第一部 祈りの森滞在編

第1話 パンパカパーン! 貴方は選ばれました!


『パンパカパーン! あなたは1000番目のまよい子です! 記念にフォーセイクンでの第二の人生をプレゼントします!』


 クラッカーをパーンと弾けさせながら、雑にタンバリンを鳴らしてイエーイってよくわからないテンションでいる女神様っぽい服装の女性にドン引きする。


「あの、結構です」

『そんなこと言わないで! 残された楽園、特産も何もないけれど、ただ広がる森林が生い茂る世界ですよ! 最近だと開拓系って言うんですか? そういうの流行っているじゃないですか! 丁度色々と開拓できますよ!』

「や、知らないです」

『そんな! 最近は異世界転生とかが異なる世界で大流行だから、当選したとかいえばチョロく引っ張れるって他の女神が言ってたのに!』


 チョロくってあんた……。

 びっくりするぐらい内情を隠していない上に誘い方が怪しい上に、雑。

 

「あの、1000番目の迷い子って何ですか。おそらく俺亡くなっていますよね……」

『そうですね! 交通事故で亡くなっていますね。えーと、魂ってその世界で巡回しているので、死ぬとまた同じ世界で生まれ変るって感じなんです。だけどたまにそこから外れてしまう事があるんですね。それで迷子になった魂を別の世界に放り込む事があるんです。それであなたが丁度1000人目だったので、生前の特技やスキルなどを踏襲して次の世界へのボーナスっていうか~』

「俺の生前の特性やスキル……」

『はい、それをバーンとボーナスアップして、生きやすいように……って雑魚い! びっくりするほどあなた何の特技もないですね!?』

 女神は何やら俺の前世の履歴書みたいな紙を見ながら吃驚している。

「酷くないですか!?」

『えっうそ、戦闘能力アメーバ並み、交渉能力ミジンコ並み、癒しの特性無し、農耕鍛冶適正無し、うそでしょ。おまけに別に頭が良いという訳でもない! あなた、どうしてこのスペックで生きてこれたんですか!?』

 

 うわ、女神っぽい人の言葉で凹む。

『いや、前回も前々回も逃げられているし、もうこの魂でいっか』

「ちょ、逃げられてるって」

『何か趣味とかあります!? 唯一これなら得意だ! っていう趣味』

「ええと、メダカに餌をやったり……あっそうだ。一時箱庭ゲームみたいなのにハマっていた時期があって、最近だとテラリウムっていうのですか? 小さなガラス瓶にちまちまと苔とか石とか入れて、ヤマトヌマエビとかを入れて……」

『地味……』

 えええ、趣味聞いてきたのあなたじゃないか……。

『えーと、うんと、まぁ、それでいいか。はいはい。【固有魔法:テラリウム】じゃ、このスキルの汎用性を上げておきますので、他に何か欲しい特性とかあります?』

「まだその、フォーセイクンに行くとも決めてないのに……」

『はい、【ギフト:チュートリアルの書】これに魔法の使い方とかその世界の事とか書いてあるんで。あと本当にあなた草食系っていうか、戦闘とかにも向いていないのでギフトも戦闘系も難しいんですよねぇ。あっこれは付けておかないと。【ギフト:神秘の胃袋】なんかあなたすぐに死にそうなので、とりあえず毒キノコとか食べても死なないようにしておきました! あとは適当に基礎的なスキルは付与しておきますね』

「え、優しいのやら雑なのやら……その異世界に行くことは決定なんですか?」

『滅茶苦茶断られているので、そろそろ決めたいところですね。私も引っ越し準備進めたいし』


 うわー、たぶん。当選しました! って言っているけれど、他の人に断られまくったんだろうなぁ。

「まぁ、他に行く人がいないなら……俺が行くしかないのか。ええと、その世界で俺は何の使命を与えられるんですか?」

『使命?』

 コテンって不思議そうにされるけど……。

「え、だって……とにかくその世界に誰かを行かせたいってことは、何か果たして貰いたい使命があるとか……」

『ラノベの読みすぎでは?』

「酷くないですか!? 使命って、ええと……ほら、魔王を倒したり、勇者の手助けをしたり……」

『あーはいはい、あれね。大丈夫。魔王が討伐された世界なので安心して! 魔物もいるけどそこまで心配しなくていいわよ。ただちょっと勇者側がやりすぎちゃったりしたけど……』

「え!?」

『あなたみたいな人間に何かして欲しいとかないわよ。ただちょっと……の代わりをするだけだから』

 女神がもにょもにょっと口を濁した部分は聞くことができなかった。


『とにかく、心配ならこの【ギフト:何とかなるさ】も付けておくわ!』

「雑い! ネーミングも雑い!」

『さ、迷い子タカヒロよ。あなたの道筋に祝福がありますように……! 自由にこの世界で生きてください』

 キラキラっと女神の祝福みたいな粉が降りかかる。

「待って、最後に……」

 俺は最後まで気になっていた事を女神に尋ねた。

 

「俺じゃないといけないって理由はあるのか? 俺が選ばれた理由は?」

『……宿命も運命も、歩んだその先にあるのです。きっとあなたの歩んだ道がその答えになります』


 最後まではぐらかされた……!


 こうして、俺はどうやらフォーセイクンという異世界に送られたらしい。


 

【神無き世界の箱庭師】

 

 

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