第11話 ご飯とお風呂

「美味しい! こんなカレー食べたことないよ!」

 余計な事を言わないという条件で食卓にはお兄さんもいる。


「いいお嫁さんになるよ。いやぁ、目玉焼きを何かの板にする我が妹にはもったいないよ」


 この一言でお兄さんは二階に追放された。

 

 この前さ、男の子と遊びに行った子が脇を剃るの忘れてさ。ほら周り女の子だからみんな気にしないもんね。

 楽しそうにカレーをはねさせた穂信の口をティッシュで拭いながらカレーを食べた。


 時間はいつの間にか二十時になっていた。もうそろそろと帰ろうとした。


「明日さ、休みだから泊まっていきなよ」


「え、でもご迷惑なので」


「兄貴もいるし、変なことしないから」


「キスですか? あれはちょっとびっくりしましたけど、今は大丈夫ですよ」


「その先のえっと」

 チューの先? 抱きしめるのかな? ハグ?


「ハグの事ですか?」


「うーん、違うんだ。それもしたいけど、そうじゃなくて、その体を触ったり、ちょっと大人の」


「はい、腕触ってください。こんなことでいいんですか?」


「中二だもんな。分からないよな、うん、分かって欲しいけど、欲しくない。でも触るね、すごい柔らかい」


「お母さんに電話しますね」

 あなたに友達はいないと思っていたわ。向こうの人によろしくね。


「大丈夫らしいです」


「よし、片付けをしよう。それから、お風呂を沸かすね」

 油物あぶらものなので、食器洗い用洗剤でカレーを手で落とした。


「え。なんでスポンジ使わないの?」


「油物なので、次にスポンジが使えなくなっちゃうので」


「その。嫌だったらいいけど、お風呂一緒に入らない? そのほら、とかお姉ちゃんいないから憧れで」


「いいですよ」

 何か含みがあることは分かるが何なのかは分からなかった。


「じゃ先に入っているね。お風呂はここ出て左の洗面台の中にあるよ! 用意してるから洗い物済んだら来てね」

 穂信は嬉しそうにお風呂に行った。


 家族以外の同性と同じお風呂って修学旅行以来だな。家族旅行もそうだったな。意外だったが穂信は女の子と家でお風呂に入ったことがないのか。


 洗い物は大方終わって、お風呂に向かった。服を脱いでバスタオルを体に巻いた。なぜなら旅行の経験でお風呂はそういうものだと思っていたからだ。


「桃谷家のお風呂へようこそ! 入浴剤はど、れ、に。なんで?」


「何がですか?」


「なんでバスタオル巻いてるの?」


「お母さんが家の外のお風呂に入るときはバスタオルを巻きなさいって」

 うーん。全裸の穂信は唸った。スレンダーというかきれいな体だった。

 理由はよく分からない。


「ここを自分の家のお風呂だと思って」


「いえ、ここは穂信の家なので」


「今、穂信って呼んでくれたの? 関係性が一歩進んだのに二歩くらい戻った気がする。私は加奈の裸見たいなー」


「同じ女の子なので、構造は同じかと」


「いや、確かに確かにそうなんだけどさ」

「その好きな女の子の裸は特別というか、その見てみたいというか」


「もしかしてこの家バスタオル禁止でしたか?」


「いやうん、そうなんだけど、確かにそれはそうだけど、なんかな違うのよ。そうじゃなくてさ、その」


「なんですか?」


「うちのお風呂はバスタオル禁止!」

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