第19話 天罰
「頑張ったじゃん」
「第一走者じゃなくて良かったです。真剣に」
「高窓も悪気はないからさ」
「あれで悪気あるなら相当曲がってますよ」
「確かに。さて昼休み前の騎馬戦に行ってくるよ。ご飯は離れ離れかな」
特に打ち合わせをしていなかった。穂信は兄が来ているけど、一緒にご飯は食べたく無いらしく。食堂で食べると言っていた。
「応援してます。お気の毒に」
「へ、何が?」
最近よく前の席だった井上と話す。
穂信と付き合い始めたら素直に良かったじゃんと言われ、最近うちも彼氏出来たけど生徒に手を出す塾講師ってどうよという話もしている。
かなりの情報通で、そういえばと彼女は口にした。
「あんたのとこの彼女さ、騎馬戦出るじゃん。今までの元カノ子が一挙して参加するらしいよ。いやぁ、無事で済むかね。彼女としてどうよ」
「一回、
それでは目の前の現実に戻ろう。
穂信の騎馬に集まる十個くらいの騎馬。
「高等部騎馬戦、なんとほとんどの騎馬が試合放棄か! 台風の目が見えた。もみくちゃだ。あ、まぁこれは仕方ないか。天罰がくだったということで頑張ってね。トイレ行ってくるわ」
実況からも見捨てられて可哀想に。
「分かった! 分かったから、とりあえず服はまくり上げないで落ち着いて騎馬戦だよ! 騎馬戦なんだよ! 帽子取ろうよ。騎馬解かないで、歩いているだけだよ。何もしてないよ」
笛が鳴った高等部騎馬戦試合放棄につき、失格。
競技に出た女の子たちははつらつとし、他の女の子と肩を組んで席に戻って行った。本カノ子の私に来ないのはありがたい。
元カノ子たちもいいようにされていたことに気づいたのだろう。
場に残されたのは土まみれの穂信。
触ったりもみくちゃにしたりされた穂信は震えながら私を呼んだが、無視した。
「え、まだやってたの? 桃谷穂信さー、ちゃんと女の子の管理してください。あっちこっちで彼女作ってさ。なんか噂で聞いたけど本カノ子出来たとか、大事にしてあげなよ。そのうち今みたいに恨みの
「加奈、こっちこっち」
お母さんとお姉ちゃんがブルーシート敷いて待っていた。じゃあ、私行くね。
「お友達もおいでよ」
お姉ちゃんファインプレー。
「でも私」
「いいから。それとも親御さんいた?」
「今日は来てないので」
穂信はお兄さんの存在を今消した。
「朝、ちょっとだけ加奈も手伝ってくれたの」
「本当ですか? 食べたいなー」
「お名前は?」
穂信は正座して、自己紹介をした。
「高等部二年の桃谷穂信と申します。今、加奈さんとお付き合いをさせていただいています」
お姉ちゃんのお箸が落ちた。
「え、彼女って、え?」
「いつくらいから?」
お母さんの表情と口調は優しい。
「その一回失敗しちゃって、ちゃんとはここ一ヶ月ってところです」
「そう、良かったわね加奈。穂信さん。加奈をよろしくお願いします」
「加奈アンタ、アンタ」
「はい、大切にします」
「加奈って両刀なの?」
違うそうじゃない。
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