第3話 冒険者生活、始動。
店主のおばちゃんの言う通り、道をそのまま辿っていけばそれっぽい大きな建物を見つけることが出来た。
建物の入口が大きく開かれており、縦幅は3メートル程もありそうだ。おそらく色々な種族や武器を持った人が通れるように広く作られたのだろう。
中に入ると受け付けの人や依頼と思わしき紙が貼られた掲示板、テーブルを囲み酒を飲んでいる男たちや真剣な表情で話し合っている人たちなど、多くの人が居た。
こいつら全員、冒険者ってやつなのか。すげぇ! でっかい剣や斧、クソ強そうな大盾に革の鎧! 中には太ももに短剣を括り付けている女の子も居る。いやめっちゃ可愛いななんだあれ。
見ているだけで楽しいが、俺もさっさと手に職を付けねば。野宿もしたことなければ、まともに働いたこともない学生が宿もなしだとすぐ死ぬ気がする。
「……! こちらへどうぞ!」
受け付けの女の人がこっちを見て呼びかけている。もしかして呼ばれているのかこれは。
違ったら違ったで恥ずかしいが、行くしかあるまい!
「あの……お兄さんは多分、冒険者登録に来た人ですよね!」
「あ、はい! そんなわかります?」
やはりわかる人にはわかるのか。この俺のお上りさん全開オーラが。
「良かったあ……! 違ったらどうしようかと思いましたぁ! こほん、ではようこそ! 冒険者ギルドレクサス支部へ! 基本的な冒険者さんのお仕事はもちろんのこと、このレクサス支部では塔の探索も含まれています!」
「塔の探索ですか?」
にっこりと受け付け嬢が微笑む。なんか、妙に態度が良いな……? 異世界の俺の顔面はそれ程までにイケメンということなのか。内心ガッツポーズを隠せない。
「はい! レクサスの探索で得られる資源は多岐にわたります! 運がいい冒険者さんは凄い効果がある発掘品も手に入れたりしているんですよ!」
「それは凄いですね……!」
多分発掘品とはアーティファクトとかユニークアイテムとかそんな感じの不思議アイテムの事だろう。ラノベを読み漁っている俺に死角はない。
「早速冒険者登録を行いたいと思います。ギルドカードを発行することになるんですが……ギフトも表示されちゃうので、そこは許してくださいね! では名前をお願いします」
「……ウェイズって言います!」
なんも考えてなかったが、前の名前は大空大樹だったので樹からwoodsをなまらせてウェイズとしておく。かっこいいだろう。
ギフト、ギフトねぇ。多分神からの恩恵的な、ユニークスキルに該当するものだと思うが……後でおばちゃんに聞きに行こうかな。
「ではこの、よいしょっと……水晶に手をかざしてください。あなたの生命の波長をギルドカードに印刷するだけですから、全然大丈夫ですよ〜!」
「はい!」
言われた通りに用意された水晶に手をかざす。
特になにもおこらない……?
受け付け嬢は水晶の下にギルドカードを滑らせると、俺に渡してきた。かっこいい。
「こちらがあなたのギルドカードとなります。当ギルドで発行したことがわかるよう、特別な印が付いてたりするんですよ〜! では少し拝見して……ふむふむ」
渡されたギルドカードを見る。見知らぬ文字が書かれているが……読めるぞ?
・名前:ウェイズ
・年齢:14
・ランク:1
・功績値:0
・ギフト:[直感]
・スキル:
これが俺のギルドカードというやつか。
勝手にニマニマしそうになる顔の筋肉を必死に抑える。何か新しいものを手に入れる時はやはり面白いもんだな。
というか14歳なのか。
「直感ですか! 良いギフトですね! 偵察や索敵、ナビゲートや窮地での選択など、幅広く役に立つギフトです! ……効果が分かりやすくない分、侮られがちのギフトですが、高位の冒険者であればあるほど直感持ちの理不尽さを知っているそうですよ」
「ほぉ……」
受け付け嬢の解説が面白い。これは……噛めば噛むほど味が出るスルメスキルを引いてしまったようだな。
よっしゃぁ! よくわかんないけど当たりは当たりだろ! 命を掛けたガチャはいい結果になったようだ。
「当ギルド特有の初心者さんへの支援として、ギフトや年齢、能力を加味した上で、現役の冒険者に指導をお願いする依頼を出すこともできます。……これは内緒ですが、将来有望そうな人にしかこの制度は利用できません」
「あー、費用とかはどうなるんでしょうか? 絶賛一文無しでして……」
「費用の方は少し掛かりますが、大部分は当ギルドが負担しますし、今後ウェイズさんが受ける依頼の報酬から天引きといった形で組むこともできますよ!」
圧がすごい。逃してたまるものかという強い意志を感じる。
「じゃあ、お願いしますね……?」
「はい! ではそのように登録しておきます! 私の体感の話になりますが、早くて1週間、遅くても1ヶ月の間に受理されるはずです! 費用の方も5つほど依頼を受けていただければ直ぐに返済できますので、不安になる必要はありません」
ほほー……まずはその指導者とやらが来るまでに生き残れと、そういう話だな。
頑張るかぁ!
……ギルドカードどうやって持ってこうかな……。最悪ケツに挟むか? いや汚いしやめておこう。ぼろい靴の裏側に仕込んでおくか。歩きにくそうだが仕方あるまい。
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