34話 おっさんと119係 4

夜の六本木、占いの館にある、

『未来鑑定アタル』

もそこそこお客様にも来店して頂ける店にはなって来た。


口コミだけで一応毎日2〜3人は来て頂けて嬉しい限りです。


『午前5時そろそろ店閉めるか』

と考えていると、缶コーヒーを手に小川刑事が現れた。


「何か私に事情聴取にでもこられたんでしょう?」


「まぁ、占い師アタルにも一応事情聴取しないとなあ、事件解決の当事者だからな」


「菅原の一件が、やっとひと段落した何処さ、奴の犯した事件の数が多すぎて、しかも119案件ばかりじゃ無いから大変さ」 


「広域犯罪だから余計面倒だぜ」


「明日、いつも占いの仕事始める時間でいいから、六本木所まで来てくれるか」


「明日ですね、承知しました。小川刑事を訪ねて行けばいいですか?」


「そうだ俺を訪ねて来てくれ、そこに今回の事件の捜査本部がある」


そういいながら手にした缶コーヒーを私に投げ出来た。


「いただきます。ありがとうございます」

缶コーヒーを受け取り一口飲んでそう答えた。


小川刑事は心筋梗塞を治して以来、私に会いに来るときは、必ずジヤージアのブラックコーヒー缶を持って来ては、たわいも無い話しをして小一時間して帰って行く。


一生私に会う時はこれを持って来るって言ってた気がする。重い。


『キャサリン!小川刑事ってどの程度記憶改変してあるのかなぁ』


『街や電柱、車なんかが壊れた事や、菅原がノクターナル級ダークマターに変幻した事、貴方が小川刑事を治癒した事などは改変してあるわ』


『それで貴方を助ける為に小川刑事は菅原に投げ飛ばされて、その辺りの記憶が曖昧に操作してある』


『菅原の記憶からもダークマターのことは改変してあるから安心して』


『菅原を取り押えて占いで彼の犯罪歴をいい当てた事にしてあるわ』


『ただ、何かの拍子で本当の事を小川刑事は思い出す可能性はあるの』


『あの小川刑事感が鋭いから気をつけてね』


なるほどそう言う内容に改変してあるんだ。ありがとうキャサリン。


次の日レストランの営業終了後、名古屋から六本木に『転移』して、歩いて六本木警察署の受付に行き、小川刑事に事情聴取のアポがある事を伝える。


しばらく待合室の中で待っていると、若い刑事が現れついて来るように言われたので、後をついて行った。


連れてこられたのは、初めて入る取り調べ室。


思ったよりも狭い、それが印象的だった。


部屋には小川刑事の他、記録係やもう1人検察庁から来たと言うキャリア組の女性警視がいた。


何があるかわからないので、記録係と女性を『鑑定』しておいた。


記録係はこの六本木所の警察官でこれと言った問題点はない。

女性を『鑑定』すると

名前 賀茂史子

年齢 31歳

35歳の同じ警察庁所属の夫と8歳の娘と3人暮らし

住所 東京都杉並区〇〇

仕事 日本古式文化対策室 陰陽課

   課長 警察庁 警視

備考 賀茂家の末裔に当たる家の次女 


『何で小川刑事この人を事情聴取に読んだんだろう…』


「田中アタル君、今日は来てくれてありがとう」

まず小川刑事が挨拶をして来た。


「こちらの女性はオブザーバーとし

て警察庁から来ていただいた賀茂さんだ」


「賀茂です」手短な挨拶だった。


「じゃあ、事件当時の話しを聞こうと」

私はキャサリンの書いてくれたシナリオ通りに話しをすすめた、事件内容と周りにいた人々とのすり合わせと一致しているはすだ。


「菅原が君に襲い掛かり、それを助ける為に俺が間に入り、怒り狂う菅原の右手で私は薙ぎ倒され、頭を打ち少しもうろうとしていたと言う事だね」


「はい、その後体制を崩した菅原を取り押えて、私の服で菅原の両手両足を縛り、小川刑事の介抱に向かいました」


「ふむ、戦いを見ていた観衆達と食い違いは無いな」


「一ついいかしら?」と賀茂さんがたずねてきた。


「はい、何かありますか?」


「菅原の体から、闇の力と反対の光の力を微弱ながら私には感じ取れました」


「貴方は邪と化した菅原を光の癒やしの力で制圧し、拘束出来たのではありませんか?」


「私達、陰陽道では神の使いが世界に12柱いらっしゃるとの言い伝えがあります」


「貴方はもしや12柱の1人ではありませんか?『光の癒やしの力を使う物、神の使徒なり』とこの書物に書いてあります」

古い文献を賀茂さんは私に見せた。


「いえ、確かに菅原と戦っている最中周りが光輝いていましたが、私の力ではありません」


「まぁ、今日はこのくらいにしましょう。貴方の体やDNA鑑定をこの後いろいろ教えていただきます」


DNA鑑定なんてまだこの時代には無い技術のはずだが、あっても精度が低いだろうから、別に構わないかな。


「分かりました。身体検査受けます」


すぐに警察病院に運ばれて、血液、身体検査、DNA鑑定などを実施された。


キャサリンいわく、本物の貴方の体だから異常が出るはずがない。


また、DNA鑑定も結果は同じだと言

う。


今の地球の科学技術で解明出来るはずはないといい切るキャサリン。


「検査終了です。ご協力ありがとうございました田中アタルさん」

と賀茂さんは挨拶するとすぐに検査室に入って行った。


「それでは今日は失礼して帰ります」


私は警察病院をでてサーチで誰かに監視されていないか確認したら、6〜7名がタブレットに赤く表示される。

『転移』したいが電車で帰りますか。

私は駅に向かって歩く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る