概要
古来より。独自の神、八千矛神(やちほこのかみ)を祀るその村は、毎年神事に供物を捧げていた。
だが、十年に一度。
八千矛神に生きた贄を捧げていた。
そして今年、選ばれたのは『椿』という名の妙齢の女。
咲いたばかりの百合の花の様に美しく、今にも散ってしまいそうなまでに儚げだ。目線は虚で視線は定まらない。
されど、椿は己が生贄の花嫁である事を知っていても尚、逃げる意思はなく、手を引かれるままに歩く。
その先にあるのは、八千矛神がいるとされる大きな蔵。
椿は七日、そこで花嫁としての勤めを果たす事になる。
日の光も届かぬ蔵の中にいる、神の花嫁として。
蔵の中。蠢く暗闇の存在と出会う――
椿のイラスト
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!艶めかしさの中にある美しさと儚さ、うっとりする和風ファンタジー。
こんな文章を書けるようになりたいのですよ。
……あ、しまった。私の個人的な感想だった。
えー、ひとこと紹介にあるように、艶かしいのに美しく儚いんです。これぞ、和の美しさ、和風ファンタジーだと思いました。
主人公の椿さんは、盲目の少女で、贄となった子。でも、見えなくても不安だし、見えないからこその不安もあったと思います。いくら古来より祀っていた神とはいえ、恐ろしいものかもしれない。
でも、贄の相手は、イケメンでしたー。結構私の好きなタイプでしたー、個人的感想ばかりですいませーん!
でも、ですね、このイケメンとのイチャコラアリーノで、でも、和な美とか、村の危うさなど、見所たく…続きを読む - ★★★ Excellent!!!盲目の娘は神の下へと嫁ぐ花嫁。彩深く描き出される、和の異種婚姻譚
描き出される世界の香りと彩り、その深さ鮮やかさに驚かされます。
第一幕の物語は、朽ちた枯木の野を思わせるほの暗いくすみを帯びながら。
第二幕の物語は、薫り高く咲き誇る山桜を思わせる鮮やかさと、幽玄の霞を帯びながら。
うち捨てられるようにして神への供物に捧げられた娘・椿と、桃源郷とも綽名されるひとつの村の繁栄のために「神」として繋がれた男・朧。
本作ではこのふたりが出会い、心を通わせ、やがて夫婦として共に歩み幸いなる時を共に歩むまでのひとつひとつが、ありありと描き出されています。
古来、盲目であるということは、神に通ずることであるとされていたそうです。
いわゆる「巫女」と称されるものの中…続きを読む - ★★★ Excellent!!!名ばかりの花嫁は供物として捧げられ、神と婚姻して人ならざるものになる?
花嫁といえば聞こえがいい。
でも、それは建前だ。
主人公の椿は神への供物。村の繁栄のために命を落とす犠牲として神に輿入れするのです。
そんな彼女の前に神が現れ、椿と神は対話することになるのですが……
ダークかつ、ちょっと大人な展開も楽しめる本作。
暗くも美しい重厚な雰囲気がお得意の作者様ならではの世界観に圧倒されっぱなしでした!
神を祭る風習も丁寧に描かれていて、こそれにも好感が持てました。
主人公や神の境遇に同情してしまうのですが、しっかりざまぁな展開があるので、スカッとできます。
ホラーテイストの重厚感のあるファンタジーがお好きな方に、とくにオススメです☆ - ★★★ Excellent!!!愛してるから、食べられたい。
盲目の花嫁は供物にされた。刀根田村が祀る八千矛神へ捧げる生け贄に。
八千矛神を祀る大蔵に七日間閉じ込められることになった椿がそこで心を通わせたものはいったい何だったのか。神なのか、妖なのか、精霊なのか。読者がわかるのは、死を望むほど虐げられていた椿が『朧』というひどく優しく愛情深い男と蔵を出たということだけ。
人ならざる存在と惹かれ合い、人間としての領分を越えてしまった椿の嫁入りセカンドライフは、朧が用意した「美しいもの」で溢れています。今まで目が見えなかった分、美しいものをたくさん見せてあげたいという彼の愛情ゆえに。
暗い世界から出た二人が歩む夫婦としての時間の美しさ。相手を想う心。…続きを読む