第4話 固有魔法テラリウム:箱庭の球体作成編
でも箱庭の球体……ガラスってどうやって作るんだ?
確か白い結晶を……高熱でぎゅいーんと……。
う、ガラスの主成分なんて授業で習った気もするけれど、作り方までは覚えていない。
『箱庭の球体の主成分は
は!? 素材もだけど、高温って……。
それ、この世界で作るの難しいんじゃ??
『この世界で同等の性質の素材があるので、それを代用し貴方の魔法で箱庭の球体を生成します』
ま、魔法で生成するのなら、できるのか……?
『素材のある場所まで案内を開始します』
チュートリアルの書にその一文が表示されると、ピコンっと森の奥に目印が表示される。
便利……。
適度に【鑑定領域】を使って【???】が現れたら鑑定と採取を行い、素材を調達しながら森の奥へと入っていく。
石とか砂とか鑑定内容がシンプルなんだけど、これ熟練度が上がれば名称が変わるのかな……?
目印の場所には小川が流れていた。
遠目に山も見える。その山から小川は続いているのかな?
小川は透明だが生物が生息している気配はなかった。
【鑑定領域】を発動させればいくつも未鑑定の素材が表示されてにんまりとしてしまう。
川の中に堆積していた透明な石を鑑定すると、チュートリアルの書が光った。
『珪砂に近い素材【ケーシャ石】の採取に成功しました。魔法によりケーシャ石を箱庭の球体に生成しますか?』
ケーシャ石、なんだか名前もまんまだなと思ったけれど、この一種類だけで生成できるのかな?
そこらへんが魔法によって簡略化されているのならすごい便利だ。
『箱庭の球体の生成には一握りの【ケーシャ石】を必要とします。手のひらに素材を入れて、ぎゅっと押しつぶすように【箱庭の球体生成】と心の中で唱えてください』
本を水に濡れないように大きめの石の上に置いて川底に沈んでいたケーシャ石を掬う。
それをぎゅっと握りしめて心の中で【箱庭の球体生成】と唱えた。
ぎゅぽんっと音がして手のひらには……歪な球体となったガラスの小瓶が生成される。
「え、これは……」
【箱庭の歪な球体:失敗作】
失敗作……今まで順調すぎるほどだったので、がっくりしてしまう。
生成についてはレベル1という訳か。
いや、地味だけどコツコツと単純作業を続けるだけの持続力は持ち合わせている。
「成功作ができるまで、続けてみよう」
川底のケーシャ石を掬ってぎゅっと握る。ぎゅぽん、失敗。
ぎゅぽん、ぎゅぽんっとひたすら失敗作を作り続けた。
20個ぐらい作り続けているとさすがに疲れてきたので、大きめの石に座って休憩を取る。
ビール……はさすがになぁ。まだ作業を続けるから酔いつぶれてもいけないし。
そもそも、この小川は澄んでいて飲めそうだけど……。
川の生物が一匹も見当たらないのがちょっと不気味だ。
小魚や小エビ、カエルなんかもいたらテラリウムで飼えるのにな……としょんぼりする。
……いや、生き物が生息していない川の水は危険なんじゃないか?
詳しくは考えないでおこう。
鞄に何か食べられるものはないかとごそごそと探っていると、酒のつまみセットが入っていた。
女神の趣味? 滅茶苦茶良い趣味している。
見覚えのあるチーズのつまみや茎わかめを使ったつまみ、ドライカルパスに似たつまみまであった。
これ、滅茶苦茶美味しそうだけど、無計画に食べたら無くなるよな……。
袋に書かれたラベルを見る。
【質量固定保存:食事効果>体力精神力継続回復】
いや、どれだけ機能食なんだよ。
女神様ありがとう……。
ビールにつまみって最高にわかっていらっしゃる……。
つまみのチーズを食べて、少し休憩したらまた箱庭の球体作りに戻った。
ぎゅぽん、ぎゅぽん、きゅぽん! あれからつまみを食べながらちびちびと製作していると完成した時の音が変わった。
「おっこれは……!」
【箱庭の球体LV1:普通の箱庭】
綺麗な球体の上の部分は開いており、コルク栓が付いている。ここから素材を入れてテラリウムを作る事が出来るのかな。
うーん、ごろごろと石の上には失敗作の歪な球体が40個ほど生成されている。
うわぁ……40個に1個の確立かぁ……。
チュートリアルの書が光り、『おめでとうございます! 【固有魔法:テラリウム】がレベル2になりました!』
おお、これでやっとレベル2! やっと材料が揃ったからテラリウムを作る事が出来るのか……。
チュートリアルの書には今作る事が出来るテラリウムの候補が書いてあった。
「森のテラリウム、小川のテラリウム、山のテラリウム……なるほど、その辺りで獲れた素材を使って作ればいいのかな」
今のところ森と小川の素材はほとんどの物が採取出来たと思う。
そのままテラリウム作りをしてみてもいいけれど……。
「この失敗作どうしよう……」
『箱庭の歪な球体には魔力も込められている為、高位箱庭の素材となります。そのため、リサイクルを推奨します。廃材入れもマジックバックの中に入っているので、そこに溜めておきましょう』
エ、エコロジー!
持続可能な社会かな……。
バックを探ると小さなケースが出てきた。この中に入るのかなと疑問に思ったけれど、その中に歪な球体をぽいぽいと放り込んだ。
うーん、いくらでも入る。容量がいっぱい入るのいいなぁ。
山と積まれていた失敗作を片付けたので、そのままテラリウムを作成しようかとも思ったが……。
「これでテラリウム失敗したら嫌だし、何個か予備に作っておこう」
念には念を。
こうして、ぎゅぽんぎゅぽんっと再び制作し始めたのだった。
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