第3話 ご近所さんへの交渉
「知ってる? ニシちゃん。文化祭恋人伝説」
ゴールデンウィークも明けると自然と打ち解けるはずなのに、総務は
「あのあんまり触らないでください」
首を預けて、見せつける様にベタベタする。事務作業の邪魔だ。
「えー、ニシちゃん可愛いのになー、いっぱい触っちゃる」
肩をこちょこちょするだけで集まる殺意。
こんなはずでは無い、ここでは仲良くしたい。
「で、今日は?」
真面目に戻るのはすぐなので、振り幅に困る。玉造さんが座っていた椅子から立ち上がった。
「今回は西側の町内会会長さんのご協力を
「あのジジイまたかよ」
毒づいた桃谷先輩に少し引いたが、顔は笑っている。
満面の笑みに殺意。不気味だ。
それにしても恋人伝説とはなんだ?
「アイツ去年も学園祭やると風紀が乱れるー、とか。男子学生との
殺伐さが急に消えた。なんだ、これは、
「ということで明日、ニシちゃんと私で交渉に行ってきます」
刺すような視線だけでは無く、何かを欲する欲も見えた。マジで元カノ子なのか。嫌だな、この桃谷先輩の横にいるだけでもストレスだ。
「何か不安かい? 大丈夫、私が守ってあげる」
それが心配なんです。
門を出て大通りを闊歩する桃谷先輩に
「少しだけスカート折ってね。頭は少し下げて結構ニシちゃん血色いいから、自信なさげにした方がいいかも」
何だ。この親切なレクチャーは。
「アイツ、エロジジイだから私たちの登場を待っているのよ。交渉に行ったのが強気のはっきり物をいう子でね。それはそれでいいんだけど」
五分も歩いていないだろうか。大きな門の前に立った。
桃谷先輩がインターフォンを押した。
「はい」
しゃがれた低い声がした。
「
まともな神経持ってたらこんなとこでベタベタしないわな。桃谷先輩への認識を改めた。
「許さんぞ」
「今年は警備を増やして、おぉ?」
上から下、下から上、右に左に、左に右。
「すみません。彼女、まだ新入りで慣れていなくて」
視線が逸れた。慌てて取り繕うとするが、隠そうとすると余計に視線はぶれる。
「彼女にも上級生が教えながらこの辺を回ってもらおうと予定しています」
「今日のところは帰ってくれ、気分が悪い」
「突然申し訳ございませんでした。それではまた後ほど」
「もう来るな」
本当にぴしゃんっと閉まった。
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