第29話 査定
採取した薬草の出所については言葉を濁すとして、これからも継続的にギルドに納品する段取りは付いた。
「さ、とっとと検品してしまおうぜ。ベクター、素材の状態はどうだ?」
「どれも花から根まで丁寧に採取されています。品質は中程度、鮮度は新鮮、非常に良い状態です」
ベクターさんが丁寧に一本一本を鑑定していく。
「品質が中程度ってそんなに質が良くないんですか?」
大きめの薬草ばかり採取したつもりだったんだけど、もう少し大きいものじゃないといけなかったかな。
「あぁ、違いますよ。どれも含まれる魔力量から察するに、祈りの森の浅層で採取されたものだと思います。浅層一帯では品質が低品質か中品質しか採取できませんので。その一帯で取れたものを思えばどれも潤沢に魔力が詰まっていて良い品です」
鑑定ランクが上がると、そんなことまで鑑定することができるのか……。
「ギルドの採取依頼は討伐依頼とは異なり繰り返し受注する事が出来ます。まず癒しの薬草は5本で銅貨5枚、全身の割増報酬で銅貨6枚になります。それを4回達成という事で銀貨2枚と銅貨4枚ですね、回復の薬草は5本で銅貨6枚、全身の割増報酬で銅貨7枚になります。これも4回達成で銀貨2枚と銅貨8枚、ボルボルの実は採取しやすい実なので5個で銅貨3枚、無傷の割増報酬で銅貨4枚になります。4回達成で銀貨2枚、最後に寒冷草ですが……」
あ、確か寒冷草だけ1本単位で取引してくれる上に価格が高かった気がする。
「森の浅層でも採取できますが、見つけにくい場所に生えている上に根が採取しにくい構造をしているんです。中層の方がよく見つかりますが、中層まで潜れる冒険者ですと他の薬草の方が価値が高いので、採取する旨味があまりないのですよ。全体的に採取してもらいにくい薬草なので、依頼の値段を上げているのです」
あ、そういう理由で条件が良いのか。
「こちらもよく採取されています。1本で銅貨2枚、全身の割増報酬で銅貨3枚になります。こちら20回達成という事で銀貨6枚になります」
「そんなにも!?」
え、他の薬草と同じぐらいたくさん生えてたぞ……。
「それだけ、とも言い換えられますけどね。こちらの査定も以前の条件のままですし。全部で小金貨1枚と銀貨3枚と銅貨2枚になります」
ひぇ、一回納品するだけで前回の軍資金程度稼げてしまった。
「ギルド貢献ポイントはこの辺りの調達依頼だと一回に1ポイント、合計32ポイントだな。登録したばかりの冒険者ランクは1から始まる。初級は1~3ランク、昇進試験を経て中級の4~6ランクがある。1から2ランクは200ポイントで上がるから頑張ってくれや」
「はぁ……」
ギルマスがギルドポイントについて説明してくれたが、冒険者ランクがどうのというのは依頼達成によってポイントが加算されていくのか。
後で少し情報を整理しておこう。
「えーと、次に納品の時にどの素材を調達していけば喜ばれるでしょうか……? 例えば
どうせ採取するなら必要とされる素材から採取していきたい。
全部は揃えることは出来なくても、森のテラリウムから採取できる素材は幾つかありそうだ。
「使用頻度の高い初級回復薬は【癒しの薬草】と【回復の薬草】を錬金術師が錬成して製作する。だからこの二つはどれほどあっても良い。その二つに【麻痺草】を混ぜれば【
聞き覚えのない素材から、採取済みの素材まで、結構種類が多いな。
というか、なるほど。
回復薬も状態異常薬も使う薬草は共通しているものがあるのか。面白い。
錬金術のスキルがあればこれも自分で調合できるかもしれない……。
「祈りの森の小川付近では、何か素材って必要そうなの取れますか?」
「川付近? 昔は翡翠結晶とか取れたな。あとイノリゴケは魔力を貯めやすいから苔色ランプの材料にもなるし、川魚なんかも食用に適している種はいくつかいたはずだ。後は黒色結晶、稀に見つかるが、あいつを魔法付与の触媒にすると付与効果が上がるから昔はよく探して川に入っていたな……」
「ケーシャ石とかは?」
「呪いの風の影響を受けにくい石だが、屑石だ。素材としての価値は低いな」
え、そうなのか! あれだけ箱庭の球体を作るのに頼っていたのに……。
遠慮無く思う存分素材として使わせてもらおう。
少し考え込んでいたベクターさんがおずおずと話し出す。
「もし鏡幻石が採取出来れば、と思いましたが……川の上流、森の中層以降にしか取れない素材でしたね。それがあれば【鑑定】効果を補助する
「おい、ベクター。それを作れる凄腕の錬金術師なんてもうこの町には残っていねーだろ」
「そうでしたね。後は川辺に咲く花に幾つか価値があるぐらいでしょうか」
うむむ、まだテラリウムも普通のやつしか作れていないので、上位の物が作れたら採取できる素材が変わるかもしれない。
「ところで、そのお前さんの秘密の採取場所では魔物はいないのか?」
ギルマスがちょいちょい探りを入れてくる。
「いないですね、今のところ。……もし仮にいたとしても、俺が弱くて倒せませんが」
「はははっ違いない。お前さん冒険者にしてはひょろっとしてるからな。どうだ? 料理修行と一緒に戦闘術の指南もするか? サービスしとくぞ」
ギルドマスター直々の修行!?
「や、結構です」
真顔で断ってしまった。
※『箱庭師のメモ』にギルドランクの項目を追加
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