あい。
さて、このことばにどのような漢字を当てはめよう。この文字を見て、あなたはどのような漢字を思い浮かべるだろうか。
この作品には、様々な「あい」が詰まっている。
人の感情というものは一色ではなく、様々な色が混じりあっている。誰かに向ける眼差しに、感情に、それをたったひとことで言い表すというのも難しい。
そしてそれが何人もの人間であれば、なおさらに。
この何人もの単純なようで複雑な、互いが互いに向ける感情というものを描ききったということに、まずは賞賛を送りたい。
これは、紛うことなき「あい」の物語。
読めばあなたも、人の「あい」を知る。
ぜひご一読ください。
主人公の美しく優しい少女、かさねは、非道な父親に、金持ちの家へ妾として売り飛ばされます。
どんな仕打ちにも耐えよう、と決意して妾となったかさね。
しかし待ち受けていたのは、本妻から可愛がられ着せ替え人形にされる(ん?) 夫からの一年間は手を出さない、でもかさねを求め、狂おしいほど愛してるという行動(ん?)
さらには、庭に、幽霊……? 神様……? 人ならざる存在の美形の男がいて、かさねに意味ありげに微笑みます。(んん?)
何がどうなっているのー?
そして、物語は沢山の謎をはらみ、ミステリーとして綴られていきます。
最後まで読むと、ああ、こういう事だったのか、と納得します。
絢爛豪華な華の獄。(妾として買われてきた以上、どこにもかさねは行けない)
とらわれのかさねに、溺愛をむけてくる女と男たち。
面白いですよ。
読み始めたら、続きが気になって最後まで一気読みしちゃうと思います。
情感あふれる筆致で描かれた、幻想的な雰囲気のある和風恋愛ファンタジー。主人公のかさねは酒代を欲しがる父親の意向で、『紫苑家』という由緒正しい名家に妾として嫁ぐことになります。
旦那である紫苑家当主の鷹臣は『死神少佐』とも呼ばれる冷酷な軍人。彼には正妻もいるため、かさねは己の身の上に悲愴な覚悟を固め、従順な妾として生きるつもりだったのですが。彼女を待ち受けていたのは、当主と正妻からの溺れてしまいそうな愛情で――。
戸惑いながらも、与えられる愛情を素直に受け止めるかさね。何かを隠しているらしい、当主の鷹臣。そして、甘味が好きな謎の存在、斎と。物語が進むにつれて深まり、ねじれ、混沌としていく愛憎の裏側に隠された衝撃の過去が明らかになるにつれ、各自の抱えた深い孤独や傷が胸に迫ります。
一人一人の宿命が哀しい物語ではありますが、同時にとても愛の深い物語でもありました。完結しており、安心して結末を見届けることができます。ぜひご一読ください。
母が亡くなったあと、酒代と引き換えに由緒ある紫園家当主の妾として売られた『かさね』。
良い扱いは受けないと覚悟していくも、かさねは胡蝶様と呼ばれて丁重に扱われる。
一番かさねを疎ましく思っていると考えていた正妻である燁子からは可愛がられ、更には当主である鷹臣からは一心の慈しみを受ける。
そんな幸せにも似た時間がゆるりと流れていくが……
この物語の特徴は、かさねを中心とした様々な愛の形だろうか。特に、鷹臣がかさねへと向ける眼差し、肌に触れる描写など、色濃く映る描写が兎に角鮮明に……その想いの強さを述べている。
その他のキャラクターが見せる愛情もまた、色々な感情がひしめき合ってストーリーを盛り上げているため必見です。
大正浪漫の格調高く芳しく開幕したこの物語。
本当ならばレビューを書くのはもう少しあとのほうがよいのでしょうが、これは最新話までに明かされた事象からして早々に皆様にお勧めしたく、こうして筆をとりました(嘘。パソコンで叩いてる)。
酔漢の父に売り渡される形で妾に出されたヒロインが向かうは、呪わしの血脈。
そこで彼女を待ち受けていたのは当主と正妻両者から受ける溺愛ともいうべき異常事態。
さらには人の目に映る筈もない「もの」を目にし、ついで屋敷にあってはならない、あるはずのないものを見つけてしまう。
彼女の正体は一体何か。
彼女は、果たして誰の花嫁なのか。
この血脈に潜む隠された秘密を知るのは……今は亡き姉妹なのかも知れません。
さあ、このめくるめく世界を堪能するならば、早いうちがよいですよ。
一話一話が頁をめくるかのごとく明かされてゆくのを楽しむには、やはり日々の連載を楽しむのが乙というもの……。
酔いどれダメ親父に売られた少女が、名家の旦那様に溺愛される――と書くと、よくある恋愛ものだと思うかもしれません。
が、この作品はかなり違います。
よくある恋愛ものの姿をとっているのは第一話のみ。
第二話から「あれ?」と思わせる片鱗が見え隠れし、
読み進めるほどにいくつも謎が編まれていきます。
まるで主人公の少女の名「かさね」のように。
また豪華絢爛な大正浪漫の描写も大変美しいです。
女性読者が心惹かれるであろう要素が詰まっているのに、仄暗い恐ろしさが潜んでいる――絶妙なバランスで引き込まれます。
ところで「かさね」というと『真景累ヶ淵』を思い出す人も多いはず。
今のところ全く関係ありません。
が、作品全体にそこはかとなく漂う不吉な雰囲気に「かさね」という名はぴったりだとも思えます。
美と恋と謎が綾なす大正浪漫の世界に、ぜひあなたも足を踏み入れてください。