出会い

第1話 桃谷穂信という女の子

 いつか誰かと結婚するのかな。

 想像もつかないや、男子がいない学校でそれを考えるのはあまりにも現実的では無い。


 逢坂女子高校おうさかじょしこうこう中等部二年。一年間はここだったので、最初は考えもしないような事が起こった。


 暑いからスカートを付けずに短パンで授業を受けるのは分かるけど、下着が見えるくらいシャツを羽織る程度にボタンを開ける子。


 前の女の子は大きな屁をして、漏れたと言った。

 後ろに振り返って「今日生理だから出ても吸ったから大丈夫」と、よく分からない説明をされた。


 男の子がいないだけでこんなに世界が違う。女の子にモテる女の子はいた。


 高等部二年文化祭実行委員会の桃谷穂信ももだにほのぶ先輩だ。委員会は高等部二年までなので、実質リーダーらしい。

 

 快活で誰にでも明るい。元カノ子が多いらしく、その噂から生徒の間で「さっき肩が当たったから私は元カノ子」と、いう悪ふざけがあった。


 おそらくそういう悪ふざけから、桃谷穂信の通称絶倫伝説は生まれたのであると聞いた。絶倫って何なのかよく知らない。


 文化祭実行委員会、保健委員、学年代表、生徒会、聖歌隊、図書委員。この学校は評定に加算される委員会はそう多くない。

 だけど、部活は多くいつの間にか出現した部活もどきがあるらしい。


「私、水槽を愛でる同好会」

「なにそれ」

「水槽学部だよ」


 という感じ。


 この学校の変わったところは中等部二年から部活動に期限までに所属しないと、この委員と呼ばれるものがくじ引きで決められるということ。


 練習ダルそうだから、聖歌隊は嫌だ。文化祭実行委員会は楽しそう。


 そんな声も漏れ聞こえた。私はこの時点で桃谷先輩と同じ文化祭実行委員会になった。


「君可愛いね」

 出会って自己紹介の前にそんなことを言う変なことをいう先輩が百戦錬磨に入るのかもしれない、百戦錬磨が分からないけど。


「そんなことないですよ」

 世渡りは極めて細やかにする。お姉ちゃんから聞いた。


「ええ、後輩ちゃん。冷たい、私は桃谷穂信。後輩ちゃんは?」


仁科加奈にしなかなです」


「じゃ、ニシちゃんだね。よろしくね」


 下校中、メッセが入った。


「今日は彼氏とデナーだから晩御飯いらないよん。妹ちゃんには悪いけど、明日は直出勤だからお父さんの鎮静よろー」


 他人事だと思ってさ。

 うちのお父さんは基本的には厳しくないと姉は思っている。なので、鎮静がおふざけであると思っている。

 でも、お姉ちゃんが外泊おとまりするとご飯中の咳払いが増える。


「めんどうだな」


 お母さんからもメッセ。

「今日は町内会の集まりということにしているから晩御飯はお父さんとお姉ちゃんで食べてください」

 二人とも勝手で、いいな。

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