第21話 穂信は私の物
「全員黙れ!」
「おっとこれはどうした仁科がキレた」
「抱きしめたとかどうとか私は記憶にないし、アンタのことなんてどうでもいい」
「バッサリいきました」
「でも僕は諦めない」
「迷惑だからもう近寄らないで、気持ち悪い、うざい。それに私はこの桃谷穂信の彼女です。その辺の有象無象の女には渡しません」
「皆さん、拍手や指笛はいいのですが、午後の競技まであと十分です。解散でーす。ご飯食べましょう」
放送席に市場とお姉ちゃんを捨ててきた。高窓先輩は扱いに困っていたが、人の会話を実況した罰だ。
「なんで機嫌いいんですか?」
「初めてだから、あんな大勢の前で独占宣言されるの。私は前にしたけど、あの人数は初めてだから気分いいなって」
そういうことか。なるほど、
「おかえりなさい」
「お母様、加奈さんをもらってもいいでしょうか?」
「まだ中学生だから、少なくとも一年待ってもらえる?」
放送席の方から高窓先輩の声で中等部の借り物競争の呼び出しがかかった。
「お弁当食べて待ってるね」
「私の分残しててくださいね」
配られた紙はグラウンドに出るまで開かないようにと言われていた。
「スタートしてください」
余計な解説が無かったのは昼休みの一件でしぼられたのだろうか。
「どうしても手に入れたいもの」
困った。多分、心は手に入っている。
でもこれを他の人にして、後で知られたら間違いなく今後の関係にヒビが入る。
「お母さん」
「どうしたの?」
「何か大きい布無い?」
「この風呂敷くらいかしら」
「充分、穂信行くよ」
「しめしめ、一番欲しいものかね。残念、私の心は加奈の物だよ」
「穂信、下着着てる?」
「運動してる時はキャミくらいだよ」
「ブラじゃなくて良かった」
「へ?」
「いい穂信、胸が隠れるくらいにちゃんと風呂敷押さえててね」
「え、何する気、え?」
「それでは皆さん、結果発表をお願いします。参加は五組だけです。あんまり多いとぐちゃぐちゃになるので、抽選で決まりました。それでは」
今一番食べたいものは稲荷ですね。美味しいよね。
大好きなものはバスケットボールです。スポーツマンかな?
尊敬する人にお父さん。嬉しいですね。
好きな先生は生物の日野先生。人気だな。
「それでアンタたちの引いたのはどれどれ? ん? 手に入れたいもの。なんで桃谷連れて来たの。心は手に入ってるよね」
ちゃんと押さえててね。
そう言って体操服の後ろをまくりあげた。聞こえる悲鳴、ざわめくグラウンド、唖然とする高窓先輩、バタバタ暴れる穂信。
「生はダメ、生の背中はダメだって、キャミもめくらないで!」
「私は桃谷先輩の生の背中を触る権利をもらいたいです」
あるから、もうあるから。
ばたばたとバタバタ暴れる穂信の背中を元に戻した。
「なんというか、これほどまでに、馬鹿だと、少子化問題も、解決しそうです。桃谷さん、高等部の借り物競争ですが、一番欲しいものと、一番好きなものは、除いておきますね」
この後、穂信は信頼出来る家族を取った。私のお母さんを連れて行き、高窓先輩に馬鹿と言われる羽目になる。
「アンタら徹頭徹尾、しっかり馬鹿だな! このバカップル共め!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます