第63話
元老院は紛糾していた。
なぜ陛下が一撃で仕留められなかったのかと、エデソンはそのような脅威のテクノロジーを持っていたのかと。
「シーザ議長がでてもか」
「これは、なんだ?」
「なにもクソもあるまい、我々は勝ちつつある。だが勝てないのだ」
『あーテステス……』
唐突に議会中継に映されたのはちょっと形容してはいけない顔に近いシュタインだった。
『端的にいうけど、敵は陛下の力をうまく利用してなにかの力を更に上乗せしてる、これを打ち倒すには威力を上げるしかないんだけどそれをやると地球が危ない、つまりこの戦争をした意味すら無くなる。騒ぐな!こっちもいっぱいいっぱいでね……。陛下の勝利を祈ってくれ、業腹だが……エデソンがやれたということはおそらくあの馬鹿げた研究だろう。ここに至っては信じるしかない、君たちも陛下の髪の毛食べただろう?もしかしたら意志の統一とまではいかないけど少しぐらいは助けになるんんじゃないかと思う、むしろ助けろ!陛下の力僕達5人で制御するのいっぱいいっぱいだよ。あー気絶しそう……。マジで早く祈って……』
通信を切るとちょっとではなくだいぶ形容してはいけない顔に戻ったシュタインはゼーゼー言いながらエリザベートの力の制御を手伝う。
元老院はバルサク宇宙帝国内、宇宙艦隊だけに皇帝陛下の勝利を祈るように通達を出した。
「全く押せなくなった!」
「なんの!もう一押し!」
「この程度、屁でもないわ!」
「必ず押し切る!押しつぶす!」
「負けないわ、よ?」
5人の力がついに押され始めるとエデソンは終わりを悟った。
「皇帝陛下たちはあの攻撃で押しつぶすつもりだね」
「それはわかるが……」
「こちらも距離を詰めて!」
「「「「「はい!」」」」」
「私が本当に防衛のトップだったかたまに自信がなくなるよ、いや……ずっと自信がないな」
「軍と女子高生が同じなわけ無いだろう?」
「自衛隊は軍ではなく実力組織で……」
「地球防衛軍はさすがに軍だろう?そうだ!スーパーギャラクシーピュアロボで直接押すんだ!」
「いや、一応改正したわけではないから新地球防衛軍も地球防衛軍も実力組織なんだが……」
「知りたくなかったね」
「押せてる!」
「いけ!いけぇ!」
まぁ、どれだけ持つか。
「鉄壁くん」
ちらりと扉の右端の下に目線をおくる。
彼は理解してくれたようだった。
さ、もう一息……。
やらないとね!
「なんだか押せているのに押せてないような……?」
「出力を上げますか?」
「いや、押し切れるとは思うが……?シーザの眼にはどう見える?」
「押せてるはずなんですがね、ロボごと押してきましたね、光線ってああいうふうに押すものなんですね」
なんでお前ら話す余裕があるんだよ!
見ろよ、シュタインなんて……ちょっと女性が見せられん顔してる!
「僕は……僕の仕事したよ……」
「ああ、わかるよ」
「ナポレーン、アッサー!」
「水流を網目が少しあるようなボウルで押すような違和感があります……」
「正直出力を上げても……」
その時、元老院から皇帝陛下を応援する通達が行き渡り、皇帝の髪の毛を接種した人間からの応援がエリザベートを押した。
「なんか、出力上げてないのに急に押せとらんか?」
「相手が弱った、というわけではありませんね」
「なんか余の力に変なもんがついとらんか?」
「それが……やつらの……此度の……ピュアバズーカの……アレです」
「秘密か?」
「……」
頷きで返すシュタインを見て、コイツ女がする顔じゃないなと思うエリザベートは流石に言い出せずに話を続ける。
「それでその正体は?」
「意志の……力です」
「夢見てんじゃねーぞ」
「シーザ!やめんか!ガラが悪くなるな!」
と言いつつエリザベートも何いってんだコイツという目線を向ける。
シュタインは泣いていい。
「やつの研究、意思の統合ウエェッ……それが、陛下の力と……地球の連中の……
「ということはどういうことだ?」
「陛下一人で敵の数十億の意志を支えていたということか?よし、シーザ!中継を切れ」
「さっきから放送が切れないんですよね、応援一色で腹が立つから通信遮断してやろうかと思ったんですけど」
「アレを映してるのは、連中の……意思……だから5人しか基本映らない……」
負担が軽くなるにつれなんとか見せられる顔になってきたシュタインに安心したエリザベートは攻撃の調整がしやすくなっていることに気がついた。
「範囲が狭い、あのピュアバズーカを押してる姿さえ映れば……意志の力は応援の力は止まない」
「まさか、ショーでよくあるヒーローの応援をすると強くなる理論がマジだとはな」
「理論的じゃないけど、理論的に起きてるからしょうがないねぇ……」
「結局なぜ急に押せるのだ?やつらの応援が減ったのか」
「ではないみたいですね……。SNSでは応援一色ですし」
「元老院に、陛下の応援をするよう……電磁通話を……」
だから死にそうな顔してたんだなと皆は納得してるが本当に辛かっただけである。
「ん?じゃあ余も使えたのか?なんで今まで応援してくれなかったんだ?アレ?余はもしかして……」
「それこそ羽虫を潰すのを応援されたら煽られてると思いませんか?」
「…………ああ、そういうことか。いや今までも結構ピンチなかったか!?あったよな!余は応援されとらんかったんか!?」
「髪の毛です……。陛下の髪の毛を接種したことにより意思の統合が、もしくはそれによる相乗が起き得たのです。向こうの効果にタダ乗りすることにはなりましたが……勝ってくれという単純な意思はタダ乗り程度でも作用しました」
「お前、ちゃんと科学者してたな」
「シーザ!シュタインはいつでもバルサク宇宙帝国の頭脳だ」
「そうでしたね。ええ、我々の頭脳です」
憑き物が落ちたようにシーザはシュタインを見て微笑んだ。
それから目をそらすようにシュタインは呟く。
「エデソンの理論にのるのは業腹だけどね」
「勝てばよかろう!勝てばよかろうなのだ!」
「負けるフラグやめろよ(ボソッ)」
「なんだ?」
「……なんでもないよ」
エリザベートは片手で撃っていた攻撃を両手に変え、軽く押し出すだけだと伝える。
「今なら容易だ、あのロボを消し飛ばした瞬間攻撃を消すことすら容易い。世界一細いピンセットで世界一小さいボトルシップを作るような難易度が世界一細いピンセットで大きなボトルシップを作る程度になったぞ!民の声が私に勝利を与えた!為政者として誇らしいわ!潰えよ!」
ぐっと押し出す姿勢を取った後、スーパーギャラクシーピュアロボは押され、光に飲まれていった。
飲まれて光が消えた後、その場にロボの残骸はなかった。
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