第43話 メリークリスマス
「買ってきたケーキですよね?」
「ノンノンノン、これは私が作ったケーキです」
おかしい、それにしては造形が美し過ぎる。
「私は冗談を言われているのでしょうか」
「失礼な、食べてみなさい」
じゃりっとした感触の覚悟をしていたが、柔らかい甘さでスポンジはふわふわでいちごも甘いケーキだった。
「今なら買ってきたと言っても遅く無いです」
「失礼な私が作ったケーキです」
ふんすと威張られて、少し悔しい。
「お母さんが私にあなたはケーキだけは美味しく作れるのよねって言われて育ったので」
もう少し能力値を平等に振り分けてくれませんかね神様。
「今日はローストビーフにコーンスープ、このケーキです。あまり食べすぎてもあとが大変なので、控えめにね」
「じゃ、そのあとの前にプレゼントです」
「ほう可愛い袋よのう。どれどれ? これは指輪」
「ちゃんと薬指に入るようにしています」
「ツバをつけておく気だな」
「どこかの誰かが女の子を抱きすぎないように保険です。外したら別れますよ」
「お風呂とトイレは」
「皮膚がありますもんね。月に一度ならいいですよ」
「月に一度か。分かった。はぁ、不誠実過ぎた私が悪い仕方ないな」
はぁ、仕方ない?
「何でですか。その言い草」
目の前で愉快に慌て出した穂信を見たので、まだ私は冷静だった。
「何で私のプレゼントがはぁで、仕方ないの?」
「率直に嬉しいから、その面倒とか思ってないから、言葉を間違えた。ごめんなさい」
「あなたがそういうやり方でしか人間関係を築けないのは知ってます。今宮さんは
視界がぼやけている。涙をボロボロ流している。
「電話切る前に覗き込んだら、
「あの里香ってのはね」
「ただいまー、穂信女連れ込むなよ。今日はクリスマスよ。ちゃんとホテル取って上手くやりなさいよ」
玄関の方から声がした。居間の扉が開いた。
「もうアンタの傾向がよく分からないわ。前はゴスロリファッションのいかにも闇が深そうな女、前は貧相な体型をした
「姉貴は分かっていないわ。その人の生き様をみて、女の子は集まるの。人数? もうすぐ三桁よ。タイプ教えてくれたら見繕ってあげるわよ」
うわぁ、ドン引き。
「それでその女の子は」
「はじめまして、仁科加奈と申します」
「本カノ子よね」
「それが破局の大ピンチなところに姉貴が帰ってきたわけ」
「あんたどうせ照れ隠しで面倒くさそうに仕方ないとか言ったでしょ。アンタは顔がいいから、短期的な女はいいけど、長く持つにはその作戦は失敗。カッコ悪くてもありのままの方がいいわよ」
「加奈。私、嬉しかったんだ。指輪なんて、本当の薬指用の指輪なんて初めてだっから。お返しあげる。ネックレスとこれ」
お父さんへの肩叩き券の様な紙。
ほのぶをすきにできる券。
「そう言うのは部屋でやれ、このバカップルが!」
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