第7話 おっさんと歓迎会 1

17時営業開始!


と言っても私の仕事は裏方です。


グラスを磨いて所定の場所に収納したり、下がって来た食器類を洗い場まで運んだり、食事で使うナイフやフォークなどの裏方の準備でホールでの仕事は流石に初日からはやらされる訳がない。


調理場のシェフやデシャップの先輩も何だか楽しそうに話をしている所を見ると、今日はそう忙しく無い様だね。


隣で同じ仕事をしている女子大生?

ネームプレートを見ると「水野」と書いてある。


前世の私?

田舎から出てきたてで、日本語?

が上手く話せず。

要は人見知りだったはずで到底水野さんみたいな女性に話しかける事など出来るはずも無い。


今までの私なら、水野さんみたいな清楚で綺麗な女性とは話せず黙々と仕事をしていただろう。


しかし!55年生きて人生経験豊富で、チート持ちの私は簡単に話し掛けられる。


「初めまして山田です。水野さんよろしくね!裏方の仕事が多くて覚えられないゃ、いろいろ教えてね」


水野さんは少し恥ずかしそうな顔で「初めまして、私の分かる範囲でなら教えてあげますわ」


「まず、グラスの種類とカトラリーの種類と場所を教えてほしい」


「グラスの種類はなんかビアグラスやワイングラスやロンググラスも種類がいろいろあるから覚えるの大変よ」


「カトラリーとか難しい言葉、新人さんで良く知っていますわね」


「研修でさっき後藤さんに教えていただきました」


「水野さんに今日一日、いろんな物の種類と収納場所を教えてもらえれば、

後は、何とか思い出しながら仕事するよ」


「まぁ、面白い人ね。うふふ、分かったわグラスとシルバーの種類と収納場所を教えてあげる」


「このホテルではナイフやフォークのことをシルバーって言うから覚えておいてください」


「そうなんだ!いろいろ今日一日よろしくね」


それから、たわいも無い話しを途切れる事なく楽しく仕事を続けた。


ふと私は興味本意で水野さんを鑑定した。


『鑑定』


偽名 水野綾子

自宅にいるメイドの娘の履歴を借りる

本名 勅使河原綾子

年齢 20歳

学生 成金大学 純金

バスト 〇〇㎝

ヒップ 〇〇㎝

ウエスト 〇〇㎝

男性経験 無し

補足 名古屋を代表する勅使河原財閥の3女。

名古屋では有名人や財界人が利用する丸八ホテルや丸八百貨店、鉄道会社、製薬会社、貸しビルを数十棟などを勅使河原財閥が運営。

このホテルには社会見学にきているらしい事がわかった。


『普通のお嬢さんとは違うと思ったが、だょねー。』


『前世では関わりがなかったから知らなかったけど、こんな子もこのホテルに居たんだな』


その後も水野さんと世間話をしながら仕事をしていたら、思ったより会話が弾み楽しく仕事も進んだ。


音楽の話をした時に水野さんがドーダマドンナの曲や人となりに詳しいのには驚いた。


月曜日と言う事もあり、今日は予約や宿泊客も少なく無事にレストランの営業は終了した。


「お疲れ様でした。」

営業終了と共に後藤さんが現れた。


「今日は初日だから分からない事だらけで疲れただろう直樹君」


「お疲れ様です。はい疲れましたが、水野さんからいろいろご指導頂き時間が早くすぎました」


「水野さん直樹君にいろいろ教えてあげてありがとうね」


後藤さんはこれから私の歓迎会を開催する為に営業終了と共に現れんだよね多分、昔っから朝まで飲みに連れまわされたよね。


締めは市場で朝ごはん!これが後藤さんの定番だ。


「今日は直樹君の初日だから今から歓迎会を仲間内でやるから水野さんも来る?」


え!私は行くのが前提ですか!


行きますよ後藤さんの命令は絶対ですからね。


「私みたいなのが参加していいんですか?」


「もちろん大丈夫だよ!ね直樹君」

何で私に振る?


「はい、もちろん大丈夫です」


「参加したいので家に帰りが遅くなるって電話して来ます」


と言って水野さんは公衆電話に向かった。


まだスマホとか携帯が無いからこの時代は家や友人に連絡をとるのが大変だった。


家にある固定電話で女の子と話すの大変だっだなぁ…

お父さんとか出たら怒鳴られて大変だったから、電話が怖くて彼女の部屋に石当てて連絡したり苦労したな…など私が思いにふけっていると後藤さが、


「俺達着替えて男子休暇室にいるから、着替え終わったら声掛けて」


後藤さんと私は着替えに更衣室に向かった。


着替えて休暇室に入ると、そこには田中さん、有田さん、山本さんが居た、後藤さんを入れたこの4人がこのホテルの飲食部門の四天王だ。

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