第三幕 白鼠の御宿
一 冥々夜市
闇夜に浮かぶ提灯の灯りが
色合いのせいだろうか。
蝋燭の灯りが小さいのだろうか。
ざわめきの声のせいだろうか。
それとも此処が
此処は、
家と家の屋根を行き渡る紐に高く釣り下がった提灯とは別に、青く灯る蛍火が浮かんで妖しく夜闇を照らす。その灯りに照らされているからか、輪郭がぼやけた世界がまたいっそう奇々怪界なる景色となる。
行き交うもの達の姿はそれぞれに特徴があるものだから――いや、彼等の姿こそ、奇怪なる夜を創り出していると言っても過言ではない。
例えばだが、そこの宿屋の主人だ。頭には
それと、そこの飴売り。見た目は、どう見ても白地に黒と茶
愛想も良いし、腕前も見事。だが、金を持っていないと
後は、そこの
その隣にいる女は
面妖な――現世であれば、そんな言葉が使われただろうか。だが此処は、現世ではない。ましてや
生者と死者の狭間に生きるもの達が、偶然見つけた異界。
◆◇◆◇◆
異界への入り口は、
『神隠し』なんて言葉があるが、まさに此処に入り込んでしまった人間がそういった扱いになるだろう。常夜の道は真っ暗闇で、特別な目でもない限りは己が姿すら視認する事も叶わないのだから。
もし、人の身で夜市へとたどり着けたのなら、それは相当な強運の持ち主か――はたまた、
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