とうとうやってきた文化祭本番

第16話 文化祭の出店決め

 文化祭は十月末にということで先生と確認をした。土日開催だそうだ。ちょうど一か月。桃谷先輩にはプレゼントは渡さなかったし、用意もしなかった。


「先生から不純異性交流をしている人を見つけたら、すぐに止めるようにって通達が来てます。なので、念入りにチェックをするように」

 桃谷先輩がニコニコ笑いながら説明をしている。お母さんの言った心、ねぇ。


 もう終わった関係に今さら心とか言われてもな。喧嘩けんかした相手には先生の前で謝っただけで、直接会っていない。パニックになって叩いたからそもそも誰に謝罪すればいいのか分からない。


 あと、少しの辛抱しんぼうだ。あと少しでこれも終わる。


「じゃ、総務としてはここで仕事は終わり。皆、各自他の係へ移るように、私は町内会の説明会に行くから、この仁科さんを連れて行く。みんな達者たっしゃでな」


 学校を出ても前を歩く桃谷先輩は無言だった。坂を登って道を曲がって、あれこの先にあるのは公園だ。町内会の会場じゃない。


 桃谷先輩は公園のベンチに座った。左横に来いと椅子を叩いた。座ると涼しい風が通り抜けた。ちょうど陰で日差しも柔らかかった。



「喧嘩したんでしょ。聞いた。なぐったって」


「はい」


「ごめんね、私が余計な事したから」


「私、私は他の先輩に同じような事してるなら、自分が汚れてしまったような気がして、怖かった。ごめんなさい、もし先輩が今の私に肉体関係を求めているなら、もうお付き合いは出来ません」


「その肉体関係無しだったら、そばに置いてくれる? どこにもいかない?」

 本当に私の事、好きなんだ。その悲しく可哀想な人の心を私は奪ったんだ。少し気分が昂揚こうようした。


「先輩がちゃんと言う事聞いてくれたら、いいですよ」


「私の本カノ子になってください」


「穂信、それは彼女って言うんですよ」

 お母さん心を見たよ。


 その後、確かに町内会周りはしたし、あのエロジジイにも挨拶あいさつに行った。

 みなさん親切で「今しかないもんね」とか「桃ちゃんも委員会最後でしょ」と、口を揃えて言っていた。


 それぞれにいやぁとか、ありがとうございます、お世話になりました。と、言い。いい関係を築けているところを見るとこれも人徳じんとくだなと思えた。


 ちゃんと学内説明会をしたのに、下痢げりがひどくて店の申請書出せなかった。生理が重くて書けなかった。隣のクラスの子が自殺するのを止めるために申請書出せなかった仕方ないよね。


 場所の移動やどうしても無理な場合はノーを出す。


「ニシちゃんは軽いだろうけど、こちとら地獄だよ。出るもんは出るし、ずっと腰は痛いし、すごいよ。試しにトイレまで見に来る?」


「行きません。で、希望は?」


「調理部でパンケーキ食べるの」


「作るではなく?」


「化学の森センが前に化学室の天井焦がした見て、中等部の子がビビってパンケーキ作らないって言うから、調理部のみんなでパンケーキ食べよって」


「却下です」

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