25話 おっさんとフランソワ
私は早速、後藤さんと有田さんにフランソワの件を説明した。
彼女を鑑定した時にあった好き嫌いな食材、食べたい料理を参考に彼女用の和食内容を提案し和食料理長に提供出来るか確認し了解を得た。
19時レストラン入り口でフランソワの来店を待っていると、真っ赤なノースリーブのドレスを着たフランソワがエレベーターから降りて来るのが見えた途端、周りのお客様達が騒めいたほど
美しい姿だった。
「やあ!フランソワ凄く素敵なドレスだね似合ってるよ」
「お褒め頂き嬉しいわ直樹!お迎えありがとう」
エレベーターホールまで出迎えに行きそのままレストランの特別席に案内するのだが、そこは目の前にすぐ近くにライトアップされた名古屋城と緑豊かな公園が良く見えるこのレストランの特等席。
フランソワもこの席が気に入ったらしい。
「直樹!素晴らしい眺めだわ。ホテルの客室からの眺めは街中だったから。これは直樹が食べさせてくれる和食も楽しみね」
そうフランソワは答えてくれた。
私は後藤さんに許可を得て、今日は出来るだけフランソワだけの担当を許して頂いた。
まずは前菜これは京都のおばんざいをイメージして家庭的な料理を八種少しずつ小皿に取り分け籠に入れて提供する見た目も可愛い一品だ。
特にだし巻き玉子と湯葉の刺身とくみあけどうふはフランソワが凄い興味を抱いていた品だ。
「お待たせ致しました。こちらが本日の前菜おばんざい盛り合わせです」
手前の品から準に内容を説明していくと、だし巻き玉子と湯葉の刺身で彼女は反応した。
「なんでだし巻き玉子と湯葉の刺身が食べたいってわかったの、それに黒豆やくみあげ豆腐まで不思議…でもほんとに食べたかったのがあるから嬉しいわ」
彼女は一つ一つを噛み締めながら味わって楽しそうに微笑んでいる。
次は寿司と刺身の盛り合わせ。
大トロのマグロ、真鯛、伊勢海老、ウニ、イクラの豪華5種盛り。こちらも『鑑定』による彼女の食べたい寿司刺身ベスト5だ!
「まあ!私の食べたい刺身にお寿司だわ」
嬉しそうに頬張っていく。
そしてメインは味噌カツだ!
日本についてまた、名古屋について調べた彼女はこの味噌カツなる料理に凄く興味を抱いている。
「本日のメインディッシュ味噌カツです」
「なんで?なんで味噌カツが出てきたの?私貴方に食べたい物一つも言って無いのに、今まで全て食べたかった料理だったわよ!貴方魔法使いか何か」
真顔で私に聞いてくるフランソワ。
「だいたいの外国人女性が好みそうな料理をチョイスしただけだよ」
「味噌カツなんて普通は好まないと思うけど」
「なんだかフランソワは味噌カツが食べたいって顔に書いてあるから」
顔をペタペタ触るフランソワ、ふと我に帰り「揶揄わないで!でも食べたかったわ味噌カツ。ありがとう美味し食いくいたくわ」
その後フランソワと日本、名古屋の文化や遊びやファッションなどいろいろ会話した。
最後に抹茶を私が目の前でたててあげたが、
苦かったらしく可愛い顔が少し歪んだが、
さすが淑女だ直ぐに笑顔にもどり、名古屋城をバックに2人で記念写真を撮りたいと言うので、後藤さんにカメラをお願いし、記念写真を撮影した。
「現像したら写真送りたいけど、送り先教えて頂ける」
この頃はフイルムが当たり前、デジタルでSNSなどに投稿する時代では無い。フイルムを自分で現像するかカメラ店に出すかだね。
私は今の仮住まいの家の住所さを彼女に教える。
「今日は日本に来て一番楽しい夕食だったわ、ありがとう直樹」
そう言って私の頬にキスをしてくれたので、また、エレベーターまでエスコートして部屋にお帰りいただいた。
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