ただいま高校と約束した君へ

第27話 ただいま高校

 年度が明け、私は高校一年生になった。

 年末から年始にかけて私は秘密トレーニングを積んだ。

 井上のセフレ監修の筋トレメニューに勤しんで、毎日自分の体をいじめた。殺気がこもっていたのか、誰も私に餅を勧めなかった。


 トレーニングの甲斐あって、年始に会った時に「加奈は相変わらず可愛いね」と、言われた。調子に乗った私は三キロマイナスになったのに残った餅を食べて、三キロマイナスが二キロマイナスになった。


 年度初め、穂信が学校に帰って来た。


「久しぶりの学校だ!」

 ここまで車だったのは通学途中に男性と会わないための予防策だ。


「いやぁ、同級生が卒業した後の高校は少し寂しいな、ハハ」


「あと一年留年したら私と同級生です」


「恋人の留年を願うな」

 ぱしりと叩かれた。


「まずは保健室に行こうよ」

 大勢で歩いているので、生徒がゴソゴソ話している。


「あの」


「こら、今はこちらに来るな」

 学年主任、穂信のお母様、学校カウンセラー、私、真鍋先生、穂信で歩いているので、こっち来るなオーラは出している。


 それでも寄ってくるとは強者だな。と、思ったのも束の間。


「もしかして仁科様と奥のお方はあのバカップルでしょうか?」

 学年章を見ると中等部二年だった。二つ下か。真鍋先生が吹いた。


「どうしたんですか? 真鍋先生」


「いや、何も」

 他の子もわらわらと寄ってくる。

 生背中、穂信は私の物宣言、外部の男の子との大捕物など。様々な質問を投げかけられるうちに苦笑いの穂信と腹筋が怪しい真鍋先生。


「後からにしてください。今はダメです」

 学年主任の先生が叱るとごめんなさいと去って行った。保健室にてベッドに座る。穂信を先生たちが遠巻きに囲む。


「加奈は隣にいて」

 そう言って、穂信は隣に座らせ肩に頭を寄せて、ニコニコ笑いながら、甘い声で話し始めた。

「ちょっと疲れたね、加奈」

 待って、何か大人たちに納得されたよ、今。


「やめろ。保健室はそういうところではない」


「今のところはプラトニックなので、何も無いよね。加奈」


「手は大丈夫なの?」


「触ってみる?」


「いや、みんないるし」


「触ってくれないの?」


「だからそういうのは家に帰ってから」


「そうやってごまかしてー」

 教頭先生がごほんと咳払いをした。


から分かりました。早速、打ち合わせをしましょう。体育科と社会科は男性の先生の担当でしたが、女性の先生に変更します。急な変更では無く、他のクラスも担当する回転方式で授業をするという体制をとります」


「ありがとうございます。ご配慮はいりょ感謝します」

 手を絡めてなかったら合格でした。


「それでは桃谷さん行きましょう」


「加奈も一緒に行こ!」


「ダメです」


「この子賢いのでついていけます」


「ダメです」


「付き合っているのに離れ離れなんて」


「ダメです」


「わかりました。また放課後ね」

 難題はまだ残ってる。本来ならば穂信は卒業しているはずなのだ。


 穂信を慕っていたのは高等部の生徒だ。ということは同学年または一つ下にその群はいる。


「いやぁ、疲れた疲れた」

 放課後、朝と同じメンバーで集まった。

「もうちょっと体力つけないとまずいかも」


「何か他に困ったことはない?」

 心理士の先生に聞かれて穂信は。


「一日ではちょっと分からないかな」

 こういう大集合がどんどん減っていき最終的に学年主任と私たち二人になった。


「今日から私はいない。何かあったらこの端末で電話しなさい。すぐに行くから」


「分かりました。ありがとうございます」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る