第17話 我が家での食事


「やっと我が家に着いたーー!」

 

 たっぷりケーシャ石を採取した俺は、キリの良い所で切り上げて、森の奥へ進んで一日ぶりの我が家にたどり着く。

 これ本当に隠匿の魔法掛けられていたのかな。よくわからないがガチャリと開いた家は自動で明かりが灯る。


 えーとまずは外から戻ってきたら手を洗ってうがいをして……。

 食事の前に今日の入手物を仕舞わないといけないな。


 まずはベルトを外して20本素材を採取した試験管を、素材入れの鞄の中に種類別に分けていく。

 草原での採取も多く取れたからか、草類の置き場が一番埋まった。

 このベルトは吊るしておけば、また明日には空の試験管が復活しているんだよな。本当に便利。

 

 次は暦表カレンダーだけど……店のカウンターの上に置いておくか。毎朝作ったテラリウムの霧吹きと一緒に日付の木枠をずらしておこう。

 地図とベクターさんから貰った祈りの森の詳細情報についてはもう少し見ておきたいからダイニングの上に置いて、次はよろず屋で買った鍋とフライパンをキッチンの掛けられるところにぶら下げておく。

 でもって最後は食器セット!

 ふふふ、夕食後にはこのビールグラスに水筒からビールを入れて、つまみなんかも出しちゃおっかな。

 一人分の食器をケースから取り出して水でしっかりと洗う。

 

 そういえばこの食器セット、一人分しかなかったけれど、普通この大きさのケースだともっと入っていても良さそうなんだよな。

 ま、魔導士が作った食器セットがどんな魔法が掛けられているのかわからないけれど、ケースもとりあえず食器棚の下の棚に仕舞っておく。


 冒険者食事セットを4つ棚の中にしまい、今日はこの中の干し肉と簡易スープ、そして銅貨1枚で買った徳用パンを幾つか食べる事にした。


 簡易スープは固形だったので、小鍋で沸騰させたお湯の中に入れてぐるぐると大きな木製の匙でかき回した。

 干し肉は、そのまま齧るのか? よくわからなかったので皿の上に乗せる。

 パンは少し固くなっていたけれど、キッチンには窯みたいな設備もあった。

 見れば天井に煙が抜ける煙突もある。

 鉄板の下の部分に火を付ける場所があるのだが、どうすればいいだろう? と思っていると、窯の隣につまみがあり、それを捻ればじわじわと鉄板の下が赤く灯る。


 ……もしかしてパンも焼けたりピザなんかも作れたりして?

 むふふと思いながらパンを鉄板の上に食べる分だけ置いて少し焼く。

 焦げないようにと窯の隣に備え付けてあった火掻き棒みたいなのでパンを取り出して、つまみを捻れば火が消えた。


 スープをスープカップに移し、ビールグラスにビールを注ぎ、干し肉と熱々のパンをテーブルに並べる。


「いただきます」

 中々な食事に満足しながら温かいスープを一口啜る。

 簡易スープとはいえ、結構味はしっかりとついている。味わいとしてはビーフスープみたいな感じだ。

 それに焼いたパンをちぎって食べる。

 美味しい。さすがギルドマスターのパン! 温めると昨日のパンとは思えないほどに美味しかった。

 次に気を良くして干し肉にかぶりつくと歯が負けそうになった。


「固っった。なに、この固さ」

 奥歯でギリギリと噛みちぎる。嘘だろ。この干し肉滅茶苦茶食べづらい。

 何十回も口の中をもごもごと咀嚼して、やっと噛み切れるほどの固さになる。

 味は塩漬けが強くしょっぱい程。

 これは、俺の現代人の歯がやわなのか、そもそもこの干し肉が固いのか。

 一口で断念した俺はスープの中にそっと投入して馴染ませる。


 スープを飲めば逆に干し肉の塩気が移りすぎてちょっと味が濃い。

 ビーフ&ビーフあと塩。みたいな味だ。

 そっとちぎったパンを付けて食べると濃さが丁度良くなった。

 スープでひたひたになったパンを食べていくと、少々干し肉が柔らかくなったようだ。

 次に食べてみると柔らかくなった肉は割と美味しかった。

 ビールに滅茶苦茶合う。

 この組み合わせは結構有りかもしれない。

 ……干し肉のままでは俺は歯が負けそうになるけど。


「ぷはー、ビール旨! しっかり運動した後の食事とビールは最高だな!」

 ついつい無限おつまみの中からチーズとナッツを出してしまう。

 食器セットの中に入ってた小皿が本当にぴったりだった。


 飲みながらパラパラとベクターさんから貰った資料の中で、薬草などの項目を見る。

「いや、痛み止めの薬草と触ると肌がただれる毒草、こんな細かな違いしかないの? これ絶対間違うっしょ」

 なんて葉の裏の色で違いが分かるなんてしっかりとみないと間違いやすいな、なんて思いながらパラパラと捲る。


 はー、食事も食べ終わってしまって、ビールも酔わない程度に飲み干してしまった。

 もう一杯、は酔いが回りすぎて作業ができなくなる。

 片付け面倒だな……と思いながらとりあえず食器を水で濯ぐと……。

「あれ?新品同様に綺麗になっている気がするんだけど」

 もちろんシチューみたいなものを作った訳じゃないんだけど、それにしても水でさっと濯いだだけで、汚れも簡単に落ちて……おまけにえ、拭かなくても食器が乾燥していくんだが。


「これって食器セットの中に入っていた食器だよな? 小鍋とかは汚れ落ちていないし、乾きもしないし」


 はっと気が付く。

「宮廷魔導士のロードスター製食器セット、自動洗浄オートクリーン機能付き!?」

 食器を置いて、パンパンっと柏手を二度打ってしまった。

 

 時短の神様ロードスター様あざーーーっす!!

 

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