出会うべくして出会った二人に幸いを。

ありがとうございます。
最初から最後まで大好きでした。

和風因習物を下敷きにした、異類婚姻譚です。
妻は、桃源郷と称される奇跡の実りの村に連れて来られた――おそなえものでした。

妻――椿は盲目の乙女です。
彼女は自らの運命がどうなるか、おおよその検討をつけて、そなえものを納める蔵に入りました。


そこで出会ったのが……運命の人、いや、悲劇の生き残りといってよいでしょう。


二人は求めあい、この因習の呪縛から抜け出します。


悍ましいのは誰なのか。
酷いというのはどのことか。
物語を読み進めながら、人間の業の本質について考えさせられつつも、自由を手に入れた二人の日々は、つつましく穏やかでした。
互いへの思いやりに満ちた一歩一歩で刻まれてゆく日々を見守ることは、確かにとても微笑ましく愛おしかった。

必読です。

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