第6話 桃谷先輩の訪問
「話を聞いて」
「聞きません。帰ってください」
「帰れない、親睦会もあなたに会う為に途中で帰ってきた」
「針のむしろです。帰ってください、もう学校も行きません」
そう言って私は桃谷先輩を突き飛ばした。
「いたっ」
何度か立ちあがろうとしたが、立ち上がれない。ひねったのか、このまま帰した方が辛い。
「中に入ってください」
「うん、お邪魔します」
居間に通した。ウロウロと見回す桃谷先輩を無視して、ソファに座るようにすすめた。
「
「そのえっと」
「独り言くらい言っても誰も聞いてません」
「私、人間関係作っていくの苦手で、顔形の
「湿布貼りますね」
「帰ってください。足を引きずりながらでも帰れるでしょ。私あなたのお陰で存在する場所失いました」
「そんな事。みんな本当は優しくて」
「本当に好きなら他の人の事を気にしないはずです」
それは、と。言葉に詰まった。
「ごめん、もう帰るから、これ以上は関わらない。さよなら」
本当にいいのか。この涙をこらえる女の子を離してしまっていいのか。
「待って」
「もう関わらない」
「後輩ながらチャンスをあげます」
おこがましいかもしれない、先輩に条件つけるなんて、後で報復があるだろう。それは桃谷先輩からではなくて、きっとその取り巻きだ。
それよりこの涙でいっぱいで悲しく怪我をした状態の女の子を家に帰す方が残酷で私が苦しかった。エゴだろう。どちらにしても桃谷先輩と一緒。
自分の欲望のおもむくままに元カノ子を作ったのも、こうやってすぐに桃谷先輩の手を離せないのも同じ。
自分勝手で汚くていやらしくて気持ち悪い感情。この女の子はきっと私ことが好きだ。と、いう優越感や万能感。それを好きに使いたい。だからこその交換条件。
「チャンス」
ぼそりと桃谷先輩はつぶやいた。
「私がちゃんと人間関係を築けて安心して、過ごせる環境作りをしてください。支配とか
「そんなの無理だよ」
「無理なら逢坂女子はさよならです」
「分かった。頑張る」
「期待をしないので」
桃谷先輩は足を引きずりながら、家をあとにした。
家族はお盆の二週間前に帰ってきた。一泊じゃなかったのかよ。みんな楽しかったと言い、あんたはどうしていたの? と、尋ねた。
「別に、なんにも」
「もったいないないね」
家族は明るく笑った。明けても行くのが
策略では無い、チラチラ見られるのは文化祭実行委員以外の中等部の面々もだった。
教室に入り、件の大便を漏らした女の子は振り返って声を潜めて、話しかけてきた。
「あんたさ、絶倫の桃谷先輩の本カノ子になったの、ま?」
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