第2話 文化祭実行委員会

 この学校の文化祭は十月にあるらしい。そういう基本的なことを初めての会議で知った。去年どれほど学校行事に関心が無かったのか。


 今が四月だ。委員会の選考基準に制限があるのは中等部の間だけで、二年連続生徒会実行委員会なのは高等部としてはめずらしくない。



「私、桃谷穂信って言います。よろしくね」


「そこの髪を編み込んだ。えーっとニシちゃん」

 全員の視線が集まった。


「仁科です」


「ニシちゃんは私と同じ総務ざつように配属ね。他は渉外しょうがいや場所管理、会計担当と会議の書記担当。学校外への広報もよろです。広報は隣の男子校に行くこともあるよ。うへへ、それじゃあニシちゃんこっちにおいでよ」


「あの私、なんで総務に」


「総務は便利屋なの。さっきみたいに便利に使われてさ、まいっちゃうよ。ほんと、でも委員会が決まってから初めて会ったのはニシちゃん。運命だね」

 この人、全く聞いていない。


「我が総務部へようこそ」


「あのここって」


「生徒会室だよ、ニシちゃん」

 鋭い視線が集まった。これはもしかして、もしかしなくても、いやダメだ。こんな想像。


「それが新しい女ですか?」


「紹介するね。みんな元カノ子ちゃんだよ」

 やっぱりアレはにくしみだったんだ。待てよ、なぜ元カノ子がたくさんいる教室に連れられたのだろう。


「ででん! ということで桃谷、本日よりこのニシちゃんをみんなと力を合わせて落とします。大体、六月まででいけると思うよ」


「待ってください。なんですか? それ」

 なんてことを言いだすんだこの人は。


「何が? 私、可愛いよね」


「そんなの桃谷先輩が可愛いってことくらいここにいるみんなは知っていて当然です」

 長めのきれいなロングヘアーの女の子だった。


「いやその私、男の子の方が好きだし」


「女の子同士も気持ちいいよ」

 何がどう気持ちいいのか分からなかったが、一応返事はしておく。


「ダメです」


「えー、みんな。ニシちゃんガード固いよ」

 ここまで聞いて分かった。この人は進んで総務に配属されたわけではなく、きっと委員会の人間関係をズタボロにするから左遷させんされたんだ。


「そのニシ、仁科さん。桃谷先輩をどうにか簡単にどうにか出来るとは思わないことね」

 何が一体どうなのか分からないが返事はしておいた方が良さそうだ。


きもに命じます」

 高飛車たかびしゃってこういうことだろうなと思った。


「そのなんてお呼びすれば?」


「私は桃谷穂信で桃ちゃんでいいよ」


「じゃなくて、他の方は」

 みんな顔をそむけた。


「もうみんな仲良くしようよ。あのロングヘアーが玉造ちゃんで、あのちょっと遠慮が無いのが森ノ宮ちゃん。他はおいおい仲良くなっていこう。それでは十月までファイトオー」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る