さみしさ紡いで愛を織る。哀しき宿命にあらがう胡蝶たちの和風幻想恋愛譚。

 情感あふれる筆致で描かれた、幻想的な雰囲気のある和風恋愛ファンタジー。主人公のかさねは酒代を欲しがる父親の意向で、『紫苑家』という由緒正しい名家に妾として嫁ぐことになります。
 旦那である紫苑家当主の鷹臣は『死神少佐』とも呼ばれる冷酷な軍人。彼には正妻もいるため、かさねは己の身の上に悲愴な覚悟を固め、従順な妾として生きるつもりだったのですが。彼女を待ち受けていたのは、当主と正妻からの溺れてしまいそうな愛情で――。

 戸惑いながらも、与えられる愛情を素直に受け止めるかさね。何かを隠しているらしい、当主の鷹臣。そして、甘味が好きな謎の存在、斎と。物語が進むにつれて深まり、ねじれ、混沌としていく愛憎の裏側に隠された衝撃の過去が明らかになるにつれ、各自の抱えた深い孤独や傷が胸に迫ります。
 一人一人の宿命が哀しい物語ではありますが、同時にとても愛の深い物語でもありました。完結しており、安心して結末を見届けることができます。ぜひご一読ください。

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