こんな文章を書けるようになりたいのですよ。
……あ、しまった。私の個人的な感想だった。
えー、ひとこと紹介にあるように、艶かしいのに美しく儚いんです。これぞ、和の美しさ、和風ファンタジーだと思いました。
主人公の椿さんは、盲目の少女で、贄となった子。でも、見えなくても不安だし、見えないからこその不安もあったと思います。いくら古来より祀っていた神とはいえ、恐ろしいものかもしれない。
でも、贄の相手は、イケメンでしたー。結構私の好きなタイプでしたー、個人的感想ばかりですいませーん!
でも、ですね、このイケメンとのイチャコラアリーノで、でも、和な美とか、村の危うさなど、見所たくさん!
とにかく読むべし! べーし! です!
描き出される世界の香りと彩り、その深さ鮮やかさに驚かされます。
第一幕の物語は、朽ちた枯木の野を思わせるほの暗いくすみを帯びながら。
第二幕の物語は、薫り高く咲き誇る山桜を思わせる鮮やかさと、幽玄の霞を帯びながら。
うち捨てられるようにして神への供物に捧げられた娘・椿と、桃源郷とも綽名されるひとつの村の繁栄のために「神」として繋がれた男・朧。
本作ではこのふたりが出会い、心を通わせ、やがて夫婦として共に歩み幸いなる時を共に歩むまでのひとつひとつが、ありありと描き出されています。
古来、盲目であるということは、神に通ずることであるとされていたそうです。
いわゆる「巫女」と称されるものの中には、神の世界へ通ずるためにその目を塞ぐものもあったとか。
あるいはすべてを承知の上で構成されたものであるのかもしれませんが――というより、そうである公算の方が高いでしょうが――本作の中で象られた構図、盲目の娘が神へと嫁ぎ、自らも「ひとならざるもの」となって共に歩むという本作の物語、その何と示唆的であることでしょうか。
人として生まれながら人ならざるものとなった、その拭い難い喪失感を引きずりながらも、二人の歩みは確かに満たされたもので。
その人生の道程は只人のような幸福に満ちながら、しかし只人では辿り得ない幽玄たるものであろうと、そう思わせるものでした。
その確かな説得力の、なんと心地よいことか。
たまらなく上質は、「ひとならざる夫婦」の物語です。
花嫁といえば聞こえがいい。
でも、それは建前だ。
主人公の椿は神への供物。村の繁栄のために命を落とす犠牲として神に輿入れするのです。
そんな彼女の前に神が現れ、椿と神は対話することになるのですが……
ダークかつ、ちょっと大人な展開も楽しめる本作。
暗くも美しい重厚な雰囲気がお得意の作者様ならではの世界観に圧倒されっぱなしでした!
神を祭る風習も丁寧に描かれていて、こそれにも好感が持てました。
主人公や神の境遇に同情してしまうのですが、しっかりざまぁな展開があるので、スカッとできます。
ホラーテイストの重厚感のあるファンタジーがお好きな方に、とくにオススメです☆
盲目の花嫁は供物にされた。刀根田村が祀る八千矛神へ捧げる生け贄に。
八千矛神を祀る大蔵に七日間閉じ込められることになった椿がそこで心を通わせたものはいったい何だったのか。神なのか、妖なのか、精霊なのか。読者がわかるのは、死を望むほど虐げられていた椿が『朧』というひどく優しく愛情深い男と蔵を出たということだけ。
人ならざる存在と惹かれ合い、人間としての領分を越えてしまった椿の嫁入りセカンドライフは、朧が用意した「美しいもの」で溢れています。今まで目が見えなかった分、美しいものをたくさん見せてあげたいという彼の愛情ゆえに。
暗い世界から出た二人が歩む夫婦としての時間の美しさ。相手を想う心。そういった全てに寄り添ってくれる圧倒的な表現力に脱帽です。和風ホラーという言葉では軽く聞こえるし、異種族婚とも少し違う。やっぱりタイトルの『幽冥婚姻譚』がしっくりきます。元は同じもの同士だった二人が光の届かない奥深くの薄暗い暗闇で出会い、別の何かに変わっていく。おどろおどろしくも美しく。
読了後に目にするキャッチコピーの尊さに、ぜひ酔い痴れて下さい。おススメの一作です。
閉鎖的な因習の村で生贄となった椿。
しかし、暗闇に潜む神……異形もまた悲しい過去を持つ男でした。
一週間という、区切られた時間の中で心を通わせる二人。
椿の取った選択は……
衝撃的な幕開けと共に、夫婦の契りを結ぶ椿と朧。
おどろおどろしく、残酷な描写が美しくさえありました。
世界で二人ぼっちになった夫婦。
常に纏わり付く、死の幻影。
しかし、二人は闇の中でこそ輝くのです。
作者さんの、別作品を拝読させていただいてますが。
単発エピソード連作、オムニバスでその真価を発揮される方です。
既に狐とのエピソードも登場していますが。
バリエーションもきっと多いことと思います。
私は、この夫婦の行く末を見てみたい。
純粋にそう思います。
豊かな実りの桃源郷、刀根田村。
その村に祀られているのは、豊穣の神である八千矛神。
椿という名の盲目の娘が、花嫁として、八千矛神に捧げられたことから物語は始まる。
椿は、八千矛神の大蔵で七日間を過ごす間に、そこに祀られていたモノと心を通わせ、そして――
この物語は、始まりこそ恐ろしい因習が描かれています。
しかし、読み進めていくと、黒かった世界が美しく色付いていき、静かで優しいセカンドライフが幕を開けます。
確かな絆を繋ぎ、まさしく夫婦として寄り添い合う二人。
辛く苦しい時を過ごした二人の、幸せを願わずにはいられません。
情景描写がとにかく美しく、鮮やか。
特に山桜のシーンは必見!
淑やかで色っぽい(ああ、なんと言えばいいのか。語彙力が足りません!)、素敵な作品です♪
ありがとうございます。
最初から最後まで大好きでした。
和風因習物を下敷きにした、異類婚姻譚です。
妻は、桃源郷と称される奇跡の実りの村に連れて来られた――おそなえものでした。
妻――椿は盲目の乙女です。
彼女は自らの運命がどうなるか、おおよその検討をつけて、そなえものを納める蔵に入りました。
そこで出会ったのが……運命の人、いや、悲劇の生き残りといってよいでしょう。
二人は求めあい、この因習の呪縛から抜け出します。
悍ましいのは誰なのか。
酷いというのはどのことか。
物語を読み進めながら、人間の業の本質について考えさせられつつも、自由を手に入れた二人の日々は、つつましく穏やかでした。
互いへの思いやりに満ちた一歩一歩で刻まれてゆく日々を見守ることは、確かにとても微笑ましく愛おしかった。
必読です。