第17話 文化祭一日目
「疲れた顔をしているね」
まさか申請しなかったクラスメイトの理由がハムスターで掃除機の中に吸い込まれる位置にいて、管の中で詰まっていたとは思わなかった。
ハムスターは無事救助されたようだ。
「あと一ヶ月もしないうちに終わりだ。来年はどうする」
「くじ引き次第ですね」
「私のいなくなった文化祭実行委員会にどれほど人が残るかな」
「はいはい」
「冗談だって、怒らないでよ」
消防署への確認と町内会への説明、先生との打ち合わせや出店場所の調整。そうこうしているうちに文化祭はやってきた。体育館の企画は他の人がやっていて、私と穂信。他数人は別れて警備に回っている。
出店は出せないのに怪しいアクセサリーを売る占い部、ブルーシートを広げてコーラ片手に寝る昼寝部、色々な出店の麺を購入し味を見てどこの会社の麺か当てる麺類同好会。
全て認可された部では無い。早々に
昼ごはん無しで夕方まで歩き回った。まだ一日目だ。明日はもっと憂鬱だ。
代々逢女は一日目は劇や出店を出すのだが、ここでは二日目に体育祭もやってしまう。
汗をかいた状態でキャンプファイヤーをするのは嫌なので、みんな
確か無理やり連れて来られた男が狙い目だと前の席だった井上が言っていたな。
「何出るの?」
「借り物競争とリレーです」
「足早いの?」
「悪魔のくじ引きです」
隣ではははと、笑われた。放置しておこう。
「穂信は?」
「私も借り物で、騎馬戦も出るかな」
「…いたずらされないように気をつけてくださいね」
「何、今の空白」
「その原因は先輩が一番ご存知では?」
「あー、明日が
憂鬱になって反省するといい、どれだけの女の子を狂わせたか理解すればいい。
「お腹空いたなー」
「高等部二年の闇唐揚げと高等部一年の魅惑のペペロンチーノが余っているそうですね」
「なんで知ってんの?」
「え、公式の掲示板じゃないんですか?」
画面の逢女文化祭のまわり方掲示板を見せた。
「こんなの知らないよ。すごいな、誰が更新してんだか。で、なんで残ってるの?」
「闇唐揚げは塩胡椒を買い忘れて味がないのにエビの足とか、ナッツが入っていて値段が高い一カップ五百円三個入り」
「ペペロンチーノはニンニクか!」
「大赤字みたいです」
「私、ペペロンチーノね」
「え、ニンニク?」
「男なんていらないわよ。
「じゃ、私も便乗します。男避けです」
「実行委員会の子? ありがとう来てくれて、陽キャがね。次の日体育祭だよスタミナつけないとみんな頑張れないからニンニク使おうよ。歯を磨けばどうにかなるって」
ちゃんと陽キャが言ったところはいかにもという口調で話したのが面白い。
「学級委員が決まったことは仕方ないです。実証実験をしましょうって言って昨日試作品ペペロンチーノを陽キャに放り込んだの。明日が楽しみだわ」
ペペロンチーノは美味しかった。
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