフライドチキンを食べて新型拡散型レーザーを思いついたんだ、使い道はないが。
そういえばあれもこいつがレビューしてたな。うまいもん食ってレポートするだけでいいなんてなんて羨ましい。私もあの仕事をしたくなってきた。
明日はイタリア料理をやるとか言ってたな。もうこの放送に出て疲弊した幹部はリフレッシュするべきではないのか?ナポレーンとアッサーを水着にしてかき氷でも食わせとこう、案で送っておくぞ。
こうして毎日食い倒れ旅をしてたら日本側が降伏したりしないか?
しないか……。食糧事情はそう悪くもないみたいだしな、むしろ悪くしないように輸入に関しては見逃してるくらいだし。
こいつら適正価格で貿易してた相手見捨てて降伏しようとしてたんだよなぁ……講和したところでなんとかなるのか?降伏後本当に大丈夫か?
ま、シーザがなんとかするだろ。私の仕事じゃない。
「シュタイン、ボルシチだ」
「おっ、ありが……陛下?」
「……知らずに余に使いにいかせたのか?」
「……はい」
「まぁ、らしくていいわ」
とてつもなく気まずい思いをしながらもシュタインの目はボルシチに釘付けだった。
プロパガンダ放送に踊らされているのは彼女もそうだと言える。今日は幹部だから料理紹介じゃないなと回線を切るくらいなのでさもありなん。
「(ズー)」
「……」
「ところで陛下はなぜここに(ズルズル)」
「幹部陣がボロボロだからな、シュタインはどうかと思ったわけだが」
「ボロボロですね(ムシャムシャ)」
「食うか喋るかどっちかでいいぞ」
「(ズー)」
だろうなと皇帝は思うものの、この感じでいるシュタインに少し安心感を覚えててもいる。幹部2人が休暇離脱、1人も疲労困憊、1人も地球側と打ち合わせで激務。
最終決裁をしつつもこうも全員が揃わないのも久々なので少し寂しさもあった。
「トマトベースですか、真っ赤でしたね。いやー美味しかった!あの放送で地球のうまいものを食べようの部分だけは残しましょう」
「そこの放送内容は現地にもう投げていいのではないか?」
「でもつまんなかったら困るじゃないですか」
「そういうものか……余はよくわからん」
「フライドチキンとか美味しかったですよ」
「じゃあ夕飯はそれにしてみるか……元気そうで良かった」
本当に様子を見に来ただけの皇帝はそう言って立ち去ろうとした。
が、何かを思い出したようにシュタインに言った。
「ああ、それトマト入ってないやつだぞ」
「えっ?ボルシチにトマトが入ってないんですか?赤いですよ」
「レッドビーツで赤いそうだ、少なくともそのボルシチにトマトは入っておらん、古典的なものらしいからな」
「へー……トマト入ってると思ってました」
ないものをあると錯覚してしまうなんて恥ずかしい間違いだなぁとシュタインは思っているが皇帝にボルシチを取りに行かせるほうがよほど問題だろう。
立ち去る皇帝に最低限の、シュタインとしては最上級の礼を尽くしてまた頭を悩ませる。
「トマト入ったボルシチも食べたいな……赤い色変わるのかな」
変なふうに科学者魂をこじらせたシュタインは今日の晩飯どうしようなどとボルシチを食べる前の考えはどうしたと言わんばかりのセリフを吐き出す。
トマトが入ってら色合いはどうなるのか、レッドビーツとどうなるか。
ボルシチ怪人とか作ってレッドハーツ入れたらレッドビーツにならないかな?ともう寝る前の悪夢のようなことを考え始める始末。
「レッドビーツを先に知ってる状態でトマトが入ってるものを食べたらどんな感想になったんだろう?どっちの色合いかわかったのかな?他の物の色だって気が付かなかったら……」
その時、単なる思いつきだったが確信に至ることをシュタインは思いついた。
「ピュアハーツの力自体が本人由来じゃない可能性もあるんじゃないか?エデソンが与えたんじゃなくてもっと根本的な……いまだに量産ができない……そう考えると……いや、まてまて……そもそも全員同一人物か?」
ボルシチの赤色はトマト由来ではなくレッドビーツだったように。
ピュアハーツの能力はエデソンや本人由来ではなく別のものではないか?
もしも今まで出てきたピュアハーツが全員同一人物なら?罠や交代制ではなく本当にたった5人である可能性をちゃんと考えたか?確定させろ!
同一人物だと!
食べたボルシチにトマトが入ってなかったように。
ピュアハーツには強い何かが宿っていなかったのではないか?
「あのピュアバズーカ、なにか見覚えがないか?」
最近、もう少し前。一応見直してみよう……見てもわからんとまじまじと見た記憶もよく考えたらなかった。幹部の集まりで軽く見ただけだ。
確か、この辺に映像記録があったはず……あった!
「「「「「ピュアバズーカ!」」」」」
思い出せ、エデソンがなんかやってたときか?眼中にもなかったからあまり思い出せない。
「「「「「ピュアバズーカッ!」」」」」
戦艦の主砲?そんな訳ない、それならもっと死んでるしシタッパーですら無傷なワケがない。それにあれはもっと……。
声も同じだ、多少変えてはいるが元は同じもの発音発生も対して変わらん!
同一人物だ!
「「「「「ピュアバズーカ!」」」」」
そうだ、これは間違いない!威力こそ大分低く見た目も地味だが……!
開戦の狼煙で上げた皇帝陛下の……!
「
「クシュン」
「陛下?どうしましたか」
「いや、なんか名前がないパンチに派手な必殺技名を付けられたような寒気がした」
「はぁ?」
「それよりシーザ議長、地球統治関連は?」
「陛下のファンクラブ結成の要望があります」
「殺し合いしてる自覚あるのか?」
「もう統治下ですし、日本からもありますけど」
「却下だ!」
こっちは真面目に戦争をしてるのに日本は片手間か?戦争をエンタメと勘違いしてるんじゃないか?エンタメ感覚で講話蹴って戦争をするんじゃない!
そういえばあの戦隊モノの中には敵女幹部のスピンオフがあるんだったな。
もう少し真面目に殺し合わんか?
そうなったらもう、最悪の場合はあやつら3人にセクシーな格好をさせて降伏を促そう。
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