第5話 文化祭実行委員の親睦会

「みんな! 夏休みはうちにおいでよ!」

 沸く元カノ子たち、水着とかスカートとか色々な話を互いにしている。こんなに元カノ子がたくさんいるのにお互いは仲がいい。


「ニシちゃんも、来るよね。気が進まない?」


「いえ、別に」

 取る資料があったので、顔をらすようになった。


「みんな仲がいいでしょ。交際を解消する時に言うんだ。仲良くしないと追放するって」

 恐怖政治だと中学生ながら思った。ここは桃谷先輩の箱庭だ。気分はよくない。

 みんなに敵視されていて、一刻も早く帰りたい。


 誘われて、入念に準備された親睦会に参加を決定させられ、中々私が落ちないと桃谷先輩は文句を言いながら、その日は来た。しつこいので、隙を見て、こういう抵抗しか出来なかった。

「私、桃谷先輩に興味ありません」


「へぇ、そんな事言っちゃうんだ。絶対落とすよ。親睦会しんぼくかいだから強制参加ね」

 ということで七月末。何人いるんだ、これ。


「おはよー、今日から四日間。文化祭実行委員会の親睦会やるよ! 事前に資料配ったけど、その通りに行くよ。みんなバスに乗って」

 あの内容のスカスカの資料。


 みんなで海ざぱーん、バーベキューじゅーじゅー、キャンプファイヤーばちばち、恋バナわくわく。


 A4できれいに書かれた内容的には雑な予定表。


「おほん、今日は上位メンバーと研究生のみんなとの交流会です。よく遊びよく学びましょう」

 ゴソゴソ話す委員会のメンバー、クラスの知った顔もいたけど、全然話してこない。

 ハズレの委員会だ。こんなに殺伐としているのに先生も介入しないんだ。


 なんだ、その上位メンバーと研究生って。


「ということで、中等部ながら上位メンバーに入ったニシちゃんとは仲良くしてあげてね」


 えぇ、あの子が?

 なんで、そんなに可愛くない。


「私、帰ります」


「え。ちょ」

 バスに乗る前で良かった。こんなに空気悪いなら帰って委員会も辞める。


 内申が下がってもこんな針のむしろよりかはマシだ。


「待って帰らないで!」


「お世話になりました。委員会も辞めます。悪いことばかりでした。二度と関わらないでください」

 何か聞こえたけど、私は振り返らず帰った。


 私が親睦会から戻った頃にお姉ちゃんは彼氏と旅行に行った。お父さんの咳払いは増えた。けれどそんなお父さんを連れてお母さんはお父さんと一緒に一泊旅行に旅立った。



 暇だな。行けば良かったかな親睦会。でも、あんなところで活動するってどうかしてる。



 あれから何度も着信があった。知らない番号、留守電は設定していないのでそういうストレスは無い。


 呼び鈴が鳴った。荷物かな、そういえば漫画頼んでたな。

 そう思って扉を開けた。ガッという衝撃があった。抱きつかれた何かに。声を出そうとしたら、それに「ごめんね」って、言われた。


「私、間違えた。こうやって気を引いたらこっちみてくれるって思った。今まではみんなちょっと気を引いたら告白とか交際宣言しなくても相手してくれた」


「帰ってください。桃谷先輩」

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