41話 おっさんと119係 7
久しぶりに自分で開店の準備をし終わり、一休みしようとしているところに、待ってましたとばかりに、缶コーヒーを片手に小川刑事が現れた。
「おう、今日はやけに楽しそうじゃ無いか、いい事でもあったか」
そう聞いてくる小川刑事。
「いつも通りに開店準備してるだけですよ。それよりこんな早い時間になんか用ですか?」
「別に用事があるわけじゃないんだが、お前の昔から調べたんだがどうも、今のお前と印象が全く合わなくてな、本人に何があったか聞きたくなったわけさ」
「調べた通りの私は何処にでもいる一般的な引きこもりでした」
「引きこもりの最中に占いにハマり勉強したんですよ。四柱推命・姓名判断・手相・顔相・タロットなど様々な占いを学びました」
「誰先生にかな習ったのか?」
「いえ、全て独学で学びました。少し離れた街まで毎週金曜日と土曜日に無料でお客様を占い勉強しました」
「最初は全然過去のことや悩み事が当たらず良く怒られてましたよ。ははは」
「その内悩み事は聞き出すもの、過去は自分からしゃべってもらう事だと気づき、それからは良くアタル占い師って有名になりました」
「それで自信がついて東京に出て来て占い師をやってるわけか」
と小川刑事はなんとなく胡散臭い顔で私に聞いて来た。
「それもありますが、調べて知っているとは思いますが、両親が事故で東京に出て来る2ヶ月前に亡くなったのも理由のひとつですね」
「今までは引きこもりで親のスネかじってれば良かったですが、ひとりで何かして生きて行くには私には占い師しか選択がありませんでした」
「東京で占い師の仕事場を探していたらここが空いていたわけです」
「そうか、やはり両親が事故死した事がお前を変えた原因か…悪い事を聞いてしまったな」
「話す機会もありませんでしたから、自分の力で生きるって大変ですね。愛想笑いや、おべっかも使うし大変です」
「ただ、この仕事が私には合っているらしく、楽しいんですよ。お客様にありがとうと言われる事が」
「俺には愛想笑いもおべっかも使って無いけどな」
「小川刑事はお客様ではありませんからね、余分な体力や気力は使いたくありませんので」
頂いた缶コーヒーの蓋を開けて、いつものブラックコーヒーを一口飲んで
「菅原の件で私は裁判所に証人とかで行かないといけませんかね?」
と小川刑事に尋ねてみた。
「ああ、今回の件には極力お前を絡ますなと、警察庁の賀茂警視や上司にも言われてるから、そのへんは心配するな」
「あら、こんなところで私の悪口でも言ってるのかしら?名前が聞こえたんだけど」
サーチにも反応なく私の後ろに賀茂警視が立っている。さすが陰陽道の使い手だけのことはある。
「わ!びっくりさせないで下さいよ。賀茂さん」と驚いたフリはしておこう。
「で?何の話ししてたのかしら貴方達」
「私が何故占い師をやってるかを小川刑事に聞かれたので、いきさつを話していたところです」
「あら、私も聞きたかったわ。その話しもう一度いいかしら」
私は小川刑事に話した内容をそのまま、一語一句たがえずに話した。
「小川刑事もそこまで調べてだのね。私の部下に欲しいくらいだわ。そんな辛いことがあって、今ここでお仕事してるのね」
と世間話を少ししたら賀茂さんが、
「それでは、今日の本題にはいります。早速ですがアタルさんのブースに結界をはらせていただきます」
といいながら手には式神らしき物を持ち、何やら呪文を唱えると式神たちがブースの四方に飛び散り結界を張ったことが私にはサーチで分かった。
小川刑事は何か紙が中に浮いているマジックだとでも思っている様な顔をしている。
「さあ、これで貴方は私から逃げられなくなりました。本当の事を話していただけますか?」
「何の話しをすれば良いのでしょうか」
「何ですか結界って訳分かりません。営業妨害で小川刑事に捕まえてもらいますよ」
勝手なことをされた私はカチンと来てやらかすことなる。
「本当に結界とやらが張ってあるか確かめてみますね、小川刑事いつもの場所に行っていっぷくしますか」
と小川刑事の手を取り結界を越え
た。
八枚の式神が私達が通ると弾け飛び少し風が吹いた。
「嘘でしょ!今世紀最強の陰陽道の使い手の私の結界をこんな簡単に弾き飛ばすなんて…」
「やっぱり貴方様は神の使いであらせられる12使徒ではありませんか?」
『やらかした!キャサリン助けて』
『あら、何しでかしてるのかしら?
直樹さんは』
「アタルさん!この光り輝く緒方はどなた様ですか!」
なんと賀茂さんにはキャサリンが見える様だ。
『あら!貴方には私のこの女性の姿が見えているのね』
『貴方からも微弱ながら光の力を感じるわね…でも12柱では無いわね。面白いわこの子』
「え?頭の中に女性の言葉がこだましてます」
さすがの賀茂さんも慌てる。
そのまま、キャサリンは賀茂さんの上に飛んでった。
『貴方は12柱ではありませんが、人間の進化はたまにびっくりする事がおこりますね』
『貴方の様に私の姿が見える人間が1,000年にひとり程生まれてくるのですが、貴方はそれとも違う進化をした人間ですね』
『ノクターナル級の検知出来なかった事や、貴方みたいな突然変異種の検知が出来ていないのは、やはりダークマターの力がこの星で強くなっているわね』
『こんばんは!お嬢さん、私はこの星に12柱を使わした者です』
『彼は確かに12柱の末裔で間違い無いわ』
『貴方は私の使わした12柱の存在を知る人間で、私の姿が見えるなら彼は貴方の敵ではありません』
「あなた様は12柱を授けられし神でございますか。お姿拝見出来て光栄です」
「もちろん私達の仕事は12柱の守りでございます、敵などとは思っておりません」
『詳しくはまた、貴方に会いに今夜いきましょう。貴方は家で待って居なさい。自宅など私には貴方の気配だけでたどりつけます。心配はいりません』
「御意!」とだけ言うと賀茂さんは私に深々と頭を下げ帰路についた。
後に残された小川刑事は呆気にとらえて動けない。
『直樹君、小川刑事と手を繋いでみてくれる』
私はキャサリンに言われた通り、小川刑事の手をった。
『これで貴方にも私の姿が見えるでしょう』
「金髪が裸で中に浮いている!」
「小川刑事声がでかいって」
『大丈夫よ。ちゃんと結界を張ってあるから』
『貴方も菅原の事をさっき直樹君と手を繋いだ時に思い出したでしょう』
「ああ思い出したよ、奴が大きな熊の様な物体の黒い影に変わり、奴に向かってアタルがライフルの様な物で何発か撃ち抜いたはずだが、私が記憶しているのは、手足を拘束された菅原だった」
「でアタルとあんたは何者だ?賀茂警視は神とか12柱がどうのこうの言ってだが」
『貴方もアタルの敵では無さそうなのでお話しいたします』
キャサリンは話し出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます