第58話

「思ったより威力が出たね」

「おい!」

「……まぁいいや!既定路線だよ!これで大暴れすれば皇帝陛下もでてこざるを得ないよ!さぁ!攻撃開始!下京を焼き払うよ~」

「京都の人間もどこぞの家のいけず石一つでこうなるとは思ってないだろうさ」

「入った店のラーメンがまずいから滋賀にするかとどっちが良いのさ」

「今どき反社だってもう少しまともな理由をつけるぞ!お前が外れを引いただけだ!」

「国営組織だってやってることは反社みたいなものだろう!」

「暴論すぎるわ!お前たちの国に税金がないだけだろうが!国家として潤ってるとこはそういう国もあるわ!」

「目指せばよかったのに」

「資源がないんだよ!」

「作ればよかったのに」

「お前たちの技術力と一緒にするな!」

「僕らと手を結んで発展させればよかったのに」

「…………」


 はい、僕の勝ちと内心で思うエデソンをよそに遠方からの攻撃が飛来する。


「おっと帝国軍か、効かないねぇ!」

「おいエデソン!怪人が足元にまとわりついてるぞ!」

「踏み潰……流石に危ないか!バリアを張って弾き飛ばすよ!そーれ!ポチっとな!」

「もしかしてドッキリでビックリな物も出てくるのか?」

「時間がないからやってないよ!」


 弾き飛ばされた怪人たちは一部は巨大化しつつ爆散した。

 その中でいくつかは消えて何処かで爆発してしまい強制転移自動化切れって言っただろと指揮所で激怒していたが彼らには関係ない。


「うーん、汚ねぇ花火だ!」

「言いたかっただけだろう!」

「人生で悪役やる機会は少ないんだ、やったら捕まるからね」

「捕まるどころか一歩間違えたら死ぬわ!」

「ここにいる時点で道は間違えてるからヘーキヘーキ!」

「また来たぞ!怪人共だ!」

「はい、バーリア!」




「全く持たないわね……」


 消し飛ばされた怪人を見てため息を付くシーザ。

 怪人としての手持ちはもう尽きた。まさかの一網打尽にされた。

 初撃で壊滅したのは痛い、奈良方面と神戸方面軍も直ちに投入したが結果はこのざま。あるいは前の戦いであれば怪人の巨大化前であっても薄い装甲部分を破壊して戦えたであろうが今では遅い。


「バリアが強烈です!」

「何だあの力は?」

「遠距離攻撃に徹しましょうか?」

「そうだな、将軍たちは?」

「そろっております!」

「適応化を受けたのは?」

「10人ほどです」

「……まぁいい、突撃よ!」




「弾き飛ばせない!あ、グリスト将軍だ!敵の駆逐艦を拳一つで仕留めた化け物じゃないか!将軍を兵卒で使うとか人材豊富すぎて嫌になるね!浮上して振り落とすよ!」

「化け物すぎるわ!うわー!脚部に穴が空いたってでてるぞ!」

「将軍ごときで止まってらんないんだよ!どうせ次なんてない琵琶湖に足突っ込んで窒息させてやる!浮上!」

「本当にどっちが悪役なんだからわからんな」

「負けたほうが悪役だからこっちが悪役であってるよ!」

「浸水してるぞ!」

「飛べば良いんだよ!片足がなんだ!」

「おい、なんか世界中継されてるぞ!」

「知らないよぉ!それどころじゃないよぉ!おら離せ!若造が!こっちは頭脳担当だぞ!オラ!オラ!」


 おおよそ頭脳担当とは思えなぬ発言をしながら高速で琵琶湖に足をツッコミじゃぶじゃぶと将軍を振り払おうとしている。

 真空でも戦える将軍を……。


「ええいクソ!」


 スーパーギャラクシーピュアロボの足が避難された無人の遊覧船にあたり、宇宙船の合金と遊覧船にサンドイッチされた流石に将軍は絶命した。


「次だ次!」

「お前本当に幹部じゃなかったのか?」

「僕程度でなれるわけ無いだろ!生身で戦ってないのがその証拠!僕はシュタインより強くないし、業腹だが頭も劣っていたようだね!腹ただしいよ!」


 なんで戦争なんてしたんだろうなぁ……ともはや他人事のように考えた鉄壁は将軍たちに向かってレーザーを射出したり、バリアで弾き飛ばそうとして失敗したり試行錯誤をしていた。


「焼き払え!この質量では将軍でも食らうだろうさ!」

「……?なぁ、威力上がってないか?さっき喰らわなかったやつが弾き飛ばされたんだが」

「気のせいだろ、5人の力は落ちてるんだし、増幅装置が怪人のエネルギーでも吸って働いたのかな?将軍たちが疲労してただけだと思うよ」

「そうか?まぁそう思いたいのかもな」

「想いの力は強くなるっていうしね、かかってこい脳筋将軍どもめ!学者舐めんなよ!」




「なんで放映してるんだ!」


 唐突な世界放映に激怒したシーザは便宜上の部下を問い詰めるが要領を得た回答はなかった。

 将軍の散るさまを見て自らの遊撃部隊の抽出を諦めイライラしていたシーザを見た確証はなにもないが分析官の一人が答えた。


「島住民の強制転移でわかりやすく説明するためのものかと」

「横着しやがって……。いや、それでもいいか、あの様を見れば地球防衛軍がいかに愚かかが伝わろう」

「SNSでは敵のロボの応援一色です」

「……なぜ?」

「街で戦ってるようには見えないからでは?」

「あいつらこれ特撮だと思ってるのか!?」

「あー……海外ではそうみたいですが」

「……他人事だもんな」

「でも旧日本でも我々に対する応援の声がありますよ!京都ムカつくんだよね~って声が」

「他人が不幸なのは喜んでるだけで応援ではないわ!敵が応援されてたら今後の統治戦略に関わるじゃないか!なに手のひら返してるんだ!昨日までボロクソだったじゃないか!」

「10敗しても1勝したらさすが!ってなるからですかね?」

「そんなDV彼氏理論で応援するな!」

「負けてるスポーツチームみたいなものでは?」

「侵略した我々がいえた義理ではないですしね」

「それをしれっと言う側に回るのがメディア戦略だろうが!残党左京軍は砲撃しろ!将軍の部隊を支援しろ!」

「エッヘナハトマル将軍戦死!」

「敵ロボ、以前健在」

「あーダメだ、もういい!私が出る!その旨陛下達に伝えよ!武器庫の0番を開けてもってこい!」


 手から電磁波を出して内部から機械を破壊するという馬鹿げた攻撃ができるエッヘナハトマル将軍の戦死とスーパーギャラクシーピュアロボの健在な姿を見て戦術で戦うことを捨てたシーザは自らが出陣することを決めた。




「は、シーザ自らが出る?」

「はい、そのように」


 優雅に蟹しゃぶを食べていた帝国幹部はありえない報告を聞いて驚いていた。


「戦場で遊撃部隊の指揮を取るのか?」

「いえ、自らが戦うと武器庫を開けるように」

「は?メリケンサック出して戦いにいったっていうのか?」

「待て!遊撃軍ではないんだな?そうなんだな?」

「はい、遊撃軍の抽出をしていましたが諦めました」

「あいつを戦場に出したら地球が壊れる!遊撃の指揮を取るのはともかくあんなやつ直接戦わせられるか!」

「エリ……陛下!」

「余らも出るしかないな……止められるのをもう我らしかおらん」

「気が重い」

「じゃあ出来ることはないから留守番で……」

「シュタイン、お前も出よ」


 こうして本来の意図とは全く違う方法で皇帝のご出馬となったことをエデソンたちは知らない。

 そーっと逃げようとしたシタッパーは死なば諸共とシュタインに抱きつかれたところで皇帝に見つかり側勤めを命じられた。


 シタッパーは一番危険なとこじゃないか!船のない俺が役に立つか!俺はピュアハーツに一敗してるんだぞ!と言い返そうとしたところでエリザベートが本気で苛ついてる姿を見て諦めた。

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