第16話 おっさんと占い 2
「ご来店ありがとうございます!どうぞとりあえずおかけ下さい」
テーブルの前の丸椅子に女性を座らせた。
「おっしゃる通り、あなたの未来がどうなるか鑑定しますよ」
と女性に伝えた。20歳くらいの聖子ちゃんカットをした可愛いらしい子だ。
「記念すべき初めてのお客様なので、どんな事でも5,000円で占います!」
女性は話しだした。
「ありがとうございます。私アイドルを目指していて頑張ってるんです」
「ダンスや歌のレッスンだと言われお金もたくさん使いました」
「でも一曲も売れずさすがに23歳ではもう無理かなぁって思って、引退して田舎に帰るつもりだったんです」
「そしたら、占いの館があって未来鑑定って見えたんで、最後に占いしてもらおうと思ったんです」
女性は一気に話しをした。
「そうだったんですね。苦労されたんですね。分かりました、今後アイドルとして成功するかダメなのか、未来鑑定をさせていただきます。」
「お願いします。生年月日や名前なんか必要ですか?」
と女性が聞いてきた。
「何も必要ありません。あなた自身を鑑定します」
『鑑定』
鑑定結果
名前 安藤順子
芸名 高瀬恭子
出身 長野県飯田市〇〇
年齢 23歳
称号 不遇のアイドル
詳細 今まで彼女にあったイメージの曲に出会えていない。
彼女のイメージ曲はオーディションで歌った『初恋』この曲を歌うことでレコード大大賞やMHKの年末の白黒歌合戦にも参加できる。
『ああ、この子が不遇のアイドル瀬高恭子か』
「鑑定が終わりました、まずあなたの本名は安藤順子さん23歳、出身は長野県飯田市ですね」
「えっ!何も言って無いのに名前と出身地まで分かっちゃうんですか!すごい」
「あなたは今まで提供された8曲に感情移入ができず、出すシングルが全て1,000枚程度、そうですね」
「すごい、当たってます、やっぱりアイドルはダメですかね…」
「あなたは前の事務所でアイドルの面接の時『初恋』をうたいましたね」
「どうしてそれを!前の事務所のオーディションで歌いました」
「私の鑑定ではこの曲をカバーして発売するとレコード大大賞やMHKの年末白黒歌合戦に出れるとでました」
「あなたの中でもこの曲が一番しっくりくるんじゃないですか?」
「騙されたと思って今の事務所の方と話し合いこの曲で最後のチャレンジをして下さい。絶対人生変わります!」
「私も最後にかけるならこの曲だと思ってました。踏ん切りつきました、ありがとございます。」
女性は来た時の死んだ顔から明るいアイドルの顔に変わっていた。
あっ!5,000円貰って無いよー!
それから一ヵ月後どのチャンネルを開いても歌番組はおろかバラエティまで恭子ちゃん。
毎日テレビで見ない日はないくらい忙しそうだった。
もちろん『初恋』でレコード大大賞やMHKの年末白黒歌合戦にも出場しましたよ。
テレビ見て応援したよ。
サイン貰っとけばよかったなぁ。
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