第42話

「餃子の店多すぎないか?」

「そりゃそれで有名ですからね。ほら見てください、シュタインが喜んでパクパク食べてますよ」

「私も美味しく食べているがね」

「騎士団の糧食にでもしようか?これシタッパーが昔に作り始めた餃子よりうまいな」

「俺本職軍人だし…」


前世以来のまともな餃子である。

俺が持ち込んだレシピで作り続けたとしても微妙に材料は異なるのでなんか違うみたいな料理人手製餃子にこれでサヨナラできる。

休みの日はラーメン食いに行くけど高いよな?こっちの通貨の問題でけっこう大変だしシーザは通貨調整とかで忙しそうだ。

まぁ、シーザにお土産買っていかないとまた怒るかもしれんから買うんだけど。


「こうも一般人が多い中での食事も楽しいな、なんか建国前を思い出すな」

「混んでるから早く食べてください陛下」

「ベッツィな?わかったかレーン」

「早く食べてくださいベッツィ。そもそも変装自体は完璧だから別に名前変えなくっていいのでは?シタッパーなんてそのままですし」

「何処とっても日本だと変なあだ名になるみたいだからな、むしろそのままのほうがよほどあだ名っぽい」

「そうですよ、まぁ今更別の名前で呼ばれてもね」


前世の名前忘れたしな、何百年前だと……あれ?何千だっけ?

もう時間感覚もダメだな。


「あとシタッパーは、その……なんだその皿の数は?」

「これが酢コショウで、こっちがラー油と醤油と酢でこれが岩塩、ポン酢。この店は調味料がいっぱいあるから」

「おおいな!お前この前焼肉屋で会議したいとか言ってたときも色々タレ作ってたろ。編成と指揮に無駄がないのになんでこうも無駄に作るんだ」

「試せ、試せばわかる、店によってどれが合うか違うのだ」


久々にゆっくり食事できるんだぜ?そりゃ楽しむよ。

ここは今のところ岩塩が一番合うな、野菜多めか、次は野菜のみの餃子にして……。


「というか宇宙の果にお前の作ったものと同じものがあることに驚いているが」

「そりゃ発想的には野菜とか肉とか包んで焼くだけですし」

「そう言われればそうか……」

「シタッパー!この酢コショウはいいな!褒めて遣わす」

「ははーっ」


陛下もごきげんだな、最近はあまり見ない顔だ。

まぁ、あの時から残ってるのはもう少ないからな、隠居に戦死に寿命……とうとうカイゼル爺さんまで戦死しちまった。

この国は、いやこの世界?いやあの宇宙?とにかく人の命が軽く消える。

最も悲しみはするんだが日常茶飯事ですぐに切り替えて行くのには順応するのに時間がかかった。

未だにこいつらの中では死を比較的長く引きずる感受性の強くて優しいみたいなイメージらしいが、流石に戦争続きに死亡続きでなれた。

最も部下にもそういうイメージがついてるあたり、それでもなおそういう風に見られるのかもしれないし、態度に出るのかも知れない。


「私もやってみよう」

「おいおい、これは研究分野だぞ?私の計算ではラー油は3で酢は1、ここの特製ダレ6が一番うまいな」

「味覚は人それぞれだろう」

「踏む、たしかに……落ち着いたら自分の味覚の研究でもしようか」

「分子ガストロノミーで料理でも作ればいいんじゃないか?」

「なんだそれは?」

「調理を物理化学的に解析した学問」

「昔から思ってたけど君変なことばかり知ってるね?この星のこと、そんなに気に入ったの?」

「飯がうまい」

「……確かに」


よし、ごまかせたな。


「こうして食べ歩きしてるとあれだな、我々が本来求めたのはこんな生活だったんだな」

「こんな生活を送るために建国してこんな生活送れなくなるのって本末転倒だったんじゃないか」

「いうな、陛下よりはマシだ」

「ベッツィな?」

「こだわります?そこ?」

「でもようやく落ち着けますよ、仕事して休みは食い倒れに遊園地に何をしようか」

「遊園地?」

「子供向けの施設に興味があったのかレーン?」

「いや、一般的にも人気ですよ、この国どころかこの星でグッズ展開も多様で特にこのかや等なんて癒やされるじゃないですか、宇都宮Verとかあるんですよ?これはもう全国行脚して買い集めないといけないですね、通貨統一と両替ってどうなってるんですか?自分で買いに行けないなら軍に派遣地で買ってくるように命令しないといけないんですけど」


これこの面子でナポレーンにしか刺さってないのか。

アッサーとか好きそうなのにな。


「水餃子うまいな」


騎士が水餃子食べてるだけで面白いでやんの。

もしかしてこの国って宇宙的規模で英国料理的な水準だったのか?

やたらと食の方に夢中だし。

普段こだわって食べてないのかな?


「あと75店舗で表はコンプリートだな」

「私達ってこの惑星の中では大食いに入るみたいですね」

「宇宙は広いからな、宇宙が胃袋と思われてるかも知れない」

「すみません、持ち帰りでで各餃子1、いや2人前づつ、シュタイン。温度維持」

「任せ給え」

「はい、全部2人前ね、包むよ」

「「「「ごちそうさまでした」」」」


これで軽食を取ることを入れて10件目くらいの店をまわり、コンビニでアイスを食べながら次の店をどうするかを話し合った。

平和だな、なんで俺達宇都宮に来たんだっけ……?

次は北海道で海の幸食い倒れツアーをやろうか。


「おい、5人の女の子が餃子食べ切れたら10万円の企画で3回チャレンジして3回完食したらしいぜ!4回目のチャレンジに入るらしい!」

「正気か?5人がかりならまぁいけるかも知れないが」

「5人全員それぞれ挑戦してるんだよ、それで30万だってよ!」

「テレビ取材か?大食い選手権的な?」

「バルサクの人じゃね?」

「いや、学生証出してたから多分違うんじゃないか?」

「偽装かも知れないし」


お題で一言で貼られるぽっちゃり女子みたいな子かな?

大食いの人だって3連続チャレンジで勝たないだろ、それに一人1日1回とかじゃない?


「聞いたか諸君」

「ええ、大層食べる方がいるみたいですね」

「違う、10万だぞ?こっちの通貨は余裕がほしい、我々も10万円を取りに行こう!」

「たしかに、10回挑戦して勝利すれば東京で遊べますね」

「いま東京で遊んでたらシーザに怒鳴り込まれるぞ?」

「大阪で遊べますね」

「遊びはするのか……一応仕事だろう?」

「大阪みたいな大都市に地球防衛軍協力者がいてもおかしくない、まず道頓堀の飲食店調査を皇帝として提案する。そのために必要な金額を稼ぐのが理にかなっている。さぁ行こう諸君!小銭稼ぎだ!5人の女性がなにするものぞ、こちらには男がいるんだぞ!」

「男が勝ったからと言って増額されるわけではないと思いますけど」

「そうなのか?まぁそのおなごに店を潰される前に我々もお金をいただきに行こう」


強盗じゃあるまいし、まぁ胃袋の差で文句は言わないでくれ。

一応身分証も偽装してあるしな。建前として大食い女子がバルサクのサボり兵かもしれないから調査とかシーザに言っておけばいいだろう。






「強盗だ!ガソリンを出しな!」

「はい!」

「スチールウォール!こっちは僕に任せ給え!通報されたら撃て!」

「わかったぞエディ!動くんじゃねぇぞ!」

「よし、終わった!行くぞ」

「よし伏せておけよ!あばよ!」


わずか数分で強盗はガソリンタンクの中身を奪い去り、店員は何しに来たのかわかわからぬ強盗を眺めながら警察に通報するのであった。


「とにかくコンビナートを奪取する、後はとっとと逃げよう」

「そのためにガソリンを使うのか?」

「ロボに使いたかったが仕方ない、投資だよ、足りなければ千葉だ。改造車だからシートベルトちゃんとしてくれよ?短距離ワープで現れて移動とか専門の僕でもコツがあって結構難しいんだ」

「こう、ぱっと行けないのか?」

「もともと宇宙船の技術だよ?宇宙規模なんだよ?何光年のワープを周辺に影響なく数キロとかどれだけスケール落とすのが大変だと思ってるのさ!ジェット機で山手線一駅移動してるのより難しいんだからね!集中するから話しかけないで!」

「ちなみに失敗したら?」

「興味深いけど……したいの?」

「いや、わかった。黙ってる」


数十分後にテロリストになる2人は敵も味方も餃子屋で金を稼いでるとは思わず、未来への投資をする為頑張っていた。

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