第47話 姫の救出
「え、本当に一ヶ月帰ってないの?」
高窓先輩に連絡をしたのは今宮さんだった。私は高窓先輩の連絡先を知らなかった。
「申し訳ない。断ると思っていたんだ。まさかこういう状況になるとは、本当に申し訳ない」
この前、穂信と行ったファミレスで作戦会議が行われた。
「家には?」
「まだ行ってないです。怖くて」
「私が確認するね」
携帯を触り、高窓先輩は電話をした。
「昨日まで大学で課題処理をしていたんですけど、忘れものを穂信がして、穂信は帰っていますか?」
ここで少し言葉を区切った。
「そうなんですよ。私もためていて、どっちがどっちって感じです。また帰ってきたら伝えてください。ではでは」
そういって切った。
「一ヶ月帰っていない。次だ。本丸といこうか」
そう言って高窓先輩は藤堂さんに連絡をした。
「桃谷? 出て行った」
「うそつけ」
高窓先輩の反応は早かった。スピーカーオンにしていたので、やり取りも筒抜けだ。
「私ってさ、すごく床上手だから、すごく床上手なの」
「そういう設定ね」
「本当よ。試してみる?」
「遠慮します。今、『スーパーショッカー、一号巧は二号聡里に猛烈片想い』を熟読しているので」
「なんだって? スーパーショッカー?」
「一号巧は二号」
「そうしたら、そっちに穂信はいないってわけですね」
私が合いの手を入れても二人は止まらない。
「聡里は猛烈?」
「片想いっつってんだろ。堅物が」
「いないんですね」
きっと今宮さんはかなり怖い顔をしているのだろうことが感じられた。
「いないよ。昨日出て行った」
「何か言っていましたか?」
「加奈ちゃんか。そうかそっちに戻ってないのか。分かった。私も探そう」
「合流しますか?」
「いや、三人ともこっちにいると踏んでいなかったんだから、合流しても仕方ない。高窓アンタ免許取ったでしょ。高窓とその友人はセットで動いて、私の知らない二年のアドバンテージと機動力に長ける私と加奈ちゃんの合わせ技。何か怪我をしているようだったら、二人に応援を求めるよ。逢坂周りは特に念入りに、今すぐにそっちへ行くよ」
どこか冷静で余裕のある藤堂さんに少し苛立ったが、穂信を知る大人はこれくらいの事では揺るがないのだろうか。
藤堂さんはすぐにやってきた、おそらく藤堂さんらしき人はフルフェイスのヘルメットでファミレスのバックヤードに消えた。
「もう困りますよ。藤堂先輩」
声色で分かる。ただならぬ関係である。
「いいじゃん、みーちゃんは私のこと分かってくれるでしょ」
少し低めの中性的な声質。だから低い声が良かったんだ。
「加奈ちゃん、これ」
青のフルフェイスヘルメットを同じくフルフェイスの藤堂さんらしき人間に渡された。
藤堂さんはシールドを開けて顔を出した。
「ここから家に来るのは抵抗があるだろう。色々な女を迎え入れて道を踏み外した部屋だ」
「別に私は」
グローブ越しに額をはじかれた。
「嘘つけ、顔は嫌だって表情をしたぞ。加奈ちゃんにしか分からない部分があるだろう。後ろに乗って教えてくれ、マイクがついている」
「また他の女の子を連れて行くんですか」
「来週は君と一緒だよ」
「本当にたらしですね」
私はがっくりとうなだれた。
「穂信と同じだって?」
「尚、一層マシマシでひどいです」
「私にとっても最後まで致したのは穂信が初め。悪い」
「行きましょう」
「それでどこから」
「分かりません。私よりきっとあなたがよく知っていると思います」
「本当にごめんな」
「恨んでます」
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