第6話 おっさんと後藤さん

昨日いろいろあったが、何十年振りに今叔父さんの経営するウェルカムホテルの社長室に到着した。


「やあ!直樹君久しぶりだね、今日からよろしく頼むよ」


「社長こちらこそよろしくお願いします」


「社長かぁ、堅いね直樹君は、昔みたいにマサ兄でいいんだよ」


「公私の区別はつけるべきだと思いましたので、マサ兄!」


「そうそう、公私の区別をつけて私用の時はマサ兄でよろしく!」


「ホテルの仕事は初めてだったね、まずはこちらの先輩の後藤君から、いろいろ教えてもらいなさい後藤君後よろしく」


「畏まりました、山田直樹君だね、初めましてよろしくね後藤です」

初めてじゃ無いよ!


懐かしい後藤さんだ!仕事には厳しいけど面倒見のいいおっちゃん。ほぼ毎日飲み会に連れて行かれたり、合コンやライブやディスコなど一通り連れて行っていただいた人生の大先輩で、


死ぬ厳密には死んで無いが、間際まで見舞いに来てくれた唯一の知人だ。


今はまだ若い20代の後藤さんだが、

この人が叔父さんの元でその後

総支配人に成るんだけど、それはまだ先の話しだね。


「山田直樹です、本日よりご指導よろしくお願い致します!」

と元気よく挨拶をしながら、少し涙した。


「お!しっかりしてるね。教えがいあるわ」


「分からない事があればなんでも俺に聞いてくれ」


「ありがとうございます!頼りにしてます後藤さん」


顔合わせの後社長室を出て慣れ親しんだホテルのバックヤードから、フロントや宴会場にメインレストランなど館内を案内してもらった。


その時も懐かしい面々に

「はじまして今日からお世話になります、山田直樹です」

と人生2回目のこのホテルで初めての挨拶をして廻った。


『みんな若いなぁ当たり前だけと』


『皆んなの顔と名前は完全記憶でしっかり覚えました。また、今回もよろしくね』


「以上がこのホテルで直樹君が関わる関係部署だから、良く覚えておいてね」


「はい、大体の部署の位置は分かりました」


「じゃあ和室宴会場『椿』は何処かな」


『3階のエレベーターホールを右に出て3っ目の部屋です』

とタブレットの画面に館内地図が表記されている。


そう答えがタブレットに表示されたので、答えてしまった。


 「3階のエレベーターホールを右に出て三つ目の部屋です」


「え!まだ案内してなかったけどよく分かったね、事前に社長に案内してもらってたか」


やばい、過去の記憶とタブレット情報で簡単に答えるこれ注意だね。


「はい、社長に事前にいろいろ教えて頂きました」


「だよねー!じゃ無いと初めてでいろいろ周ったけど、見てない会場のことなんて分かんないもんね」

後藤さんも私の言い訳を理解してくれた。


その後、研修の場としてレストランでトレイの持ち方や、テーブルセットのやり方、接客サービスのイロハを教えて貰うが、これら基本は身体が覚えており一通り全て一度で研修をクリアした。


『そりゃそうでしょ』


前世もこれで飯食ってたんだから、接客してお客様からいかに追加注文を取るかが、売り上げにかかってだからね町場の居酒屋。


大変だったけどお客様とのやりとり楽しかったよ。


お勧め美味しかった!楽しかった!サプライズありがとう!


などの帰り際に言われると疲れも吹っ飛ぶよ。

18歳の今の私にもこの経験値は生きているんだよね。


そうそう後、夜のクラブ活動も錦の繁華街で頻繁にやって楽しかったですよ。前世のクラブ活動で知り合った有名人の中に、有名なハンバーガーチェーンの社長の藤田畑さんとは名古屋に来るたび仲良く遊びましたね。

ほんと…これが会社追放の種か?


「直樹君本当に今日サービスの仕事するの初めて?今までどこかのホテルで10年くらい働いてるベテラン感があるんだけど?うちですぐ黒服着れるんじゃない」


教育担当の後藤さんが呆れて私に聞いてくる。


「あははは、田舎で喫茶店のホールや洗い場でバイトしてました一人で全てやってたんで体にしみついてます」

ととっさに嘘をつく。


「田舎にしては、クオリティの高い接客姿勢だね、でもしっかりしていていいよ、速戦力だね頼もしい」


そしてこの日は午後3時頃まで後藤さんからホテルマンとしての教育を受けた。


16時俺は後藤さんと一緒にレストランの夜営業の準備をして17時レストラン『グランディール』がオープンした。

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