第32話 好きな人との日の出
「中に入れるのが怖くなくなってからにしよう。初めては大事にしないとね。それで加奈、何かトレーニングでもしたのかな?」
したあとにお風呂によろよろで入ってから、ソファに座ると体を預けて少し上目遣いで尋ねられた。
「穂信に会えない間、トレーニングを」
「それでスタミナが、かぁ」
「穂信は?」
「そりゃ、場数が違うしね」
気まずそうに笑った。
「アイスが食べたいです」
「いいよ! 何味がいい?」
「一本でいいです。間接キスでも問題ありませんよね」
「お主、そういうことは平気なくせに」
「何ですか?」
「なんでもない。カップアイス半分こね」
穂信はアイスを頬張りながら「良かった?」と。
恥ずかしくてクッションを穂信に押し付けた。
「悔しいですけど」
今の顔を見られたくなかった。
「ふーん? そう」
クッションをのけて、いたずらっぽく笑われた。
そもそも何回目がとういう基準かも分からない。
男の人は精液が出ることが一回戦らしいが女の子は何を何回したら終わりなのか。
大体四時間後に寝てしまって終わりなので、頭が真っ白になったら一回戦なのかもしれない。
寝る前にして、そのまま寝て起きたら汗や液体でドロドロ。シャワーを浴びて、朝は起きて、ご飯を作った。朝から幸せ度数下げたくないので、ご飯は私と保存されていたものを使った。
何度もゲームをして、漫画を読んで、甘いカフェオレを飲んで、寝る前に体をしっかり愛し合った。疲れるまで続けて寝て、ゲームして、それがゴールデンウィークの五月頭の土曜の夜になった。
「今日でここでの夜も終わりか、寂しいな」
荷物を家から持ってこなかったので、日曜の昼には家に帰らないといけないことを伝えた。
「えー、登校日一緒に行こうよ」
「ごめんなさい」
「じゃ、私も加奈の家に行く」
「でも、お父さん」
「だいぶトレーニングしたよ」
「でも、駅とか」
「あ、あぁ」
「明日はお昼までで終わりです」
「せめて明日の夜までいようよ、ダメ?」
「可愛くお願いされてもダメなものはダメです」
「そうだ。明日の朝さ、チュー公園行かない? あそこなら誰も来ないし、何も変なことないよ! 会社員も日曜日は休むでしょ」
「勤勉な日本人は日本の会社にいる限りは休日でも出勤します。でもなんで?」
「学校は慣れたとはいえ、町だと男の人はたくさんいるし、その怖くなった時に逃げる場所ないっていうか」
「でも、ここから遠いのでは?」
「うーん、そっか。そうだよな、でも朝に出たら間に合うよ」
「朝って」
「四時くらいに出たら間に合うよ。往復一時間半。日の出は見ることができるね」
トレーニング計画をくれた井上、四時間もそういうことして体力作りの基盤を作ってくれた穂信ありがとう。
穂信はきっと疲れるけど、私は六キロまでは余裕だ。
最初は意気揚々と歩いていた穂信はちょっと休憩が出てきた。穂信もよく頑張っていたので、あと十分ごろで着く。
「着きましたよ」
「あぁ、ほんと、ほんと、だ」
「帰りはタクシーで帰りますか?」
「いや、お金持ってない」
特別な人との特別な日の出はすぐに訪れた。
「きれいだね」
「うん」
「付き合った人との日の出は初めてだな」
「そういうの増えていきますね」
少し触れるくらいのキスをした。穂信は舌を入れようとしたけど、押し止めた。
「そういうのは家の中で」
「はいはい、帰ろうね」
ムッとした穂信のやる気は残り三十分のところで力尽きた。
「もうタクシー」
「お金持ってないでしょ? 行きますよ」
家に着いたのが八時だった。危なかった。電車だったら、ラッシュだった。人が多い道だったかと思うと恐ろしい。
交代でシャワーに入り、私が出た時に朝ご飯は出来ていた。
卵の殻入りの崩れた目玉焼きもどきと、元々黒かったかもしれないトースト的な何か、洗った様子のないサニーレタスが丸ごとどーん。
「慣れました」
「何を?」
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