第11話 異世界理解:貨幣価値と曜日について


「あ、今冒険者ギルドのセットの方が安いって思ったでしょ」

「ソンナコトナイデスヨ」

「目が泳いでるじゃない。ふふふ、祈りの森亭ランチは美味しくてボリューミーだって人気なんだから! 普通の肉料理Aランチと魚料理Bランチだと2銅貨10銭貨で食べられるけれど、やっぱり名物料理が入っている祈りの森亭ランチが一番おすすめね!」

 シシリーさんが強くお勧めするので、祈りの森亭ランチを頼むことにした。

 軍資金として入手した貨幣がどんどんと減っていく。

「まさか料理はシシリーさんが?」

「いいえ、酒場のマスター兼ギルドマスターが作ってくれるわ!」

 一人で何役も兼ね過ぎではって疑ったけれど、マスターが作ってくれるのか。

 ん、ギルドマスターが作ってくれるの!? このギルドのトップの人だよね?


「もしかして、この酒場と冒険者ギルドで働いている人って……」

「ギルドマスターと私と週に半分通ってくれる鑑定師のベクターさんと隔日で通ってくれるお掃除のアーリーさんぐらいね」

「……わぁ」

 圧倒的人手不足!!

 今酒場のマスターに注文通してくるので、どの席でもいいから座っていてくださいね! と言われて、ギルドボード近くの席に座る。

 時間的にお昼時になったのか、ぽつりぽつりと席が埋まり始める。

 おお、町人発見! って感動してしまったけれど、そういやこの店しか食事処がないもんな……。


 その間にとチュートリアルの書を開く。

 小声でちょっぴり非難する。

「おい、さっき俺がおのぼりさんをしている時に少しぐらい助けてくれたっていいだろ……」

『貴方をいきなりぶつぶつと独り言をいい始める変な人と認識させるのはちょっと躊躇われたので……』

 正論! いや確かにそうだけどさ!

『どの説明を必要としていますか?』

 えーと、まずは呪いの風? いや、先に貨幣システムについて聞いておくか。

 さっき受け取った貨幣はポケットに入れたので、それを取り出す。

 えーと使ったのは冒険者ギルド登録料で銀貨2枚、5日分の冒険者食事セットで銀貨1枚、昼食代銅貨3枚。

 残っているのは小金貨1枚銀貨1枚銅貨7枚。

 それが多いのか少ないのかもよくわからない。


 『この町はコウジン国の通貨ですので、一番貨幣価値の低い位から銭貨、銅貨、銀貨、小金貨、金貨、大金貨となっています。その上に白金貨と大白金貨もありますがほとんど流通しておりません』

 えーと、普段流通しているのは銭貨から大金貨ぐらいってかんじかな。そこを理解しておけば良いのか?

 『貴方の世界の通貨で貨幣価値を説明すると、銭貨は1枚10円程度、20枚で銅貨1枚になります。銅貨は1枚200円程度、10枚で銀貨1枚になります。銀貨は1枚2,000円程度、10枚で小金貨1枚になります。小金貨枚は1枚20,000円程度、5枚で金貨1枚になります。金貨は1枚で100,000円程度、10枚で大金貨1枚になります。大金貨は1枚1,000,000円程度になります』


 んー、なるほど。なるほどね、完全に理解した。

「後で貨幣メモ作ろう」

 つまり、所持金は23,400円ぐらい、ってことかな!

 そう考えると初期軍資金としては確かに多すぎず少なすぎずって感じで丁度良い。

 精霊石、あんなに小粒で50万ってやばくないか。

 知られたら追剥に合いそう。マジックバックの小袋をぎゅっと締める。

 

 あと日付についても聞いておきたいな。

 『この世界は八つの属性で構築されていると信仰されています。表週期の火・水・土・風の4日、裏週期の光・闇・氷・雷4日を合わせて一週間となり、4週で一月という数え方となります。8つの月がめぐると1年という数え方ですね。今日は光神月の第二週光日コウジツとなります』

 元の世界の一週間7日一年12か月換算じゃなくて、この世界では一週間8日一年8か月換算なのか。一月が4週で32日。

 なるほど、計算しやすい……。

『冒険者ギルドでは暦表カレンダーと近隣の地図を取り扱っていますので、入手することを推奨します』

 なるほど。あとで入手しておこう。

 あと聞かないといけない事……。

 そうだ。魔王が討伐された世界って平和な世界をイメージしていたのだけれど、この閑散とした町の様子に『呪いの風』ってとても重要なキーワードなんじゃないかと思い、チュートリアルの書に聞き出そうとしたところで、ぬっと顔に影が落ちる。

 

「祈りの森亭ランチです」

 巨漢の男はこう独特な恰好をしていた。

「ようこそリンドウへ。旅人を歓迎しよう。私がこの冒険者ギルドのマスター兼酒場のマスター兼料理人兼解体屋兼ウエイトレスのガンザスだ」

 ガンザスと名乗った2mを優に超す屈強なギルドマスターは料理を片手にどぎついバニー姿で現れた。

 情報過多で死んじゃう!!

 なんでそんな網タイツなの!? 胸筋がすごくて胸当てから零れ落ちそう! 兎耳カチューシャなの!? なんで誰も何も言わないの!?

「昔受付のシシリーに変な絡み方をした奴がいてな。お酌をしろだの踊れだの。大事な従業員を守る為に俺がセクシー担当も兼任することにしたのだ」

「な、なるほど……?」

 いや、なるほどじゃないけどインパクトが強い!!

「ふむ、シシリーの目利きは正しかったようだ。悪い人物ではなさそうだな。うむ、たくさん食べていけ。パンはお代わり自由だ」

「あ、ありがとうございます」

 

 はわわ、あまりにも吃驚しすぎて何考えていたか忘れちゃった……。



※『箱庭師のメモ』に貨幣と曜日の項目を追加

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