概要
紫園家は、栄えると同時に、呪われた血筋だと囁かれていた。
そんな紫園家に、ある日、かさねという名の少女が足を踏み入れる。
『蝶憑き』と不気味がる村人からは忌み嫌われ、父親は酒代と引き換えにかさねを当主の妾として売った。
覚悟を決めたかさねを待っていたのは、夢のような幸せな暮らし。
妾でありながら、屋敷の中で何よりも大事にされ優先される『胡蝶様』と呼ばれ暮らす事になるかさね。
溺れる程の幸せ。
しかし、かさねはそれが与えられた一年間の「猶予」であることを知っていた。
かさねにだけは不思議な慈しみを見せる冷徹な当主・鷹臣と、かさねを『形代』と呼び愛しむ正妻・燁子。
そして、『花嫁』を待っているという不思議な人ならざる青年・斎。
愛し愛され、望み望まれ。四葩に囲まれた屋
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!これは「あい」の物語
あい。
さて、このことばにどのような漢字を当てはめよう。この文字を見て、あなたはどのような漢字を思い浮かべるだろうか。
この作品には、様々な「あい」が詰まっている。
人の感情というものは一色ではなく、様々な色が混じりあっている。誰かに向ける眼差しに、感情に、それをたったひとことで言い表すというのも難しい。
そしてそれが何人もの人間であれば、なおさらに。
この何人もの単純なようで複雑な、互いが互いに向ける感情というものを描ききったということに、まずは賞賛を送りたい。
これは、紛うことなき「あい」の物語。
読めばあなたも、人の「あい」を知る。
ぜひご一読ください。 - ★★★ Excellent!!!面白いです! 大正ロマン香る雅びな愛の獄。
主人公の美しく優しい少女、かさねは、非道な父親に、金持ちの家へ妾として売り飛ばされます。
どんな仕打ちにも耐えよう、と決意して妾となったかさね。
しかし待ち受けていたのは、本妻から可愛がられ着せ替え人形にされる(ん?) 夫からの一年間は手を出さない、でもかさねを求め、狂おしいほど愛してるという行動(ん?)
さらには、庭に、幽霊……? 神様……? 人ならざる存在の美形の男がいて、かさねに意味ありげに微笑みます。(んん?)
何がどうなっているのー?
そして、物語は沢山の謎をはらみ、ミステリーとして綴られていきます。
最後まで読むと、ああ、こういう事だったのか、と納得します。
絢爛豪華な華…続きを読む - ★★★ Excellent!!!さみしさ紡いで愛を織る。哀しき宿命にあらがう胡蝶たちの和風幻想恋愛譚。
情感あふれる筆致で描かれた、幻想的な雰囲気のある和風恋愛ファンタジー。主人公のかさねは酒代を欲しがる父親の意向で、『紫苑家』という由緒正しい名家に妾として嫁ぐことになります。
旦那である紫苑家当主の鷹臣は『死神少佐』とも呼ばれる冷酷な軍人。彼には正妻もいるため、かさねは己の身の上に悲愴な覚悟を固め、従順な妾として生きるつもりだったのですが。彼女を待ち受けていたのは、当主と正妻からの溺れてしまいそうな愛情で――。
戸惑いながらも、与えられる愛情を素直に受け止めるかさね。何かを隠しているらしい、当主の鷹臣。そして、甘味が好きな謎の存在、斎と。物語が進むにつれて深まり、ねじれ、混沌としてい…続きを読む - ★★★ Excellent!!!その愛の重さが故に
母が亡くなったあと、酒代と引き換えに由緒ある紫園家当主の妾として売られた『かさね』。
良い扱いは受けないと覚悟していくも、かさねは胡蝶様と呼ばれて丁重に扱われる。
一番かさねを疎ましく思っていると考えていた正妻である燁子からは可愛がられ、更には当主である鷹臣からは一心の慈しみを受ける。
そんな幸せにも似た時間がゆるりと流れていくが……
この物語の特徴は、かさねを中心とした様々な愛の形だろうか。特に、鷹臣がかさねへと向ける眼差し、肌に触れる描写など、色濃く映る描写が兎に角鮮明に……その想いの強さを述べている。
その他のキャラクターが見せる愛情もまた、色々な感情がひしめき合ってストーリーを…続きを読む - ★★★ Excellent!!!麗しの君を戀慕うは濃き血脈の故か。
大正浪漫の格調高く芳しく開幕したこの物語。
本当ならばレビューを書くのはもう少しあとのほうがよいのでしょうが、これは最新話までに明かされた事象からして早々に皆様にお勧めしたく、こうして筆をとりました(嘘。パソコンで叩いてる)。
酔漢の父に売り渡される形で妾に出されたヒロインが向かうは、呪わしの血脈。
そこで彼女を待ち受けていたのは当主と正妻両者から受ける溺愛ともいうべき異常事態。
さらには人の目に映る筈もない「もの」を目にし、ついで屋敷にあってはならない、あるはずのないものを見つけてしまう。
彼女の正体は一体何か。
彼女は、果たして誰の花嫁なのか。
この血脈に潜む隠された秘密を知るのは…続きを読む - ★★★ Excellent!!!次から次へと畳みかける謎に読む手が止まらなくなる大正浪漫恋物語
酔いどれダメ親父に売られた少女が、名家の旦那様に溺愛される――と書くと、よくある恋愛ものだと思うかもしれません。
が、この作品はかなり違います。
よくある恋愛ものの姿をとっているのは第一話のみ。
第二話から「あれ?」と思わせる片鱗が見え隠れし、
読み進めるほどにいくつも謎が編まれていきます。
まるで主人公の少女の名「かさね」のように。
また豪華絢爛な大正浪漫の描写も大変美しいです。
女性読者が心惹かれるであろう要素が詰まっているのに、仄暗い恐ろしさが潜んでいる――絶妙なバランスで引き込まれます。
ところで「かさね」というと『真景累ヶ淵』を思い出す人も多いはず。
今のところ全く関係ありませ…続きを読む