32話 おっさんとドーダマドンナ 3
山田君と別れた私の乗る、勅使河原家の高級車の前に1人の外国人が飛び出して来た。
車をすぐに止めて、後席から父である勅使河原淳弥が顔出す。
「ダニエルじゃ無いか、忙しいのは分かるが車道に飛び出すとはお前らしく無いどうした?」
ダニエルとはアメリカでいつも護衛を頼む警備会社の社長だ。
「悪い、手配書にある顔に似た男が向こうの通りで見かけたと聞いたもので急いでいたんだ」
「ダニエルの今のクライアントは誰なんだ?」
「ドーダマドンナだよ!あんたよりうるさいんだ」
「ははは!私よりうるさいクライアントか楽しいじゃ無いか」
「その手配書見せろ、さっき私もあの道にいた」
「運転手は防犯もかねある程度の人間の顔を一定期間覚える教育をしてある」
ダニエルが運転手に手配書を見せた。
「旦那様、この方は旦那もお嬢様もお知り合いの方でございます」
「「はい?」」
手配書を親子で眺めて
「「山田君じゃ無いか!」」
「ダニエル!今の君のクライアントを聞いたが、なぜ彼を探しているか聞いてもいいかな」
「彼を知っているのか2人とも?」
「ああ、だから探している理由を聞いている」
「今の私のクライアントが、先程自国の裏社会の連中に移動中に襲われたんだ。この平和慣れした日本でな」
「そこに彼が現れ全て奴らを排除し
我々の乗るリムジンの逃走経路を確保して立ち去ったんだ」
「忍者って本当に日本にいるんだと俺は思たぜ」
「相手はプロ9人だ!それをものの10秒程度で制圧したんだ。プロの俺もびっくりだ」
「その後、各クルマの運転手まで制圧し車を路肩まで移動させる丁寧さだ」
「そこまでして、うちのクライアントが話しかけるのを無視して立ち去るから…」
「それに激怒したクライアントが彼を探して私の前に連れてこいって事でスタッフ全員で血眼で探してる訳さ」
「2人の知り合いなら話しが早い教えてくれ彼の居場所を」
「ちなみにドーダマドンナが宿泊しているホテルはどこだ」
「ウェルカムホテルのインペリアルスイートだ。今回のクライアントの警備にちょうどいいホテルだったんでね」
「そうか…」
「どうした?何か問題でもあるのか、あのホテル?」
「いや、ホテルにはなんの問題もない。」
「彼はそのウェルカムホテルのレストランで娘と仕事をしててな、先日娘も暴漢から助けてくれた恩人だ」
「それで先程彼とたまたま会ったので、今度家に食事に招待したところだ」
「何!ウェルカムホテルのレストランの従業員だと、こりぁ探す手間が省けて大助かりだ!」
「彼の名前を教えてもらえるか?」
「ああ、ナオキヤマダだ。まだ18歳だと聞いている。あまり大事にするなよ」
「ありがとうミスター勅使河原、今回の借りはアメリカに来た時に返すからよろしく」
そう言うとダニエルはクライアントの元に走り去った。
自分の事がこんなにも早くドーダマドンナに知られるとつゆとも思わない直樹だった。
「はっくしゅん!はっくしゅん!」
『また葉山が俺の悪い事話してるな』
とトンチンカンな事を考える直樹は
コインパーキングに止めてある、ランマル70に乗り早めに家に帰って行く事にした。
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